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入学⑩

「ねぇ、ねぇ、」


 立川が倉木と話をしていると、立川の背中を人差し指でつっつきながら、少女の声が聞こえてくる。

 どこか甘えてくるような声。聞き覚えがある。振り返るまでもない。ここのところ毎日聞いている声だ。

 立川が高校に入学する前に知り合った、空から降ってきた少女の声だ。

 あれ以来、少女からの願いにより、幼なじみということになっている。

 名前は、織川 セラ。アッシュブロンドの髪、子猫のような青い目、真珠のように白い肌、ワンピースの白いドレス。身長は低く可愛い。

 倉木と重要な話をしているにもかかわらず、邪魔されて、ムッとする立川。ほっとけ、と思い、無視する。

 が、織川は、そんな立川の行動に抵抗する。


「ねぇ、ねぇってばぁ~、どうしちゃったのぉ~。

 早くこっちに振り向いてよぉ~。

 ねぇってばぁ~」


 はぁ~、めんどくさい奴め、と思う立川。こんなタイミングで来る織川が悪い。無視、無視。

 今は織川よりも大事なことがある。倉木から高校生活、これからの人生に必要なスキルを身に着けるためのサークルの身の振り方について相談する必要があるのだ。

 それを早くさっして、早くどっかに行って欲しい。付き合いの短い幼なじみであってもわかるだろう。むしろ、幼なじみでなくたって、場の空気を読めばわかるはず。

 だが、織川は『大好きな』立川にに無視をされたことに腹をたてて、なんとか振り向かせようと、行動がエスカレートしていく。


「ねぇ、ねぇ、ねぇ、夕君

 早くこっちに振り向かないと、つねっちゃうよ!」

「――うっ……、」


『つねっちゃう』という単語に反応する立川。夕君とは立川の下の名前になる。

 織川の『能力』については少しは知っている。

 軽く教えてもらったが、普通じゃない。

 というより、そもそも、織川は自分自身で『人間ではない』と言っている。『天使』だと言うのだ。

 立川は天使を絵とかで見たことがあっても、実際に見たことなんてない。

 だから、真偽のほどは定かではない。

 が、人間離れした力を持っているのはわかる。

 織川の話によれば、『天界での事情によって人間界に落とされてしまって、再び天界の住人になるためにはバベルの塔の頂上にいかなければいけない』ということだった。

『天界での事情』について確認しようとしたが、言い淀み、話をするのを織川は嫌がった。

 表情、声音からすると、あまりいい話ではなさそうだったから、詳しく訊くのをやめた。おそらく『人間界に落とされた』という響きから、天界で犯罪か悪いことをしたのだろうと思った。

 けれども、立川にとって、織川の素行なんてどうでもよかった。

 自分の目の前で使う織川の魔法はとてもすごかった。

 だから、自分自身の魔法力向上のために織川に魔法を教えて欲しいと願い出た。

 すると、織川は立川に取引を求めてきた。いわば『契約』。内容は、『立川のそばにずっといさせること』。幼なじみになると言い出したのだった。

 別になんともない申し出。立川はすぐに快諾した。幼なじみになる。なんて話、ただの友達になるって話だ。簡単なことだ。『契約』なんて言い出すから、悪魔の契約みたいに魂をよこせ、なんて話じゃない。と、思ったが、実際に織川がずっとそばにいるようになってから、本当にうざかった。ひっきりなしに立川へくっついてくる。顔が本当にかわいいからいいものの……。


「あっ、九頭龍帝。もしよかったら、俺の話は一息つくとして、そちらの女の子の相手をしたらどうかな?」


 どうやら、倉木は織川の行動を見かねて、立川にどうにかするように促す。

 そりゃそうだろう、倉木にとっても大事な話をしているにもかかわらず、恋人同士がいちゃつくような行動をされたら気が散る。


「わ、わかりました」


 立川はそう言い、織川のほうを向いた。


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