序章 「扉」
遥か高次元の上位者により授けられた異次元の扉、
それは"高次元の移動"である。
点と点が集まると線になり、
線と線が集まると立体になる。
ここまでが一般的に言う3次元までの話だ。
点を動かすと一次元的に動き、
線を動かすと二次元的に動く。
それと同じように立体を動かすと時間が生まれ、
時間を動かした先が可能性となる。
諸説ある話だが、ここではそういう理屈である。
異次元の扉は可能性を更に超越した六次元空間に干渉し、全ての世界へと移動できる。
多元宇宙論と呼ばれるものだ。
ただ、異次元の扉は無制限には開けない。
旅の目的でもある特異点、それを利用しないと開けないのだ。
それも人から出現する特異点ではないと作動しないように仕組まれている。
軽く説明したところで私は未だ見ぬ特異点へと舵を切る。
記念すべき第一回目は私が生まれた基底世界、
時刻は西暦2175年10月8日
アメリカ合衆国イエローストーン国立公園に所在するモノリスWY-25、転移をする。
────────────────────────
異次元の扉を渡る時の感覚、
それは赤子が母親の胎内にいる時の感覚と近い。
或いは寝室で安眠をしているかのような、
本能的に安心をするような感覚である。
────────────────────────
扉を出た先にあるのは無数にある世界を展望できる次元の狭間。
私は今から想像も絶するような時間を掛け、総当たりして行くのだ。
心に刻まれた使命感さえなければ確実にしていないだろう。
意志のある操り人形と意志のない植物は何が違うのか。
そんな疑問すら浮かぶ。
だが、成し遂げなければならない。
私は顔も名前も知らない絶対者の操り人形としてその使命を全うする。
そして、1つ目の扉の目の前へと立つ。
ここから先、扉を開け、敷居を跨げば悠久の旅が始まる。
死なず老いず、世界が終わり、再起動されようが意識は絶えず、
不眠不休で動き続けることが可能なこの肉体で
旅を始める。
無限たる世界へ、されど有限たる世界。
その一歩を踏みしめる。
───────────────────────
世界へ転移する時、少々遅延が生じる。
それは世界が高次元の干渉を受ける準備ができていないから。
降り立った時にすることは単純だ。
簡潔に言うと全人類の人生を観察することである。
これが本当に気が遠くなる作業だ。
これだけで一つの世界における旅の半分を占めるだろう。
余談だが、
私は観測者として、この段階では基本的に現在いる世界へ干渉はしないし、この世界の住民からも干渉されない上に認識されない。
おっと、そろそろ世界が私を受け入れる準備が出来たようだ。
─────────────────────────
何もない空間で立ち尽くしていたが、
建物が次々と現れる。
世界が準備を終えたということだ。
建物を見る限りは中世くらいの世界だ。
ざっと見た感じ基底世界で100年前くらいに流行った異世界系の世界ってものか。
と言っても時代などは然程関係ない、
なぜなら総当りして目星を見つけていくしか無いからな。
****************************************************
到着してから
125年が経過した。
ここは剣と魔法の世界である。
少年心というものが火を噴いている。
****************************************************
到着してから
2589年が経過した。
文明は基底世界で言う現代に突入している。
娯楽もあり暇つぶしができそうだが
私は一人しかいないので不可能だな。
****************************************************
49615年が経過した。
人類はカルダシェフ・スケールで言うところの
惑星文明に発展している
異世界であってもここまで文明を築けるのか。
****************************************************
100006年経過
65年前に人類は銀河文明まで発展したが、
上位存在と接触。
人類は滅亡してしまった。
ここから先は宇宙が滅亡し再生、
再起動するまでただ待機するしかないが、
1巡目の宇宙で得たものは大きい。
基本干渉することは出来ないが、
自分自身に対してはある程度干渉できるのが判明した。
観測して356人目の大魔道士、
その人物は魔法を用いて分身をすることが可能なのだ。
それを真似し、他の世界でも使えるように
千年の時を費やして
自身に授けられた能力に組み込んだ。
これで次回からの周回も大幅に効率化される。
****************************************************
147巡目、総経過年数約5兆8千億年
ついにこの世界の
全人類の人生、運命の轍を観測した。




