1話-22
「あいつら〜!!」
絵茉さんがお怒りだ。この場には私と絵茉しかいない。ブラスバンドの急な集まりがあって、修弥と大和は一緒に帰る事が出来なくなった。残った私たち二人は、電車で帰っている途中である。
「修弥はともかく大和まで。『部活だからすまんな』ではないでしょ! なんなの? 私一人騒いでるみたいじゃない!」
「まぁまぁ、絵茉、落ち着いてったら」絵茉はこうして私の代わりに怒ってくれてるのだ。絵茉のこういった優しさが私には分かる。中学の頃から度々救われてきたのだ。
「ねぇ絵茉。十二支のお話に猫は登場する?」私は疑問を感じでた事を絵茉にきいてみた。
「いるわよ。確かネズミの嘘で翌日出発して、十三番目に到着したのが猫のはず」
これをきいてピーンときた。私が猫になった理由も、修弥が笑ってた理由も。私は気づいた事を絵茉に話す。
「なるほどね。なら真央は、修弥に騙されたから猫になったと。でも、今まで猫はいなかったんでしょ。それならどうして」
「しゅうちゃんの性格を考えてみてよ。しゅうちゃんは誰も思いつかなかった事をとんでもない手段で実現する」
「それで、他人の反応を見て笑う……わね。修弥らしいといえばらしいわ」
修弥にも中学生の頃に他人に相談を受ける事があった。相談事を持ちかけられる事が多かった大和だが、その隣にいる修弥の頭の良さも皆知っていた。頭が切れる修弥に、大和には相談しにくいより個人的な相談をする者が時々現れて、修弥はいとも簡単に解決した。
それだけであれば平和な話であったが、修弥は相談者の秘密を逆手に取り、自分が困った時に活用した。秘密をバラされたくなかったら、手伝ってくれないか、と。
これには皆閉口したが、悩みを解決してくれた&云う事をきかないと何をしでかすか分からない為修弥の思うがままに手助けをする事になった。相談する前よりも悩みが増える事から「サラ金」だの「悪魔」だの呼ばれる様になり、しかし未だにそれを分かった上で相談する者もいるのだから、修弥の手腕は見事なのだろう。
やがて、絵茉の降りる駅に着いた。
「あんたも修弥に知らない間にいいように使われないようにね」そういって絵茉はホームに降りた。
「しゅうちゃんは最高の人だもん。多分大丈夫だよ」私はあまり心配していない。彼を信じてるから。絵茉は私の能天気さが気に入らなかったのか、舌を出したままホームを去っていった。
次の駅で降りて、コンビニに寄ってから自宅に着いた。母が晩ご飯の支度をしていて、ご飯ができるまでお風呂に入った。
夕食後、二階の自室で勉強をしていたら、一階の電話が鳴り響いた。
「おかーさーん、電話」
「ごめーん、今手が離せないの。まーちゃん出てくれない?」母は食器を洗っているのだろう。手が泡だらけですぐに電話に出れそうにない。
学校ではあんなに波乱万丈な出来事が起きたけど、矢張り家では日常という言葉がしっくりくるな。ほのぼのとした実感を噛みしめながら、私は階段を降りていった。




