十九話
結局、緊急事態宣言がだされましたね。何だか世の中が乱れて来ましたね。疫病が広がって。早く終わればいいんですけどね、この事態。特にネタもないんでどうぞ、十九話目です。
俺はコンラートに俺の我が儘、まぁ要するに、条件を言った。
一つは、非戦闘職であること。
もう一つは、他から干渉されにくいこと。
この二つが当てはまって、また空きだったら、是非とも其のお礼を受けたいと言った。
「まぁ、あればいいんですが、そんな都合のいい話なんて、ありませんよね」
ご都合主義、ってか?あればいいんだがね。
「えぇ、ありますね」
え?
「え?」
あるの?
「このあいだ、丁度賄賂を受け取った非戦闘職の指揮官が逮捕されましてね」
「だとしても、其の後任が後を受け継ぐんじゃないんですか?普通」
「それが、賄賂を受け取ったのが、指揮官だけじゃなくて、其の部署の将校全員なんですよ」
えー。何其の腐った話。どこの軍隊だよ。
「して、其の部署とは?」
「王都守護大隊憲兵隊です」
おぉい。憲兵隊。しっかりせい。なんで憲兵が軍規乱してんだよ。お前たちは取り締まる方だろうが。
「其れはまた、あまりよろしくない話ですね」
「そうなんですよ。どうやら高級将校たちが、部隊内の不条理を隠すために、賄賂を渡したとか」
よく聞くよなぁ、そういう話。実際、地球でも結構見たし。どこの軍隊でもそういうことあるんだな。
「とは言いましても、俺じゃダメなんじゃないですかね?経歴も何もない人に憲兵隊長任せちゃって。たとえなったとしても、周りからの反対が結構あるんじゃないんですか?」
普通ならそうあるべきだ。いきなり任官歴も何もない、どこの馬の骨かしらんやつを憲兵隊長にしようなんて、反対が殺到するだろう。
「そこをなんとかするのが、我々ホープマン家ですよ」
「といいますと?」
「簡単な話ですよ。噂を流せばいいんですよ」
「噂、ですか?」
「えぇ。書類とかは、軍部長官である我がお父様がなんとかしますでしょうから、みんなを黙らせる噂を広げればいいんですよ」
え?オースって、軍部長官なの?
「ちょっと待ってください。オース様は軍部長官でいらっしゃるのですか?」
「はい。我が国では、軍部長官は軍団長の経歴、もしくはそれに準ずる経歴を持っていた退役軍人に軍部長官を任せていましてね」
「オース様は、大隊長なのでは?それに中佐なのでしょう?」
確か、オースは大隊長の中佐だったはず。そんな階級では軍団長には準じないはずだ。
「それが、我が軍はちょっと変わってましてね。まず、お父様が元いた部隊はご存知ですよね?」
「確か、王都守護大隊、ですよね?しかも大隊長」
「えぇ、其の通りです。しかし、それを聞いて、少し疑問を感じませんでした?」
「首都の守護部隊にしては規模が小さいとは思いましたけど」
「あれ、実は名ばかりの大隊なんですよ」
「…どう言うことですか?」
「昔、一度戦争で王都が陥落の危機に晒されたことがありましてね、敵軍一個師団に対し、王都には守護大隊のみが残されていました」
「なんでまたそんな少数だけ」
「王都を陥落されそうになるまで、戦争がうまく進まなかったんですよ」
「ほう」
「それで、王都は篭城戦をすることになりましたが、いくら防衛が有利な篭城戦とはいえ、戦力差があまりにも大きいので、結局、敵軍の王都侵入を許してしまいました」
それはそうだ。一個師団と一個大隊は差が大きすぎる。大隊は大きくても千人規模でとどまるが、師団は最低でも三千人、大きくは一万人規模になる。これは現代戦を基準にした場合だ。。
「しかし、其の戦力差にも屈せず、王都を守り抜いたのが大隊で、相手も切羽詰まっていたわけですから、講和条約を結ぶことになったんですよ。まぁ、その後に再戦して、元の領地と+αをうばいとりますが。このような理由で王都の守護は、大隊がするんですよ」
「なるほど」
「大隊とは言っても、軍団規模ですけどね。あと、なぜそんな大隊長が中佐なのか、といいますと。王都守護大隊は他の軍とは異なる階級体系があるんですよ」
それは随分と非効率的だなと思ったが、控えておこう。
「簡単に言ってしまえば、准将から大将は存在せず、進級も非常に遅いんですね。これはまぁ、形だけでも大隊にしようと言う頑張りですね。あと、王都守護大隊の大隊長のための階級が存在しましてね、先任中佐って言うんですよ。」
先任中佐。そういえば、オースも先任中佐って言ってたな。
「ついでに言っておけば、王都守護大隊に所属すると、他の部隊に移管することはないんですよ。それこそ転勤もないし、異動もないです。犯罪を犯しても、大隊内で処分されます」
いやぁ、すげぇ非効率的だな。結構面倒じゃない?そう言うの。
誤字脱字、間違い等ございましたら、教えてくだされば幸いです。