1章-1節 神より最弱を託される①
1章 氷雪の旅路、遥かな夢
龍よ、龍よ、我が身に宿れ
我こそが星、我こそが空なれば
――村に伝わる詩
◇
穴の開いた天井から、日の光と共に雪が舞い落ちる。梁から垂れ下がった氷柱が雫を落として煌めいている。雪の粒が舞う、氷結した広間。かつては整然と並んでいた長椅子も、雪に埋もれている。
在りし日の面影を残すのは、中央奥に設えられた祭壇。なんの奇跡か、燭台が一つ、倒れずに残っていた。壁に掲げられた十字さえ、凍り付いて久しいというのに。
寒々しく廃れた教会だった。
ここは『神』とも称される大いなる存在を祀る神聖な場。ヒト族の多くが信奉するというハオライル教に由来する教会だ。もっとも、今では俺以外の誰もおらず、雪と氷が神の家を支配している。
――十五歳の誕生日、人は皆、大いなる存在より〈ジョブ〉と【スキル】という強大な力を託される。それを人々は神託と呼び、鍛え、遣い、そして大いなる存在へ還し、死んでいく。
ここにやって来たのは、その神託を受けるため。俺が特別信心深いわけではない。
祭壇の前で片膝をつき、頭を下げて両の手を額の前で組む。いつか習った、祈りの作法。
蝋燭のない燭台に小さな灯。それは徐々に俺の中へと流れ込み、やがて消えた。
同時に知覚する。
この日、小さな村の誰もいない寂れた教会にて、俺は〈氷雪士〉のジョブと【魔眼】スキルを託された。
『大いなる存在は気まぐれだ』
いつか読んだ本の内で、誰かがそう評したのを覚えている。
託すジョブもスキルも、その人間に合ったものではない。適性を考慮などしない。
神託前に剣士としての訓練を積んだ者が、魔導士系のジョブやスキルを託されることなどザラにある。
更に言えば、託される力は平等ではない。他人と比べ、優劣がはっきりと出てしまう。
その点で言えば【魔眼】は優れたスキルであり、有用性が高い。
先天的特質に依る所謂『魔眼持ち』は、良くも悪くもその魔眼の在り方――付随する魔導や機能に生き方を左右される。
が、俺が得たのはスキルとしての【魔眼】である。それは、千年以上も前の英雄が所持していたとされる伝説的な力だ。
一方で、俺のジョブは〈氷雪士〉。
魔導士系〈最弱〉のジョブとされていた。
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