第1章 ルティ!王太子様からうっかりプロポーズされてしまう
ギルモア帝国ルイス様のお兄さん「ダリアン様」の恋話です。
溺愛系執着王子の全力頭脳プレイをお楽しみください(^_-)-☆
「あのさ、もうすぐわたしの大好きなルイスが結婚するんだよね」
ギルモア帝国の王太子、ダリアン様がテーブルを拭いて
いたわたしの目の前でそう言った。
満面の笑みで顔を覗き込まれると心臓に悪い。
キラキラが過ぎる。
眩しすぎて直視がつらいよ。
「目っ、目があっ~!!」
って叫びたくなるから本当に止めてほしい。
整いすぎていて、時々作り物なんじゃないか
と疑いたくなるほどのイケメンぶり。
サラサラで艶々な金髪はおそらく24金でできてる。
王妃様に似た優しくて甘い顔立ち。
パッと見は、ザ・王子様。
でも背は高いし、筋肉もしっかりついてる。
ダリアン様のお着替えを手伝うのも
専属メイドであるわたしのお仕事
だから嫌でも目に入ってしまう。
「今、わたしの胸板見ていたよね?触ってみる?」
にこにこしながら耳元で囁くのは本当に止めてほしい。
わたし、20歳になるのに恋愛スキルゼロなんですよ。
清く正しい生活しているわたしには刺激が
強すぎますから。
わたしの名前は ルティ・ブランシュ。
年齢は20歳。身分は平民。
いろいろあって6年前から王宮で働いているの。
3年前に王太子ダリアン様の専属メイドに
異例の大抜擢。
それ以降、わたしの私室はダリアン様の
部屋の中にある。
まあ、相当広い部屋だけど
ドアを開けたらダリアン様の部屋。
よーく考えてみたらおかしくない?
メイド長からは、こう言われたの。
「ダリアン様に何かあった時、すぐに
駆け付けられる距離で生活するのが
専属メイドの義務ですから」
驚いたけど、王宮だしね。
平民には理解できないルールだってあるだろうし。
そういうものか~って
思っていたけど。
やっぱり、おかしいなって最近気づいたの。
気づくのが遅すぎたけど。
21歳の男と20歳の女がドア一枚隔てて
同じ部屋にいる。
お互いにプライベートも何もあったもんじゃない。
月に2日ある休日以外は、ほぼ毎日
ダリアン様と過ごしている。
食事はさすがにメイド仲間と食堂で食べるけど
男性の使用人と会話することなんてほとんどないし。
休日も実家に帰って家族とのほほんと過ごすだけ。
時々、この世の男性はダリアン様しかいないような
錯覚を覚える時があるの。
これは本当にまずい。
こんなスーパーハイスぺ王太子が男性の
基準になってしまったら
絶対、結婚なんてできなくなる。
理想だけが高くなって、無意識に比べて
しまいそうだし。
それは困る。
非常に困るっ!
一応、女に生まれたからには女としての
喜びもちゃんと味わいたいし。
心から愛し合う男性と。
結婚して。
キ、キスとか‥
しょ、初夜とか。
ピーとか‥ピーとか。ごにょごにょ。
(お察しください…)
わたし、そんな経験もできずにここで朽ち果てるの?
毎日ダリアン様のお世話をして、そのうち
ダリアン様とどこかの貴族令嬢との
間にできた子供の世話をして最後は
孫の世話までしてさ。
ヨボヨボになったら「お疲れ様でした!」
って言われてあっさり退職。
死ぬときは誰にも看取られずに寂しく死ぬ。
それがわたしの一生。
こわーい。
背筋が寒くなったわ。
そんな未来を回避するためにも
この仕事を辞めたいとは思っていたのよ。
でも、案外居心地は悪くなくて。
ダリアン様は弟のルイス様が大好きで。
ブラコンで自信家で。
ちょっと変な所もあるけど
頭はいいし、話題も豊富で話していると楽しい。
涙もろい所も実は嫌いじゃない。
おいしいお店にも連れて行ってくれるし。
おまけに気前も良くて、お給料もいい。
破格といってもいい待遇。
だから離れられずにいたの。
ダリアン様がもっと、すごいケチとか
足が臭いとか、生理的に無理なビジュアルとか
めちゃくちゃ嫌な奴とかだったらさっさと
見切り付けられたのに。
気づけば6年間一緒にいる。
そのうち3年間は同じ部屋で過ごしているし、
やっぱり何かしらの情も湧いちゃうのよ。
お互いのためにもこの辺が潮時かなって気がしてたの。
私の実家は小さな問屋をしている。
6年前に大きな火災を起こしてしまい
家も会社も何もかも全焼。
莫大な借金だけが残ったの。
父親も母親も元々はお金持ちの
お坊ちゃん、お嬢さんだったから
借金まみれの悲惨な状況になっても
「まあ、どうしましょう」
って2人してオロオロして泣くだけだし。
弟のアリヤはまだ幼すぎて戦力外だし。
私がしっかりしなくちゃ!
