3話-15
トイレを済ませた後、山小屋の売店を覗いてみた。カップ麺があるが、高い! お財布と相談したが、なくなく諦めた。山頂で食べるラーメンは最高だろうに。
戻って、荷物を見てくれていた部員に感謝した。先生と班長の相談も終わったらしく、一緒に如何? とご飯に誘われたのでありがたくご一緒する。
──神聖な空気が流れ、あたりは緊張に包まれていた。
「いいんですか?」
現実的にありえないと、疑いの目で先生を見る。本当なのだろうか? 幻を見させられているんじゃないのか?
「ああ、班長もお前たちも同じ生徒なのに他の者の為に尽力してくれた。これはご褒美だ。食べてくれ」
先生がバーナーで湯を沸かし、注いで蓋をし、タイマーをセットする。
待っている三分間が永遠に感じられた──。
まだ鳴らない筈のタイマーの音を何度も聞き、その度に伸ばした手をチョコに掴まれた。悟りきった顔で云われる。
「真央さん──、まだその時ではありません」
他のみんなも首肯し、改めて姿勢を正した。
じわじわと募る焦燥感に駆られながら、今か今かと前傾姿勢になってくる。カルタの読み札を待つかのように、輪が狭まってくる。
鼓動が早くなり、掌の中で汗がじわりとした。
ぴぴぴぴぴぴ──。
取り札に食らいつくように、一斉に手を出す。
「待てっ!!!! まずはイタダキマスだ!!!!」
「「イタダキマスッ!!!!」」
待望のカップ麺がそこにあった。
掌を合わせて、感謝を捧げる。
熱い容器で火傷しないように蓋をゆっくり開いた。冷たい空気に晒されて、白い湯気がいい匂いと共に漂ってきた。
渡された割り箸を二つに割り、左掌に乗せる。右手を一旦被せるが、そのまま下に回り込ませる様にスライドさせる。箸の間に右手の中指を滑り込ませ、奥の箸を人さし指と親指と中指で支え、手前を親指の付け根と薬指で固定する。そのまま何度か開閉を繰り返し、ラーメンへと伸ばす。
ラーメンを箸でそっと奥へ押しやり、まずはスープをいただいた。うまい。
続いて、麺と具材をいただく。これまたうまい。麺がうまく、具材がうまい。
またスープをいただく。スープがうまい。
麺がうまい。スープがうまい。これ以上、語る事はない。
私たちは無我夢中で食べ続けた。先程永遠にも感じられた時間が一瞬で過ぎ去り、残ったのは、麺もスープも具材のカケラさえない、まだ温もりのある容器だけだった。




