最終回:画面の向こう側の、その先へ
長きに渡りありがとうございました
ミサキはいつものように
慣れ親しんだ『ゼロQLIVE』の
アイコンをタップした。
画面が立ち上がるまでの数秒
これまでの出来事が
走馬灯のように脳裏を駆け抜ける。
かつて、ただのリスナーだった自分。
ライバーの連とももかに惹かれ
勇気を出して飛び込んだ配信の世界。
連へのガチ恋に破れ、ブロックされた夜の涙……。
「あの時は、世界が終わったと思ってたなぁ」
今では笑い話だ。
どん底の自分を救ってくれたのは
憧れのモデルライバー・勇次だった。
彼を通じて最強王者クリスタルという
異次元の存在と出会い
気づけば自分もトップライバーの
仲間入りを果たしていた。
勇次とは恋人になり
小説家としての道も拓け
音楽ユニット『スマイリング』のボーカルとしても
ステージに立っている。
「ミサキ、何ボーッとしてんの? 配信始めるぞ」
隣で勇次が、呆れたように
でも愛おしそうに笑いかけてくる。
ふと、業界で囁かれている噂を思い出す。
(スターエイト社長とクリスタルさんが
芸能界も配信界も支配しようとしてるって……。
あの二人なら、マジでやりかねないのが怖いのよね)
ミサキは苦笑いしながら
賑やかなログイン通知を眺めた。
今、この瞬間も
仲間たちはそれぞれの戦場で輝いている。
撮影現場では
女優としての階段を駆け上がっている
白百合ももかが
かつての狂気を感じさせない完璧な笑顔で
カメラを見つめていた。
その傍らには
彼女をライバーとしても女優としても守り抜く
「マネージャー兼王者」クリスタルの
無形の圧が漂っている。
山本勇次はといえば
すっかりミサキの隣が定位置だ。
トップモデルとしてのオーラを放ちつつも
ミサキに向ける顔だけは完全に
「恋する男」のそれである。
一方、クリスタルはといえば、
ついに元カノの女優・千葉ユカリと正式に復縁。
二人が並んで歩く姿は
もはや「芸能界最強のパワーカップル」として
週刊誌さえ手出しできない聖域となっていた。
「最強の助っ人」美月さゆみもまた
女優として不動の地位を築きながら
配信でも女王として君臨し続けている。
そして、スターエイト。
芸能事務所として本格稼働したそこには
かつての「黒幕」としての
眼光を取り戻した村谷社長がいた。
「クリスタルに顎で使われとるのも
まぁ、悪ぅないな」
そう言いながら、彼は不敵な笑みで
芸能界と配信界を繋ぐ巨大な糸を操っている。
ゼロQLIVEは
彼らの熱狂に引きずられるように
さらに巨大なうねりとなって
世界を飲み込もうとしていた。
ミサキは、配信画面に流れる無数の
「こんにちは」の文字を見つめながら
静かに、けれど確かな足取りで
自らの歩みを振り返る。
自分に特別な才能があったわけじゃない。
ただ、誰かを応援したくて
誰かに見てほしくて
必死に画面に向かっていただけ。
けれど、この場所で仲間ができた。
勇次という、かけがえのないパートナーに出会えた。
「ゼロQLIVEに出会って
私の世界は180度変わった」
かつての自分のように
画面の向こうで震えている誰かに届くように
ミサキは心の中で強く、凛とつぶやいた。
「――私は、私の場所で生きていく」
その頃、豪華な自宅のソファで
ミックスジュースを片手に
自分の配信データをチェックしていたクリスタルは
画面に向かって不敵にニヤリと笑った。
彼にとって、支配だの権力だのは
結局のところ二の次でしかない。
寄せられる膨大なコメントを眺めながら
絶対王者はいつもの調子で
この物語を締めくくる最高の言葉を放った。
「支配? 復讐? そんなん堅苦しいわ。
俺はただ、誰よりも『オモロい事』がしたいだけや。
――人生、楽しまな損やで!」
これにて最終回となります!
お読み頂きありがとうございました┏○ペコッ




