12話
さて、今日はルートの誕生日。
気分が落ち込んで泣いてしまったりしたけど、コーリンのおかげで立ち直れた。
そうよ!こんなに頑張ったんだから、いらないって言われても押し付けてやる!!
「お嬢様、着きましたよ」
「ええ、ありがとう!」
着いたのはレーゲン伯爵家。
使用人の方が会場まで案内をしてくれる。
会場に着くと出迎えに伯爵夫人が待ってくれていた。
「ごきげんよう〜よく来てくれたわね〜!セリーヌちゃん」
「レーゲン伯爵夫人お久しぶりです」
「もお〜前も言ったわよ!サーラさんでいいって〜」
「ですが、ルート様のパーティーですので」
「しっかりしてるんだから!あ、でも義理の母になるのだからお義母さまでもいいかもしれないわね〜」
「あ、はは」
駄目だ。プレゼントの事で緊張してしまって上手い返しが思いつかない。
そんな時、原因のあの男が現れた。
「母上、セリーヌ嬢を困らせないでくれるかい?」
「あらやだ!困らせてなんかないのよ。早く娘に欲しいと思っただけ!」
ルートは他の貴族の目があるからか、かなり大人しく口調も落ち着いている。
「ごきげんよう、ルート様。この度はお誕生日おめでとうございます」
「ありがとう〜。ねえ、セリーヌ嬢……。後で話があるから来てくれるかい?」
「!!はい、もちろんですわ」
「それじゃあ、他の貴族に挨拶に行かないといけないから、また後で。楽しみにしているから」
そう言い残して他の貴族の元に歩いていくルート。
ひぇー、ただの紳士だった。
違和感凄いけど、これもかっこよかったなぁ。
「あらあら、カッコつけちゃって」
「……?夫人?どうされたのですか?」
「ん?いやいや何でもないのよ〜!それよりあちらに美味しいタルトがございますの!アシェルもそこにいるから向かいましょう?」
「はい!もちろんです!」
「あ!セリーヌさまこちらです!」
サーラさんとアシェル様と一緒にデザートを満喫する。
めちゃくちゃ美味しい。これは王宮の時に食べたケーキに負けてないぞ。
チラッとルートに視線を向ける。
笑顔で対応している姿は私からしたら少し物足りない。
「こんにちは、セリーヌ嬢。この度は息子の誕生日によく来てくれた」
「ごきげんよう、レーゲン伯爵。この度はお招きいただき感謝しております」
「ところで、妻が迷惑をかけていないだろうか……昨日も君が来るのを心待ちにしていたようでな」
「ちょっと〜!失礼しちゃうわね!!」
「夫人には非常に親切にして頂いておりますよ……こちらこそ迷惑になっていないかと心配になるほどで」
「いや!そんな事はない!!」
最後に強く言い放った伯爵は我に返り、ごほんと1つ咳をする。
「今ルートがこうしていられるのは君のおかげだ、セリーヌ嬢。」
「?」
「ルートが変わったあの日、君と婚約がしたいと言われた時は驚いた。ルートが私たちに願いを言うなんて、今までほとんど無かったからだ」
「あの時は凄かったわよね〜!絶対に譲らないって顔しちゃって!!」
サーラさんはルートの顔を思い出しているのか口元を隠してふふっと笑っている。
「正直私は君との婚約は認められることはないと思っていた。だが、ルートと妻は送れと言う。だからこそ駄目元で君に縁談を送ったのだ」
「!!」
「それからは、家を継ぐ事に後ろ向きだったルートが自ら私に申し出たり、こうして社交会にも顔を出すようになった。だから、君のおかげだ。感謝している。私たちはずっとルートの将来を心配していたんだ」
「そうですわ。シェーン侯爵令嬢、ありがとうございます」
「そ、そんな……私は……」
2人からルートが変わったのは私のおかげだと丁寧に感謝を告げられる。
ルートが私に婚約がしたいと申し出たなんて、そんな嬉しい事があっていいのか。
私の知らない彼の話に、目元が熱くなる。
泣き出しそうなセリーヌを暖かい眼差しで見つめる2人は、これから先息子と彼女に幸せな未来が訪れるようにと祈った。
「それにしても、ルートめ。あの対応はなんだ。言葉遣いの事については指導したが、あんな大袈裟に変えてくるとは」
「あ〜……ここだけの話。ルートね、本性を隠しているのよ〜」
「そうですよね……?私と会話する時は、その……少々荒々しいので」
「えっ!あの子あの性格そのまま出しちゃってるの!?ちょっと、嫌わないであげてセリーヌちゃん!!」
「ふふ……大丈夫ですよ。言葉の意図を汲み取れるように努力してますので!それに……私はありのままの彼が好きなんです」
「!!あらあら〜それは本当に良かったわ」
こうして、レーゲン伯爵が席を外した後も、サーラさんと世間話をしたり、アシェル様の最近の出来事などを聞いたりしていれば、かなりの時間が経っていたようだった。
そろそろお開きという時間で、サーラさんが私に懇願してきた。
「セリーヌちゃん。ルートの母としてお願いがあるの。ルートは素直になれないだけで、貴方の事が心底好きなのよ。見ていれば分かるの。だから……」
「……サーラさん。先程も言いましたが大丈夫です!だって私も大好きですから!」
笑顔で本心を伝える。
嘘でも何でもない私の心からの声。
サーラさんにも伝わったのか、涙を浮かべ嬉しそうに微笑んだ。




