3話-23
「よしっ! じゃあ第一球、いくよっ!」
世良先輩が疑似ブールを掴み、その腕をビュットに向かって振り上げた。
「あらら」
世良先輩の第一投はビュットのかなり奥の方に落ちた。
「ごめんなさい。力みすぎました!」
((チャーンス!))
早速チャンス到来である。
「チョコ、宜しくね」
「はい、行ってきます!」
チョコは肩の力が抜けた様だ。無駄ないポワンテでビュット近くにブールが落ちる。
「やりました!」
上々の滑り出しだ。だが、
「ブラボー!! 先程春日野選手が素晴らしいポワンテを見せた直後にこのティール!!! 世良選手のミスを見事挽回しました!」
西園寺先輩がチョコのブールを弾き飛ばし、同位置に自チームのブールを置く。
「そう簡単には譲らないさ」
「その言葉、そっくりそのままお返しします」
私は直立の状態から少し膝を曲げて、前傾の姿勢をとった。そこから手首のスナップをうまくきかせて、先輩のブール目掛けて投げるっ!
ほぼ一直線に飛んだブールは、相手のブールに強烈な一撃を叩き込んだ。反動で少し戻ってしまったが、ティールは成功した。
「トレビアン! 流石羽月さんですね。簡単には勝たせてくれません」
世良先輩はミスを後に引きずらないタイプの様だ。切り替えがうまい。
「先輩、私投げてもいいですか?」
「ああ」
世良先輩のポワンテ。
(……うまいっ!)
「ブラボォ」
思わずため息が出る様な絶妙なポワンテだ。こちらのブールより気持ち外側で、かつ再度西園寺先輩の投球へとバトンを渡している。
西園寺先輩のティール……これは!?
「鳥」
飾り羽を広げる様に優雅に繰り出す先輩のティールは、巻き上げた風の力で鋭い横回転がかかっており、右側から物凄い勢いでこちらのブールへ突っ込んでいき、テラン外まで弾き飛ばした。
さらに風は勢いを殺さずに突き進んで、今度はロボットの投げたブールさえも風で包んで軌道を変えさせた。ブールは先程と同じ軌道を描き、大小二つのテランでは寸分違わず同じ状況が生まれた。
呆然として、言葉が出ない。
「ブラボー!!! まさかの横からの強烈な一撃ぃっ!!! 羽月選手から再度ティールして奪い返したぁ!」
西園寺の背中から蒸気がたっている。彼女はゆっくりと振り向いて、猛禽類を思わせる目でこちらを見た。
「もう一度云う。簡単には譲らない」




