2話-18
完全なる出オチだった。
「さぁ、真央さんそろそろ」
「ん、そだね。お疲れ様でした」
「待たれい待たれい〜!! 驚くのはこれからだ、な、少し待ってはくれんか」
どうしたこの会長は。
「この『十二克戦記』は、我が漫研がまだ部活として認められていた頃、偉大なる先輩方が漫画研究会として紙とペンで描きしるした、非常に歴史のある書き物なのだ。
な、少し見るだけで良い。パラパラ〜っと眺めるだけでその素晴らしさが伝わるから。なっ、なっ」
物凄く引き止めてきて、怖い。部室もなく各教室を彷徨って小さなコミュニティを必死に守ってきた分、初めて出来た他者との交流の繋がりを断ちたくないのだろう。じぃ〜とこちらを見つめてくるのが痛ましくて、私は観念した。
「わかりました。少し拝見します」
それをきいて嬉しそうに本を渡してくる。ありがとうありがとう、皆で感謝してくる。チョコの視線が痛い。だから絡まなきゃよかったのに──そう視線で云っていた。
漫研がしっかり保存している資料だ。何かしらの価値があるのだろうと、私はゆっくり表紙をめくった。次のページにはこう書かれていた。
「寅娘はエロい。ありがとう」
その言葉と共に、当時寅の十二支であったであろう生徒が、デフォルメ調で描かれていた。胸がデカく、着物が着崩れていた。
私は即座に本を壁に投げつけた。
「「ああ、酷い」」
「酷いのはこっちです! ふざけてるなら帰って下さい! いえ、私たちが帰ります!!」
「待ってくれ待ってくれ、そのページじゃないんだ」
「ならどのページですか? 次同じ様な物が描いてあったら帰りますからね」
「わかった。少し待ってくれ」そう云って会長と他の会員たちは、本を中心にあーでもないこーでもないと話し合っていた。そして、ようやく皆が納得できるページがあったのだろう。本を開いた状態でこちらに見せた。
「これは、かつて行われた『下克上』の内容と結果を描いたコラムマンガだ。対戦の詳細も分かるし、十二支が当時どの様に扱われていたかも描かれている。しかも、漫画として面白い」
会長が見せてくれたコラムマンガは、確かに面白かった。当時の十二支のメンツ、能力の使い方や対戦の内容、結果とその後のエピソードも描かれていて、私もチョコも興味深く読んだ。それに、マンガには「雪溶かし競争」の事も描かれていた。
「真央さん、ここ、『雪どかし競争』ってなってますけど、もしかしてこれって」
「そうだね。もしかしたら古都会長はこれを知ってて今回の対戦を考えたのかもしれない。だとすると、この情報は役に立つ。料理研究会も知らないこの事で、私たちは大きなアドバンテージを取れるよ」
「でしたら、問題は雪を溶かすことではなくてどかすこと……何か良い案ありますか?」
「秘策と奇策がある。あなたたちも手伝ってくれませんか? 他の対戦についても調べて欲しいんです」
「マンガに関してなら、俺たちは是非とも協力させてもらうよ。なぁ、お前ら」
「「おお〜!」」
これで上手くいけば、「下克上」で優位に立つ事ができるぞ! 修弥に褒めてもらうんだ!!




