壱話:侵略
人類は多くの過ちを犯した。
自然破壊、大気汚染、オゾン破壊。
数え切れないほどの過ちを犯した。
もう待てない。
今から人類破壊計画を実行する。
地球のあらゆる生物を破壊する。
1 侵略
日本の大都市、東京に後々世界を救う人物がいた。真新しいシャツを着込み、どこにでもいる男だった。名前は近衛 佑。会社には勤めておらず、いわゆるニートだった。希望のかけらもなく大都市をさまよっていた。
佑は成人式を迎えたばかりで新築も建てた。母親の幾子はとても優しくいつも佑の事を甘やかしていた。そのためニートになったと考えられる。
幾子は有名な教授だった。心理学の教授であり、「子供は自由にさせる」という間違った方針をとっている。そんな間違った方針でも幾子の考え方は全国の小中学生の母親に響いた。今の世の中は間違った方向に進んでいると言えるだろう。
佑の父親、鉄摩は佑が生まれる前に他界した。佑はそのため父親に無関心だった。鉄摩の写真を見てもピンと来ないのだ。
「佑、ご飯よ」
毎日の光景だった。当たり前のように朝食が前に並び、当たり前のように歯を磨く。そして当たり前のように東京をさまよう。
「ちょっと出かけてくるわね。後は頼んだわよ」
佑が出て行く幾子と朝食を目の前に、ぼーっとしていると、目の前に男が座っていた。
「お前……」
聞くとほぼ同時に相手が口を開く。
「まだ死にたくないだろ?だったら協力しろ。死にたきゃ別だがな」
佑はその場に凍り付いた。青年くらいの歳だが、少なくとも佑よりは上だ。真っ黒なスーツにオールバックな髪型。目元がくっきりしている。
「誰……ですか?」
「ん?そうだな、使者とでも言っておこうか。名前はサタン、だ」
わけの分からない回答に混乱した。使者とか意味分からないし……
「あなたはよく分かりましたが、僕に何の用ですか?」
「俺はこの世界を助けに来た。まもなく侵略が始まる。お前は俺の指示に従って動くんだ」
「侵略?お母さんはどうなるの?」
サタンと名乗る者は大きなため息をつき、下にうつむいた。
「諦めろ。こればかりは仕方が無いんだ」
一瞬夢かと思ったが、あまりにも鮮明なので現実だと知った。佑も下にうつむき、分かった、と呟いた。
「それでいい」
そうサタンが言ったとたん、家全体が大きく揺れた。家の中の小物が床に落ちる。佑とサタンは目配せをし、すぐに出かける準備をした。
「俺は消える。支度ができたら国立公園で落ち合おう。緊急時は俺の事を念じてくれ。すぐに駆けつける。一つだけ言っておこう。お前は選ばれたんだ」
選ばれた覚えもない佑にとってサタンの話は意味が分からなかった。しかし状況がまずいことだけは佑にも分かった。
数分後、準備ができた。小型のリュックに携帯食料&ドリンクを入れた。そして幾子がくれた”どうしても危ないときにつかいなさい”と言われた小型の箱を入れた。まだ中身は確認していなかった。
家を出ると強風が体を襲った。かがんでいないとすぐに飛ばされそうな感じだった。上の雲がひどく濁っている。どうやら本当に”侵略”しにきたらしい。
雲が密集している場所を見てみると国会議事堂の方だった。その場所だけ雲がぽっかりと空いている。空の色は決して蒼じゃなかった。
佑は公園につき、真っ先にドーム状の遊具の中に入った。幼いときにここによく遊びに来ていて、雨宿りとして使ったことがあった。中に入り、腰を掛けリュックをおろした。
「サタン。どこにいるんだ?」
「ここだ」
一瞬で答えが返ってきた。驚きながらも辺りをゆっくり見回した。すると目の前にかがんだサタンが現れた。
「見ての通り、国会議事堂から攻めてくる。艦隊が地上に降りたら終わりだ。その前に……」
「まてよ。艦隊って何だよ」
「艦隊とは、今攻めてくる”アースマン”の乗り物だ。この世界で言えばレーザー砲を搭載している。並みの戦力じゃ勝てない」
「勝つ方法は?」
ごくりと生唾をのみサタンの返答を待った。
「エンシェント・クライシスを動かすんだ」
サタンの声はドーム遊具に吸い取られていった。