と拳を握りしめていた時に、運よく王宮で
の使用人としてスカウトされたのよね。
それが14歳の時だったわ。
夢中で働き続けてもう、20歳。
ちょうど、実家の借金も先月返済し終わった所だし。
弟のアリヤも、もうすぐ学園を卒業する。
アリヤは卒業したらお父様の事業を手伝う
みたいだし、もう大体の道筋は見えてきた。
ようやく私の役目が終わろうとしているの。
重い荷物を降ろしてこれからは自分の
人生を歩めるってものよ。
もう王宮でもらうほど高いお給料じゃなくても
やっていけるし。
ただ一つ問題だったのは、王宮を去る意思を
いつダリアン様に伝えるかってこと。
なかなか言うタイミングがなくて、困っていたのよね。
「ルイスの結婚、ルティはもちろん
知っていたよね?」
ダリアン様がからかうように言ってくるから
私は若干、むきになって答えた。
「もちろん知っていますよ。てか、もう、国民全員が知っていますよ。
良かったですね。おめでとうございます!わたしも嬉しいです!」
女性嫌いだと噂されていたルイス様だったけど
大恋愛の末、隣国の侯爵令嬢だったエレナ様と
結婚が決まって帝国中がお祝いムードに包まれた
のはつい最近のこと。
エレナ様は隣国の王太子の婚約者だったけど
一方的に婚約破棄されて落ち込んでいた所を
一目ぼれしたルイス様が慰めたそうなの。
出会ってすぐに結婚が決まったみたい。
あれだけ女性嫌いだったルイス様が
そこまで入れ込むなんて、一体どんな女性なのか
興味津々だったけど、お会いしたら納得。
本当に美しくて…優しそうな方だったの。
エレナ様とルイス様は本当にお似合いで
見ているだけで、目の保養。
こんなにも国民の目を潤してくれたら
もうそれだけで王家の存在価値あると思う。
生まれて初めて税金払うのが惜しくない
かもって思った。
私は王宮に努めて6年になるけど、断言できるわ。
あんなに優しく動物以外の誰かに微笑む
ルイス様を見たのは初めて。
わたしは、この王太子、ダリアン様の専属メイドだから
ルイス様に会うときは大抵ダリアン様と一緒。
弟との時間が楽しくて仕方ないダリアン様と
頻繁に訪れるダリアン様に少々お疲れ気味な
ルイス様だと、埋め切れない温度差があるのよね。
「男女間に限らず、兄弟であっても押してばっかりじゃダメですよ。
時には引いてみたらどうですか?
そうしたらきっとルイス様から会いにきてくれますよ」
恋愛スキル村人以下のわたしに諭されても
説得力はないだろうけどとりあえず言わせてもらうわ。
ダリアン様、いつも自分から
ルイス様の部屋に会いに行くのよ。
わたしもよく同行させられる。わたしの記憶では
ルイス様の方からダリアン様に会いに来た
事は数えるくらいしかない。
ルイス様ももちろん、ダリアン様の事は好きだろうけど
とにかく、ダリアン様の愛が重いのよ。
ちょっとやんちゃで動物好きな可愛い弟と
他愛もない話をしながらからかうのが
楽しくて仕方ない感じ。
「いいんだよ。わたしが会いたくて
会いに行っているんだからさ。
わたしにとってこの時間は大事な息抜きなんだよ」
息抜きかあ。
ダリアン様、確かにハードな毎日だもんね。
ギルモア帝国って大きいのよ。
その分土地も広いし、管理しなくちゃいけない
範囲も膨大。
隣接する国も多いから国境の警備に当たる
軍の規模も規格外。
その指揮を取るのもダリアン様。
日々の政務に加えてそういうものまで
ダリアン様の指示の下で動くの。
ダリアン様は生まれつきの天才じゃない。
実は努力の天才だって、私は知っている。
いつも遅くまで勉強している姿を毎日見ているから。
努力を隠すのが天才的に上手くて
弱さを見せないだけなの。
王太子としての責務を全力で全うしようとしてる。
だからこそ、お年頃になった今、将来を見据えて
ダリアン様を傍で支えてくれる女性が
必要だと思うの。
その為には、わたしはここにいない方が
いいだろうって思うのよね。
どうやってダリアン様に話を切り出そうか…。
悩むよおおお。
「だからさ、そろそろいいと思うんだ。ルティ。どうかわたしと結婚して欲しい」
はい?




