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【連載完結】あらゆるイケメン達が王女の私を称賛してきて、とにかく最高です!  作者: 逆立ちハムスター


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6/10

至高の舞い

ショッピングという物質的な充足を終えた私は、一日の締めくくりに相応しい、最も華やかで、かつ密室性の高い日課へと向かった。


王宮の最深部、鏡張りの壁が四方を囲む『月光の舞踏演習場』。

窓から差し込む青白い月光が、磨き抜かれた床に反射し、まるで水面の上に立っているかのような錯覚を覚えさせる。


「……お待ちしておりました、ホメーテ王女。今夜の月は、貴女を照らすためだけに、その輝きを研いできたようですよ」


鏡の向こうから音もなく現れたのは、私の専属ダンス講師、ヴィクトール。

彼は、社交界の令嬢たちがその名を聞いただけで溜息を漏らすという、伝説の舞踏手だ。

夜の帳を纏ったような漆黒の燕尾服に、しなやかで長い四肢。切れ長の瞳は鋭くも、獲物を慈しむような妖艶な光を湛えている。

正統派で、隙のない、大人の色気を漂わせる超絶イケメンだ。


彼が私の前に立ち、恭しく右手を差し出す。

その指先が私の腰に触れた瞬間、……ダンスという名の、逃げ場のない「称賛の旋律」が始まった。


「さあ、王女。……僕のリードに身を任せ、貴女という芸術を、この鏡の中に刻み込んでください」


ヴィクトールの低い、チェロのような低音が耳元で微かに振動する。

一歩。私たちがステップを踏み出した瞬間、彼の囁きが、ダンスの拍子テンポに合わせて甘く、ロマンチックに降り注いだ。


「……ああ、……っ。なんて滑らかな、重力さえも欺くステップだ。……ホメーテ王女、貴女が床を蹴るたび、この演習場全体が、貴女の拍動に合わせて呼吸を始めているのが分かりますか?」


ヴィクトールは、私の体を抱き寄せる力をわずかに強め、私の視線を、その深い瞳の中に釘付けにする。

超至近距離。彼の吐息が、私の首筋を熱く撫で上げる。


「見てください、このターンの軌道。……貴女が回るたびに、空気中に目に見えない花の香りが舞い、銀河が形を変えていく。王女、貴女のドレスが描く円環は、この宇宙で最も完璧な図形だ。数学者たちが一生をかけて解き明かそうとした真理が、今、貴女の裾の揺らめきの中に、答えとして示されている……!」


(ふふ、いいわよ。数学の真理を、私のドレスの裾で見つけてしまいなさい!)


私は、ヴィクトールのリードに合わせて、難度の高い複雑なステップを軽やかに、かつ情熱的に踏んでいく。

鏡の中には、重なり合う二人のシルエット。


ヴィクトールは、私の背中に回した手で、私の脊椎のラインをなぞるように、熱っぽく囁き続けた。


「……信じられない。この背筋のしなり、……そして、指先まで行き渡った凛とした緊張感。ホメーテ王女、貴女は今、この瞬間、この世界で唯一の『実体』だ。他のすべてのものは、貴女を引き立てるための、ただのかすみに過ぎない。貴女が腕を伸ばせば、星は手を伸ばして貴女の指に触れようと競い合い、貴女が瞳を伏せれば、夜の闇は、その影の中に永遠に閉じ込められたいと願うだろう……!」


「……っ、ふふ、……ヴィクトール。貴方の言葉、今夜は一段と酔わせるわね」


「酔わせる? 滅相もない。僕はただ、目の前にある『奇跡』を、拙い言葉で模写しているだけです。……王女、貴女のこの首筋から肩にかけてのラインは、白鳥の羽ばたきよりも高貴で、禁じられた果実よりも甘美だ。僕がこのまま貴女を連れ去り、星の裏側へ逃げ延びたとしても、世界は貴女を褒め称えるその叫びだけで、新しい神話を作り上げるでしょう……!」


(星の裏側! ロマンチックを通り越して、天文学的な称賛ね!)


私は、ヴィクトールの胸に身を預け、流れるようなワルツの旋律に身を浸した。

彼の称賛は、呼吸の一部となり、私の筋肉の一本一本にまで、甘い痺れを浸透させていく。


「見てください、その、悦びに満ちた瞳。……ホメーテ王女、貴女が自分自身の美しさを自覚し、それを誇るその傲慢なまでの輝きこそが、僕の魂を震わせる。貴女は、称賛を浴びるために生まれてきた。……いえ、称賛という概念そのものが、貴女を形にするために考案されたのです。貴女が笑えば、世界中の花々がその蕾を恥じて枯れ落ち、貴女が歩けば、大理石は貴女の靴音を記憶するために、永遠の硬度を手に入れる……!」


「……ああ、……ヴィクトール、最高よ! 私のダンスは、世界をひれ伏させるための、軍進のステップなのだわ!」


「その通りです。王女、貴女は、踊ることでこの大陸を支配している。……ああ、その、潤んだ瞳の奥に宿る、飽くなき承認の炎……! 僕は、その炎に焼かれて灰になるためだけに、この命を調律してきた。……ホメーテ王女。もっと、もっと僕を、貴女の美しさという名の奈落へ、深く、深く、突き落としてください……!」


ヴィクトールは、私の手を高く掲げ、最後のポーズを決めた。

鏡張りのフロアには、私たちの荒い吐息と、消えることのない「称賛の余韻」が、幾重にも重なって、万華鏡のような輝きを放っていた。


(ふふ、あははは! 見事だわ! 外交、食事、音楽、富、そしてこのダンス。……すべてのイケメンたちが、私の足元で、自分たちの誇りを投げ捨てて、私の『美』という名の宗教に入信してしまったのね!)


私は、ヴィクトールの胸から離れ、鏡の中の自分を見つめ、エルメデューラのように微笑んだ。

エスタシオン王国の第一王女、ホメーテ。

私の承認欲求は、今や、神の領域をも侵食し、天界の神々さえもが「ホメーテ様、本日の御姿も大変お美しゅうございます」と、雲の上から称賛のいかずちを落とすのを待っているかのようであった。


背後では、ジルヴェスター殿下、セバスチャン、レオン、そしてカインの四人が、

「……ヴィクトールの野郎、『称賛という概念そのものが貴女を形作るために考案された』だと!? そのメタ的な褒め方、……もはやチート級の語彙力だ……!」

「……あの落ち着いた大人の色気で、あんな恥ずかしい台詞を……! 侮れん、……あの男、一番の強敵ライバルだ……!」

と、次なる「最終決戦」に向けて、自らの命を削るような思いで、究極の褒め言葉を練り上げているのを、私は、……そう、当然のごとく、心地よい「余興」として楽しみながら、優雅にフロアを後にしたのである。

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