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青の呪い 01

アルティリアの学園生活がちょいと出てきます。

ちょいとザマアもあるかもよ!

 瑞々しさの香る初夏のある日。アルティリアは、華美にならない程度に、細やかに美しく編み込まれた髪に、白いリボンとネモフィラが重なった小さな髪飾りを着けてもらっていた。


 化粧台の前に座るアルティリアの膝にリーフが飛び乗ってきたので、柔らかな毛を撫でながら尋ねた。


「どうかしら?リーフ?」

「キィ」

「とてもお綺麗ですよ」

「ありがとう、レネ」


 アルティリアの髪を結っていたレネが鏡越しに微笑んでいる。ここ最近、侍女達がこぞって、控えめでありながらも可愛らしい髪を結うために奮闘している。


 アルティリアは今年、ルヴァラン皇国立学園に入学した。


 入学して、もうすぐ二ヶ月となり、新しい生活も落ち着きが見え始めている。しかし何よりも大変だったのは入学準備だった。


 学園の制服は白を基調とし意匠で、規定を守っていれば多少の調整は可能である。令嬢達は決まりの中で工夫を凝らし、お洒落を楽しんでいるらしい。だがアルティリアには特に希望はない。


「皆にお任せするわ」


 などと言ってしまったがために、自分の侍女達と衣装室の職人達だけではなく、母とフェルディナンドまでもアルティリアの制服の意匠を決めるべく協議に加わった。


「制服のために会議までするものなのかしら」


 本人の疑問をよそに話し合いは紛糾した。


 ドレスのような一体型、上下を分けた分割型、その場合ブラウスも仕立てる必要がある。上着はジャケットにするかボレロにするか。ベストも必要ではないか、首元に着けるのはリボンかスカーフか。スカートの丈は?シルエットは?裏地の柄は?襟、袖に施す刺繍のモチーフは?靴やボタンはどの職人に依頼する?


 あらゆる案が議題に上がる。


「母上、リアの愛らしさを最大に引き出すのはドレス型です!」

「フェル。それは固定概念よ。若いうちはもっと挑戦的な装いをすべきよ」


 侍女達や職人だって負けていない。


「学園は野外講義も行われるとの事で御座います。キュロット型など動きやすい形も取り入れるべきでは?」

「カトレアナ殿下は殆どトラウザーズでお過ごしになっていたとか」

「スカートでも部分的にプリーツを施せば、動き易く可愛らしいかと」

「ですが、昨年からの流行はフレアスカートですよ」


 あまりにまとまらないので、やっと誰か第三皇女殿下の意見を取り入れるべきだと言い出し、決定権は姫君本人の元へ戻ってきた。


 だがアルティリアは困った。皆、自分の意見が最高と思っているのだから。


「ええと、その。どれか一つを選ばねばいけないのかしら?」


 誰の案に決めても角が立ちそうだったので、複数選んでも良いのではないか?ただ、そう思っただけなのだが。


「あらまあ」


 フローリィーゼはたおやかな仕草で手を頬に当てる。


「何故気が付かなかったのかしら」

「まったくです。一種類に決める必要などありませんね」


 フェルディナンドも母の言葉に頷くと、二人は視線を合わせて同時に言った。


「全てつくりましょう」

「全てつくりましょう」


 え、全部?そう言う意味じゃありませんよ。言葉にする前に、侍女や職人達の妙に気合の入った声が部屋に響いた。


「かしこまりました!」


 そんなに沢山あつらえても、全部に袖を通す前に大きさが合わなくなってしまうかもしれない。


「待って、皆。わたくし、最近は背が伸びてきているのよ」


 仕事の早い皇宮職員達を止めなければ。


「左様で御座いますね。殿下は日に日にお美しくなられています。着用当日にお体に合わないなど言語道断」


 ジャニスはアルティリアの1日1日を最高の時間にするべく考えを巡らせる。


「では学園の行事予定は把握していますので、交流会やダンスレッスン、野外講義など、それぞれの活動内容に合わせ、相応しい意匠の制服を、殿下のお体の成長に合わせて製作していけるよう計画書を作成致しますわ」

「ええとね、ジャニス。気持ちは嬉しいのだけど」


 困った、筆頭侍女の張り切り具体は母や兄にも負けていない。


「皇女殿下の学園生活をより輝かせるのです!」


 もはやアルティリアに止める術はなかった。式典用の制服を始め、あらゆる意匠の制服が制作されていく。また、マドリアーヌやカトレアナからも入学祝いとは別にリボンや髪飾り、ハンカチなどの小物類が続々と届いた。


