入学⑪
「そちらの女の子は、彼女?」
立川に向かって真顔で言う倉木。
確かに、織川のなれなれしい立川への態度は誤解を生む。
織川は倉木からの立川への振りに、両手をほおに手をあてうれしそうにもじもじしている。チラチラと視線を送ってくるのがうざい。
(いったい、俺のどこを気にいってくれるんだか……、)
やれやれ、と思いながら立川は、
「違います」
と言う。
それに対して、織川は立川の背中を軽くつねってきて、
「じゃあ、いったいどんな関係なのよ?」
「ただの幼なじみ。そういう約束だっただろ?」
「約束ぅ?」
「そう、約束」
「そんな約束したっけ?」
「した!」
「……、……、ご、ごほん。
この話はあとで二人っきりのときにしましょう」
倉木も聞いている場所なので、約束の内容を打ち切ろうとする織川。
そう、立川と織川がかわした約束、契約は、とても重要なことなのだ。
だから、二人きり以外のときにするようなものではない。
「では、話を変えましょう。
放課後、なぜあんな女と仲良く話をしていたぁ~のぉ~?」
「――ん?」
「あの『私のギルドに入らない?』とかって言ってきた女よ!」
「あぁー、」
「『あぁー、』って、やっぱり、私以外の女と仲良くしてぇ~」
ぷくぅ~、と頬を膨らませながら言う織川。
なんだかかわいく怒っているつもりなのだろう。
「んっ? そんな仲よさそうにみえたか?」
「み・え・た」
「俺にはそんな状況になっているとは思わなかったけれどもなぁー」
「夕君はあの女に鼻の下をのばしていた」
「のばしてない」
「そして、あの女も夕君に鼻の下をのばしてた」
「そんなことはないと思うぞ」
「でも、でも、私のほうが、ずぅ~と、ずぅ~と、夕君にメロメロだもん」
「どうしてそこに結びつく?」
「ちゃんとアピールしておかなきゃ、」
えへへ、と照れ臭そうに言う織川。
まあ、普通の男だったら、こんな織川のしぐさにメロメロになって、骨抜きにされてしまうのだろう。
だが、織川は『天使』だ。裏付けはないが、本人は『天使』だと言っている。それに、人間離れした魔法力から、『天使』でなくても人間じゃなさそうな予感はする。
「う~ん、やっぱり、二人はただならない関係なんだね。
けど、空見さんが九頭龍帝を欲しがっているって本当だったんだ!」
ようやく立川と織川の話が落ち着きそうなところで、倉木が織川に勘違いさせるような表現をして爆弾を投下した。




