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運命のすれ違い

 5分後、バモンの仲裁によりルーベルとラフィットはようやく落ち着きを取り戻した。ルーべルは恥ずかしさからか少し顔を赤めており、ラフィットに関しては仲裁の終盤でバモンが振り下ろした拳骨が効いたのか頭部を手で押さえたままテーブルに顔を伏して悶えていた。


「お見苦しいところを見せてしまって申し訳ありませんでした……」


「いえいえ、気にしないで下さい!」


 醜態を晒したと感じているルーべルが自責の念にかられて謝罪する。しかしエアリスはそんな事は気にしていないと言わんばかりの笑顔を見せた。それを見てルーべルは何処と無く安心した様子であった。


「それでは気を取り直して今回の依頼の内容を説明しますね」


 ルーべルはそう言うとこの村の周辺の地図を取り出してテーブルの上に広げ、現在地の村から東に位置する森を指差した。


「今回の依頼はここから東にあるこの森の生態調査です。最初は遺跡や簡単なダンジョンの探索も考えたんですが、やはり最初はこれくらいが妥当だと思いこの依頼を受けることにしました」


「森の生態調査ですか?」


「はい。最近この森で生息している生物の数が減少していると報告されているんです。我々の目的はこの森の調査を行い、早急に事態を終息に導く事です」


 生態系の変化。それはこの世界では決して珍しい事ではなく、この村の周辺でも度々観測されている現象であった。原因は様々だがこの現象を修復するのもハンターや冒険者の仕事の一つである。


「なるほど。その現象の謎を突き止めれば良いんですね」


 その言葉にルーベルは「その通りです」と頷いた。


「この森に向かう道中でモンスターに遭遇する可能性が高いです。もし遭遇した場合、エアリスさんは我々の後方からの支援をお願いします」


「分かりました。しっかりとサポートさせて頂きます!」


 威勢良く返事をするエアリス。しかし初めての依頼に緊張しているのか手に持っていた杖をギュッと握りしめていた。その様子を見て察したのかラフィットが少しでも緊張を解こうと口を開く。


「大丈夫だってエアリスちゃ〜ん! 俺たちが付いてるからよ!」


「我々も全力で援護します故、安心して下さい」


「はい。ありがとうございます!」


 ラフィットに続いてバモンも優しい口調でエアリスに語りかける。その言葉に緊張もほぐれたのかエアリスは笑顔を浮かべた。


「では話も済んだことですし早速、向かいましょう」


 話が終わり、エアリス達は席を立つと入り口まで歩いて行く。その途中でもラフィットはエアリスに対して好きな物や趣味についての話題を振り、エアリスもそれに一つ一つ丁寧に答えていた。そして入口の扉の前まで来ると先頭にいたエアリスは扉を開ける。するとエアリスの前に全身を覆い隠す黒色のローブを纏った人物が立ち塞がり、エアリスはニッコリと笑顔を浮かべて道を譲る。


「どうぞ」


「あぁ、悪いね」


 声の質感的におそらく女性であろうローブの人物は軽く礼を言うと扉を通ってカウンターへ向かう。その姿を目で追っていたエアリスはふとルーベル達に視線をずらすと彼らは食い入るようにその人物を見つめていた。


「なぁ今の奴、もしかして……」


「恐らく噂の奴だろうな」


 ラフィットとバモンが周りに聞こえるか聞こえないか程の小声で会話をしている。噂とは何の事であろうかという疑問が頭をよぎりつつ、そんな三人を見て不思議に思ったエアリスは首を傾げた。


「あの、どうかしましたか?」


「いえ何でもないです! さぁ、行きましょう!」


 ルーベルが扉を開けて再び歩み出すとエアリス達もそれに続いて行く。だがギルドを出て暫く歩いた所でエアリスは先程すれ違った人物がどうしても気になり、歩みを止めると振り返って先程まで居たギルドをジッと見つめた。


「エアリスちゃ〜ん! 置いてっちゃうよ〜?」


「はい! 今行きまーす!」


 ラフィットの呼ぶ声にハッと我に帰ったエアリスは再び歩み始めた。見るとルーベル達との距離が既に何十メートルも離れておりエアリスは小走りで三人の元へ向かう。その道中、エアリスはいよいよ始まる冒険者としての仕事に胸を弾ませていた。


 だがこの時、ローブの人物とエアリスとの出会いが今後の世界の運命を大きく変えるとはまだ誰も知らない。

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