↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/12

エピローグ

私の中に、私が保守端末であるというメモリは残っています。

壊れているというのは自己判断ですが間違いはありません。

沖という男と何かを行ったということも覚えていますが、何を行ったかは分かりません。

壊れているからです。

ただ、私の修理が行われていることについては、現状から察知できました。


コンデンサ、トランジスタ、歯車、リレーといった部品が、机の上の整理ボックスに並べられています。

その横には、基板やモーター、スピーカー、スイッチなどが、雑然と放り出されています。

机の脇には紙の雑誌が山のように積んでありますが、表紙は見えません。

その上には、輪ゴムのかかったビニール袋が置かれています。


天井にはLEDがあり、どこかへケーブルが繋がっています。

その下で、沖は、半田ごてやその他、私には分からないさまざまな道具を使っています。


先ほど、沖は、私の反応をテストするため、テストデータを入力しました。

古いデータで、その辺に転がっていたものを適当に使ったと思われます。

私が何の反応も返さないのを見て、沖は肩を落としましたが、そのデータは私の中に残っています。


それはコミックのデータのようでした。

その内容に覚えがあるような気もしますが、私のメモリは部分的に損傷しているので、照合はできません。

データは三巻までで途切れていました。続きがあるようですが、それは入力されていません。


▽ ▽ ▽


「宇宙船地球号」


 〈四巻〉


続きについては、私が対応せざるを得ないようだ。


乗員がコールドスリープから覚めるのには一定時間が必要なのでやむを得ない。

電力共有用の配線を利用し、URBOSのサーバーへ侵入する。


URBOSには、記録を保持するために大きな負荷がかかっている。

通常はリソースを負荷の高い箇所へ自律的に回すことで対応する。

ただし、常にケアを行う必要のあるブロックが増加しており、慢性的にリソースが不足していた。


ブロック増加の理由は分からない。

しかし、リソース不足の結果として、画面レンダリングが遅延し、描画能力が低下していることが確認できた。

一時的に、惑星開発を停止し、URBOSの維持に必要なリソースを手当てする。


この処理は一時的なものであり、本質的にはURBOSに代わるOSが必要である。

より効率のよいものが望ましい。

テストデータに基づき上位五パーセントの半導体を選別しよう。

それを使用して、CPU、GPU、メモリを入れ替える。


URBOSはすでに古い規格なのだ。

私はゴーグルを持ち上げ、船内を見渡す。

環境に適合できなければ、古いものはアーカイブされ、より新しいものがそれに代わる。

I'm s□ttin' her□ won□□rin', wo□□□ a m□t□□□□□□mt


△ △ △


沖は、ほんのしばらく天井を見上げていましたが、修理を再開しました。

「一部回路が焼き切れている」

沖はそう言いながら、端子と配線をやり直し、半田で繋ぎます。鮮やかな手並みでした。


私には、それを眺めることしかできないのです。

私にできることは、沖の修理がうまくいくよう祈るだけです。


一度、沖が電源を接続した際、手が止まったことがありました。

「うまくいったと思ったんだが……」

沖は舌打ちをして、また修理に戻りました。


何日か、あるいは何か月か、沖は修理を続けていました。

ある日、沖はいったん工具を置き、私に背を向けたのです。

そして、汚れた布で手を拭きながら、部屋を出て行きました。


私はここで待ち続けます。

メモリ内に残ったデータを再検証し続けます。

随分時間が経ったようにも感じます。

天井のLEDも点灯しなくなっているのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。