最終話:第六世界の管理者より
エンドロールだぞ、泣けよ()
第三世界での騒動から数週間。
サツキは敵ではなく仕事に追われていた。
「サツキ様、ここにある書類の決裁をお願いします」
「山じゃねぇか! これは書類じゃない!」
「ほらサツキくん、頑張って。私も手伝ってるから大丈夫だよ」
「シア……!」
「なんですか私が悪いみたいじゃないですか酷いですサツキ様!」
「ごめんって!」
エディン城で、三人仲良く書類仕事に追われていた。
サツキは管理者として仕事を進めているが、まだまだ慣れていない。だが、元管理者と管理者代理という仲間がいるおかげで、なんとか乗り切れいている。
「……むぅ、あたしのことも忘れないでよ。てか喋りながらなんかできないし」
「憑依されないでも仕事できるようになれば大活躍だね、ライアちゃん」
「シア姉には勝てない!」
……それと、管理者から指示を受けられるライアもだ。
きちんと身体を治したライアは、シアとサツキに土下座を繰り返し、二人はライアを再び仲間に迎え入れた。なんとも騒がしくなったが、サツキはそれが心地よかった。
「むにゃむにゃ……」
「指示する側の人はそこで寝てるけどな」
どうやらジヴリナは身体が非常に弱く、他者を頼ることで生活をしていたらしい。横にいた偉丈夫は護衛兼召使なのだ。
今はひとまず、ということで、第六世界と行き来していた。
生気のない顔、怖いほど細い四肢を晒け出しながら、ソファでぐっすり寝ている。
「あ、サツキ様。そろそろお時間ですよ。準備は出来ていますか?」
「なんとかなる」
「出来ていないと同じだよね!?」
シアのツッコミを華麗に躱しつつ、サツキは外へ出る。
そこには高台——バルコニーがあり、眼下には第六世界の住民が押しかけていた。
「あれが新しい管理者さま……!」
「結構イケてるじゃん」
「第三世界を併呑した実力の持ち主だろ? 舐めちゃいかんよ」
民衆が好き勝手言うのを聞きながら、サツキは背後に侍る三人を手招いた。
「シア、魔術を頼む」
「〈風よ、広げよ〉」
サツキの口元に魔術の風が渦巻く。
試しに「あー」と言ってみると、それが街中に響き渡った。
民衆は一気に静まり返り、サツキの言葉を今か今かと待ち構える。
「こほん。さて——よくぞ、俺の就任式典に集まってくれた。俺はサツキ・アルヴェルク。第六世界の管理者だ。後ろにいるのは大切な仲間で、元管理者や、聖女、第三世界の四大公爵。信頼できる優秀な部下だ」
サツキは次の瞬間、バルコニーから飛び降り、階段状に足場を作って着地した。
一段一段下りるごとに、民衆の顔が——人々の顔がよく見える。
「俺は、この世界で冒険して、色々見た。楽しいこともあったし、悲しいこともあった。そして俺には力がある。仲間がいる。だから——この世界を、俺が変える」
熱気が、歓喜が、鼓膜をつんざくほどに聞こえる。
大半は喜び、歓迎する雰囲気でサツキを迎えた。
一方、一部は訝しむ顔つきでいる。サツキはこういう人にも信じてもらえるよう頑張ろうと決意していた。
「さて、最後に一つ」
——第六世界の管理者より、全世界に生きる人々へ通告する。我々は、これより世界を統一するための革命を始める。賛成する者は歩み寄れ。反対する者は話し合おう。俺は、その先に平和な未来があるのを確信している。
静寂。一拍して——拍手喝采!
「俺らの管理者!! 応援してるぜ!!!」
「やっと現れたんだ、期待してるぞ!」
「確信だ確信!」
皆の笑顔が、嬉しそうな声が、サツキを喜ばせた。
いつか、偉大な冒険を成し遂げて、勇者と呼ばれたい——そう願って止まなかった。
◇
「お疲れ様。かっこよかったよ、相棒」
「シアのアドバイスのお陰だ。『自分のままで、正直に』なんて、それでいいのかと怖かったぞ」
演説のあと、サツキはゆっくりとした時間を過ごしていた。
冷めない緊張をほぐそうと、温かい日差しの下で謁見の間にいる。石の冷たさが、サツキの心を着実に冷静へと導いていた。
——すると、ログを開いたわけでもないのに、いきなりサツキの視界に画面が表示される。
「これは……?」
「管理者名簿、って書いてあるね」
開くと、確かにそこには世界の名前と管理者の名が記載されていた。
滅んだ世界のものはないのか、シアの名前も見つけることは出来なかった。だが、サツキは自分の名前げあることに不思議な安堵と喜びがあった。
第六世界:サツキ・アルヴェルク(配下:第三管理者ジヴリナ=インフェリア)
「おめでと、サツキくん!」
「全部シアのおかげだと俺は思ってるよ。あの時、俺の手を引いてくれなければ……」
「これも運命だったよね。自分の色がある——管理者を見つけたときは驚いたんだもの」
シアは健気にはにかんだ。元気で笑ってくれるこの少女が隣にいてくれることが、サツキは何よりも嬉しかった。
「見て、第零世界ってあるよ」
「む、第零世界……?」
なぜか並んでいた第零世界。その管理者の名は——「博士」だった。
「プレローマにある世界で数字が入ってないのって……まさか……!?」
「あの野郎マジか!?」
「しかも最後に『——第零世界の管理者より』ってあるね……サツキくん、パクられてるよ」
「どこで聞いてやがるんだよ……」
「「はぁ……」」
なんだかんだため息もついてしまうような二人だが、サツキはきっと上手く行くと信じている。
塔の攻略、親父の捜索、世界の管理……やることは山積みでもいい。
「ま、退屈じゃないならそれでいいよな!」
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
心より、深く感謝申し上げます。
私の春休みを全て投げ売って作り上げた作品、楽しんで頂けたならこれ以上の喜びはありません。
またお会いできることを願っております。
それでは!