 アルティリアは準備がひと段落し、お祝いのお礼にマドリアーヌの嫁ぎ先のアークライド公爵家に赴むいた。2番目の姉のカトレアナも訪れており、久しぶりに三姉妹が揃う。


 ありがたいと思うのだが、髪飾りは姉二人を合わせると三桁以上もあり、リボンに至っては300本以上も贈られた。


「こんなに沢山、本当に必要なのでしょうか?」


 困惑する妹にマドリアーヌは「当たり前よ」と、こともなげに答える。


 学園では華美な宝飾品はマナー違反となっているため、小物使いで差をつけるのだと長女は言った。


「美しい装いは女性の鎧よ、アルティリア」


 ゆったりとしたドレスに身を包んだマドリアーヌは膨らみが目立つ腹を撫でた。現在、二人目の子を妊娠している。


「それに、()()としても使えるわ」

「御礼?」


 カトレアナの言葉にアルティリアは首を傾げた。


「カトレアナは学園在学中にご令嬢達から人気だったの。他の令息達を差し置いて、刺繍入りのハンカチを山ほど貰っていたのよ」


 マドリアーヌの説明を聞いて思い出した。カトレアナは学生時代、剣術や馬術を嗜み、紛うことなき姫騎士だったのだ。


「カトレアナ姉様、凛々しくて素敵でしたものね」


 そんなカトレアナも半年前に第一子を出産したばかり。アルティリアは甥や姪が増えて嬉しい限り。


 着々とアルティリアの入学準備は進む中。最も有難い贈り物はジークフリードの妻であり、王太子妃エレクトリアからの多数の書籍だった。


「殿下が受講なさる先生方の本ですわ」

「まあ!お義姉様、ありがとう御座います」


  論文が掲載された学術誌まである。予習にも役に立つだろうが、何よりも興味深いものばかり。


「小物類や文具などは他の方から贈られているでしょうから」


 少し悪戯っぽい微笑みを浮かべるエレクトリアは、一見、冷たそうな印象を与える美女だが理知的で愛情深い女性だ。


 ルヴァランの漆黒の獅子の深い寵愛を受ける唯一。


 他国からは氷華妃などと呼ばれているらしいが、アルティリアは見る目がないと思っている。優しくてお茶目な人なのに。ジークフリードはアレクサンドロス2世と共によく叱られているが、非常に嬉しそうにしている。


 こうしてアルティリアは学園入学に向けて様々なお祝いをされていたが、もちろん父であるアレクサンドロス皇帝も娘のためにと用意したものがある。


 馬車である。


「お父様、すでに、わたくしの馬車は御座いますよ?」

「それは長距離移動用だろう、これは通学専用だ」


 外装は一見すると控えめだが、最高級の素材を使用。細部に渡り細やかな装飾が施されており、また、その意匠の中に花や蝶の他鷹が存在していた。鷹はアレクサンドロスの個人紋章である。余程の愚か者でない限り、その価値は皇族に相応しく、アルティリアが皇帝の寵愛を受けていると理解するだろう。


  座席は座り心地の良いクッションが敷かれ、予習復習のために簡易的なテーブルを引き出す事が出来る。また、睡眠不足の日は仮眠が取れるよう、背もたれを倒せる仕組みが施されていた。これは学生時代から夜中に皇宮を抜け出し、寝不足で学園に通学していたアレクサンドロスの経験から製作されたのだが、侍従のセイン・チャングリフは言う。


「アルティリア様はお前のような夜遊び皇族ではないぞ」

「分かっておる!分かっておるが親心だ!」


 何やら言い訳をしているが、アレクサンドロス自ら用意した馬車で通うという事実は、アルティリアが皇帝の強い庇護の元にいると受け取る事も出来る。貴族達は、第三皇女に軽々しく手出しするなど不可能だと理解するだろう。


「親馬鹿も役に立つものだな」

私財で高級車を買っちゃうパパを始め、末っ子の入学に、本人よりも張り切っちゃう皇族ファミリー。

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― 新着の感想 ―
親バカ、シスコンなどが、大爆発した結果が、コレ。 愛情たっぷりなんで、素直に受け取って「ありがとう」と感謝の言葉伝えたほうが、皆さんきっととっても嬉しいと思います。 それとリボンは、確かにそれくらい…
キュロットやズボン、ボレロにジャケットにワンピースツーピースも選べる、それもう多少の調整とかじゃ収まらないよう 冬場は厚めのタイツとかレギンスとか、もこもこブーツとかふわもこ帽子とかが欲しいです
祝!!100話!! 学園生活はテティス様もいらっしゃるのでしょうか? ワクワクです
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