プロローグ
プロローグ 西暦三〇二四年 六月八日
紗奈を探す旅に出て、今年でちょうど千年が経ったらしい。
瑞樹有という人格を保持したまま、俺は一体何度死と誕生を繰り返したのだろう。地球を隕石群が襲い、文明のほとんどが破壊された世界では簡単に命が消えてしまう。餓死、凍死、病死、事故死、立ち上げた企業のライバル会社による暗殺、ドラッグの蔓延を止めるためにマフィアと戦い銃殺され、次の人生でマフィアを壊滅させるだけに人生を費やし、偉人として崇められて老衰も経験した。その後、文明を発展させることに専念し、旧時代の様々な技術を復活させ、熱核融合炉の開発に成功した功績により、ついに俺は愛する人の魂を見つけられる力を神から授かった。
千年。果てしない時間だった。
でも、長かったとも辛かったとも思わない。
俺の胸にはずっと紗奈との誓いがあった。必ず君を探しに行く、必ず迎えに行く、という彼女との約束だ。それが常に俺の魂を支え続け、挫けそうになっても、狂ってしまいそうになっても、何度でも俺を蘇らせた。
しかし、だ。どうしたものだろう。千年の旅の果て、高架橋から空を眺める『紗奈であった人』を目の前にして言葉が出てこない。
彼女は新しい人間として生まれ変わって、俺のことなど覚えているはずもない。しかし、神から授かった力を通して見える彼女の魂は、生に迷う人の道しるべとなる曙光のように淡く輝いている。やはりどれだけ生まれ変わっても魂の形は変わらないのだ。紗奈でなくなったとしても、その魂はやはり俺が愛して全てを捧げると決意させたものだった。
だからこそ最初の一言は大切にしたい。千年の時を超えた言葉だ。特別なものにしたい。
目頭が熱くなるのを感じながら、俺は考える。
散々待たせてしまった彼女のために、俺はどんな言葉を紡げばいいのだろう――




