3話-25
「今のはなんでしょうかっ!!? 羽月選手の放ったティールが、西園寺選手と同じ軌道を描いた様に見えたのですが、これは私の見間違えでしょうかっ!!?」
会場が大歓声を上げる。観客席から立ち上がった人々が、沢山の拍手をくれた。トレビアン! ブラボォ!
大和も目が点になってる。ははは、そんな間抜け面じゃ、絵茉に笑われるぞ。
「真央さん……今の」
投げ終えて戻ってくると、絶句しているチョコや、同じく驚きの表情を隠せない先輩たちと目があった。
特に西園寺先輩は、自分の切り札を簡単に真似された事で、焦りを感じている。
「私も話しておきましょう。
私の能力は再現。他の十二支の能力を再現出来る能力です」
──再現。これが私の能力だ。
猫には関係がない、まるっきり私の為の力。
──真央、泣くな。なら、これから父さんは真央の為に走るよ。真央が応援してくれるなら、父さんは最高に実力を発揮するさ! な、だからもう泣くな。指切り、な。
──真央、あなたまた喧嘩してきたの? そんな傷だらけじゃ修弥くんのお嫁さんになれないわよ? 逆に修弥くんが真央のお嫁さんになるかもしれないわね。え? 嫌だ? なら、もう少し大人しくしなさい。約束よ。ゆ〜びき〜りげ〜んま〜ん。
──真央ちゃん、ボク、真央ちゃんにいつも助けられてばかりで、ひぐっ、でも、でもね、今日からはボクが真央ちゃんを守るって、っく、決めたんだ。ボクが、真央ちゃんより強くなって、賢くなって、こんな怪我もしなくて、だから、約束しよっ! いつもの指切り! ボクがっ、きっと真央ちゃんがいつも笑えるように、早くおとなになるんだっ!
──真央。水谷も上原もああ云ってる。あいつらなら、お前の生涯の親友になれるんじゃないかな。それでもまだ不安なら、いつものアレやろうぜ。そうだ、指切り。あいつらも巻き込んで、これからもっともっと面白くなるんだ。
──真央さん。これから宜しくお願いしますね。(対戦では負けて、部活乗っ取られて複雑な気分ですけど。あと倉多さん、あの人何なんですか?)えっ? いえ、こちらの話です。真央さんとはライバルとしてこれから互いに精一杯頑張りましょう! えっ? 友達としても仲良くしたい? ま、まぁいいですよ。で、何ですかその手は。指切り? 指切りって子供ですか。ああっ、しないとは云ってませんよ。しましょう指切り。ライバルとして、そして友達として、これから宜しくお願いしますね!
この能力は、私がこの目で見た他の十二支の能力を再現する事ができる。所詮真似っこなので、初めは完璧には再現できない。
だが、相手の能力を繰り返し見ることで再現力が上がっていく。何度も観察し、真似る。これは、幼い頃から父親の背中を追いかけたなかで育っていった感覚と、家族や友人とのかかわりを大事にする為のツールの一つ「指切り」が、私の中で融合した結果である。
相手の能力とかかわる事で、その能力を使う事ができる、この私ならではの能力。
(でも、この能力のお陰で、私は戦える)
西園寺先輩は、既に鳥を何度も使用している。私もチョコも絶妙なポワンテやティールを決める度に、その事にお構いなくテラン外に弾き飛ばされる苦汁を味わってきた。
だが、時はきた──。
余計な事は云わない。能力は完璧に再現出来るのだと、相手に恐怖を植え付ける。
「ここからは、本気でやります。
先輩の鳥はもう見切りました。自分の切り札である横からのティール、今度は、先輩がその恐ろしさをその身を以って体験してください」




