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聖女は王の元に、俺は闇に──堕ちた英雄の復讐譚  作者: 雷覇


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第17話:廃都再建のはじまり

黒灰の空の下。

かつて王国の外縁都市として栄え、今は誰からも忘れられた地。

そこに、焚き火と声が少しずつ戻り始めていた。


崩れた街路の修復、広場の整地、塔の残骸からの資材回収。

各自が手を動かし始めていた。


「こっちはまだ崩落の危険がある。補強用の木材が必要だ」


「地下水路から飲料水が確保できそうだ。封鎖されてたが開放した」


「ここ……鍛冶場に使えるかもしれねぇ。残ってた炉が生きてる」


かつて帝国の魔道技術を研究していたリエナが修復陣を展開し、

元神官のレクスは魔封結界の解除を試みる。


呪いを帯びた少女アリスは、瓦礫の中の草花に魔力を流し成長させ、

かつて騎士だったクロウは、黙々と訓練場の整備にあたっていた。


アリアは宙に輝く魔術陣を展開しながら、カインの横に立ち言った。


「順調ね。少しずつ都市としての機能が整ってきてる」


カインは腕を組んだまま、周囲を見渡す。


「だが“戦力”の把握と統制ができていなければ、烏合の衆だ」


「ふふ……それも、あなたの役目でしょ?」


カインはわずかに頷き、仲間たちを呼び集めた。


夜。崩れた城砦の大広間。

集まったのは十数名。いずれも“異能”や“戦歴”を持つ者たちだった。

カインは焚き火の前に立ち、語り始めた。


「……俺たちは“復讐”のために集まった。だが、闇雲に戦っても潰されるだけだ」


「だから、お前たちの“力”を把握する」


彼は一人ずつ視線を向ける。


「レクス。お前は神術の扱いに長けているな」


「元は神殿所属の聖職者だった。だが今は、“神の加護なき術”を用いる。闇に落ちた祈りでも、敵は焼ける」


「リエナ。魔道技術と修復術。お前には“防衛と設備”を任せる」


「ふん、ただの残党魔術師とは思わないで。魔道兵器の再稼働も可能よ」


「クロウ。お前は騎士だった。戦術と統率力がある」


「……必要なら、訓練も戦術も教える。俺の罪は剣で償う」


「アリス……」


カインが声をかけると、少女はわずかに首を傾げ、手のひらに小さな黒い蝶を浮かべた。


「魔術は得意…敵の心を壊すこともできる。使ってくれる?」


「もちろんだ」


そして最後に、魔族の青年ザイへと目を向けた。


「お前は、“魔族の血”を持つ。誇れ」


「……人を殺すための力ならある。だが、生きるために使いたい」


「ならば使え。“誇りのために”振るう刃は、誰より強い」


静まり返る広間。だが、その空気は、すでに“軍”としての輪郭を帯び始めていた。


アリアが静かに言う。


「これが、“闇の軍”の陣営ね」


カインは短く頷き、最後に言った。


「ここを《ヴェル=グレイア》と名付ける。

 世界に捨てられた者たちの最後の砦だ。 だが――ここから、全てを奪い返す」


炎が、夜の底で力強く揺らいだ。


「それでこれからどうします?さすがに王国もこれだけの人間が消えれば調査を行うはず。すべて潰していきますか?」


レクスが今後の方針について聞いてきた。


「いや、まだ直接対決は避けたい。」


アリアの幻影魔術で、王国地図の上に複数の赤い印を浮かべた。


「王国はすでに異変を察知し、調査部隊を動かし始めたわ。結構な数が動いてる」


「だが、いまだに“どこにいるか”は把握していない。だからこそ今が好機」


カインが静かに口を開く。


「――拠点の場所を知られるのはまだ早い。俺たちは、あくまで“謎の存在”でいなければならない」


彼の指が、赤く光る点をいくつか指し示す。


「ここに“偽の痕跡”をばらまく。

 補給物資、魔術残滓、壊れた武器――あえて残す。

 奴らに“ここに拠点がある”と思わせろ」


「敵の捜索線を分散させ混乱させる。できるだけ我々の存在を曖昧に保つこと」


カインが皆を見渡す。


「攪乱作戦開始だ。チームを作り動き出せ」


皆がうなずき、行動を開始する。


数日後──王都、騎士団会議室。


ゼクスの机には、三方向から届いた報告書が積み上がっていた。


「……三か所すべてに魔術痕跡……? いや、これはフェイクか?」


彼は地図を睨み、つぶやく。


「連中……位置を欺いている。いや、最初から惑わせるつもりで動いているな」


「では、拠点の位置は……?」


ゼクスは地図を見ながら答えた。


「まだ分からん。だが……確実に“統率者”がいる。これは偶然ではない、軍の動きだ」



◆その頃、ヴェル=グレイアでは


「王国は混乱しているか?」


「完璧よ。敵は今、森にも廃村にも調査班を向けてる。誰も“廃都”の存在には触れていない」


アリアの報告に、カインは静かに目を閉じた。


「よし。今は力を蓄える時だ。今はな……」


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