プロローグ
お初にお目にかかります。紡ぎ星と申します。
今回、初投稿させていただきますので、もしこの作品を少しでも面白いと感じて頂けましたら是非ご声援の程宜しく、お願いします。
とある深い森の奥深く。空は雲の間から時折、顔を覗かせる満月と満天の星々が輝き、辺りは巨大な木々に囲まれ静寂に包まれていた。木々にはまるで蛇の様なツタが張り巡らされ、鳥も獣も寄り付かないその森はあの世への入り口かの如く奥に進む程に暗闇が広がっていた。
そんな森の中で彼女はただ一人、血塗れの状態でそこに倒れていた。彼女の右腕は肩の根本から無くなっており、身体からは縦に切り裂かれた大きな傷口から絶えず大量の血が溢れ出ている。傷が肺にまで達しているのか呼吸音がどこかヒューヒューと乾いた音を発し、命の灯火は今にも消えかかっていた。
その時、木々の隙間から顔をのぞかせる様に青白い月明かりが彼女を照らす。すると彼女は最後の力を振り絞り、左手で月を掴み取る様に伸ばすと最後に震える唇で言葉を紡いだ。
「……ごめん……な」
その瞬間、彼女の命は尽きた。その言葉は死んでしまった以上、誰に対して発したものなのかは誰にも分からない。ただ一つハッキリしている事は彼女のおよそ20年に渡るあまりにも短い人生はたった今幕を閉じたと言う事だけだった。
だが彼女の物語はまだ終わらない。ここから始まるのだ。彼女にとって長く険しい旅の物語が。