Chapter 9: Under Blue's care
スキンの顔に浮かんだ笑みは、少しも変わらなかった。
ただ、軽く手を上げて応えると、名前を呼びながら声を上げる一人ひとりの生徒へ視線を向けた。
「まず、座りなさい」
短く、平坦な声が響く。
不思議なことに、その一言だけで教室全体が、まるでそれに慣れているかのように、少しずつ静かになっていった。 スキンは子どもたちを一人ずつ見渡す。
そこには、見慣れた顔もあれば、彼が覚えていた頃よりもずっと成長した顔もあった。
「みんな、大きくなったな」
短い言葉に、あちこちから小さな笑い声が上がった。
小さな少年が、すぐに手を挙げる。
「先生! 今年からメープル・ハウスに行くんですか?」
スキンは小さく頷いた。
「そうだ」
「えぇ……」
残念そうな声が、教室のあちこちから上がる。
別の少年が笑いながら口を挟んだ。
「ナウィ・ハウスの後輩たち、みんな大泣きしてましたよ」
教室中に笑い声が広がった。
扉の前に立っていた校長でさえ、思わず微笑んでいた。
ブルーは、その光景を黙って見つめていた。
こんなふうに、生徒たちから呼び慕われる教師を、彼はこれまで見たことがなかった。 それは、ただの尊敬ではない。
――恋しさだった。
スキンは小さく息を吐いた。
「また、授業が終わってからゆっくり話そう」
そう言って、教室の中央へ視線を向ける。
その目が、金髪の少年のところでほんの一瞬だけ止まった。
ジョアンは、相変わらず同じ席に座っていた。 手にしていた本が、ゆっくりと下がっていく。 淡い色の瞳が、教室中の子どもたちがスキンと笑い合っている光景を、静かに見つめていた。
笑みはない。
言葉もない。
ただ、見つめているだけだった。
まるで―― 今まで知らなかった、あの男の一面を見ているかのように。
スキンはゆっくりと目を閉じ、それから平坦な声で口を開いた。
「これから、お前たちはもう中学生だ。家が恋しいからって泣いたり、五分おきに俺について来て質問したりするのは、もうなしだぞ」
子どもたちは静かに背筋を伸ばした。 まるで、スキンの言葉を聞きながら、これまでのことを思い返しているようだった。
何人かは小さく笑みを浮かべている。 けれど、中には目に涙を浮かべている子もいた。
「ナウィ・ハウスは、お前たちにとって自由な青い家だ。これからは、自分のことは自分でできるようになれ。そして、お互いに助け合うんだ。
あと数年もすれば、お前たちも新しく入ってくる後輩の手を引く側になる。昔、先輩たちや先生が、お前たちにしてくれたようにな」
一人ひとりの瞳に、温かな光が宿っていく。 多くの子どもたちが、真剣な表情で頷いた。
窓から差し込む夕方の陽射しが、淡い金色の光となって教室を照らしている。 その場には、明日への希望と、自分たちのこれからを信じる気持ちが満ちていた。
スキンはその光景をしばらく見つめていた。 そして、ゆっくりと教室の中央にいる金髪の少年へ、もう一度視線を向ける。
ジョアンもまた、スキンの目を見返していた。 何を考えているのか、容易には読み取れない、静かで穏やかな眼差しだった。
スキンは一瞬、動きを止めた。 だが、すぐに校長のほうへ振り返る。
その瞬間、校長がスキンの目の前で口を開いた。
「今年は、ジョアンをブルー先生に任せることになってるからね……」
スキン
「……」
「……は?」
校長
「メール、読んでないの? 私はてっきり、ジョアンとブルー先生はもう知ってるものだと思ってたんだけど」
スキンは慌ててスマートフォンを取り出した。
三日前に届いていたメールを見つける。
Assigned House Tutor for Joanne: Mr. Blue
スキン
「……」
「広告メールだと思ってました……」




