暮空の間隙
……そもそも、『叶屋』とはなんなのか。
「叶堂」と「叶屋」のつながりはなんなのか。
そして…僕のクラスメイトであり、不登校児であり、叶堂の店主である彼女。
『叶 詩月』とは何者なのか。
わからないこと、聞きたいことは多々あるだろうと思う。
僕自身、わからない事だらけなのではっきりとしたことはいえないが……唯一つ、確かにいえることがある。
それは三つ目の疑問の答えになりうるものであり、僕が彼女について知っているほぼ唯一のことだ。
――――そう、それは……
「叶 詩月は『叶屋』である、というコト」
そして、もう一つだけ。
「『叶屋』は気まぐれに現れては人の望みを叶え、代償を要求して姿を消す
人ならざる存在であるということ」
A=B B=C
であるとき、A=Cであるように。
彼女が何者か……否、『何』か、わかっただろう。
そうすると、今度出てくるのは「僕」のことだろう。
彼女は違って、なんてことはない。
僕はそんなことを知っている、ちょっとだけ特殊な…そこを除けばごく普通の高校生だ。
「よかったの?
あの人に『代金』の説明ちゃんとしなくて」
「ふふ、いいのよ。
私はちゃんと、『対価はいただく』って言ったもの。
ちゃんと聞かなかったほうがいけないの……もう返品は受け付けないしね」
くすくすと笑う詩月はなんと言おうか、悪役な顔をしていた。
しかも世界征服とか考えているような夢のあるものじゃなくて(それを夢といっていいのかは疑問だけど)、貧乏人に高利子で金を貸す金貸しとか…時代劇でいるような代官とつるんで得してるような商人の顔。
―――妖怪のくせに、なんて人間くさい。
「妖怪じゃないわよ。
私は『叶屋』だって言ってんでしょ」
「人から見て得体の知れない生命体はみんな妖怪だって」
……っていうか、さっき僕の心読んだよね。
「……私は、そういう生き方しか知らないのよ。
『叶屋』としての使命以外は何も、ね」
窓から入るのは涼しい風とまだ点いたばかりの街灯の光だけ。
その中で見る詩月はどこか悲しんでいるように見えてならなかった。
「詩月……」
「だからこそ、『対価』はきっちり貰うわよ。
今日の『お客』からも…
―――貴方から、もね……遥」
「……忘れるわけ、ないでしょ?」
僕と詩月の視線が交差し、どちらからともなくはずされる。
―――空の端にかかっているのは美しい満月だった。
そう、まるで…
僕たちが出会った、あの日のように。
言うことは一つ。
悪徳商法にはお気をつけください。
そしてちょっとだけ明かしました。
まだまだ謎だらけですけどね!




