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偽りの城主

 背後から突然声を掛けられた事でエアリスは思わず驚いた体勢のまま硬直してしまった。まさか自分以外にも人が居るとは思ってもおらず取り乱してしまうが、一度心を落ち着かせたエアリスは改めてその少年に目を向ける。


 エアリスよりもずっと幼い容姿の少年は皺ひとつ無い真っ白なシャツを着て、首元には赤い蝶ネクタイ。肩紐が付いた黒いショートパンツを身に付けている。そして柔らかな金色のミドルヘアにルビーなどの宝石の様に輝く真紅の瞳。そして何故か右足にはその容姿に不釣り合いである頑丈な鎖が繋がれた足枷が付けられていた。


 まるで童話の絵本の挿絵から飛び出して来たのかと錯覚させる程、整ったその出立ちにエアリスは思わず見惚れてしまう。


「ねぇ聞こえてる?」


 あまりにも呆然としているエアリスに対して少年は顔を覗かせた。


「……え? あぁごめんなさい! 私はエアリス・ハーメルン。冒険者です! えっと……君は?」


「僕が誰かなんてどうでもいいよ。それよりもどうやってこの部屋まで来たの?」


「えっと、さっきまで一階の長い廊下を歩いていたんだけど突然、転移魔法か何かで此処まで飛ばされちゃって……」


「そうか……ということは()()()()()()()()()()()()()()()……君さ、一人で此処に来た訳じゃないでしょ。仲間は何人いる?」


 少年は表情を曇らせながらそう呟くと何かを考え込む素振りを見せた後、エアリスに尋ねる。


「ふ、二人です!」


「二人か……なら時間はまだあるな……さっき入って来た入口の廊下を反対側へ真っ直ぐ進むと上へ続く階段がある。そこを登って右に進めば正面玄関に繋がってるから早くこの城から脱出した方がいい」


 少年は入り口の扉に向かって指を差しながら出口までの詳しい道のりを伝える。


 だが一人で脱出する訳にもいかず「でもその前に他の二人を探しに行かないと!」と切り出すエアリスだったが、少年はどこか残念そうに首を横に振った。


「残念だけどそれは諦めた方がいい。君がここに飛ばされた時点で既に二人のどちらかの元にアイツが向かった筈だから……」


「アイツって……一体誰なんですか?」


「この城の偽りの城主(あるじ)……僕の叔父だよ」


 少年は部屋の天井、もといその先に居るであろう存在を見詰めながらそう呟いた。

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