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なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
6章 最悪と最善の狭間の結末

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閑話 源乃詩織 その2

 幼少期は幼稚園などには通わずすごした。そして小学校に上がった所で自分の家系がそして私自身が特殊なのを思い知った、だからといって何が変わるわけでもないのだけどちょっとした疎外感みたいなのは感じていたかもしれない。


 小学校は特に問題なく過ごせたと思う、物覚えの良い頭のお陰で成績は良かったし、修練のお陰で体育も難なくこなせたむしろ手加減しないと大変なのを知った、事情を知る先生が対処してくれたけど、世界レベルを超えるような成績をうっかり出しちゃった時は私以上に周りが騒がしかったのを覚えている。


 小学校に上がってからは修練の頻度が減り初めて子供らしいあれこれをし始めたし、今まであまり関わってこなかった明海の世話なんかもするようになった。それと長期休暇にはお祖父ちゃんの実家である里に行くようになって、同年代の刀矢くんと茜さんと出会い、共に研鑽する日々を送った、二人も鬼の血を持つモノとして私と同じように修練をしていたという事ですぐに仲良くなった。


 眼の前に流れていくその頃の風景を懐かしみながら、そろそろこの走馬灯も終わりを迎えるのかなと思った所で一気に風景が変わり女の子になった怜ちゃんを見て爆笑した場面へになっている、あれからまだ1年と少ししか経っていないのになんだかすごく懐かしいな。


 怜ちゃんが学院へ入って来て、お婆ちゃんに頼まれた咲夜ちゃんと怜ちゃんに姉妹の契を無理やりやらせたりなんて事もあったよね。望さんからも怜ちゃん女神化計画とか聞かされて手伝わされもした。学院に入った頃は何も出来ない弱々しい女の子だった怜ちゃんも夏の修練で結界術を覚えたり成長していくのは見ていて楽しかったな。


 酒吞童子が怜ちゃんの力に負けて女性になったのは困惑したし、私が立つべき場所をとられたとも思った。だけど正月に里で紅姫に不確かな未来を見せられて何が何でも守って見せると思ったんだよ、そしてちゃんと守れることが出来た……。


 だから満足、満足なんだよ、でもねもっと一緒にいたかったよ。



 ああ、なんだか温かいな。


 走馬灯の様な情景は消え現実に戻った、いくら鬼の血を持つといっても既に命が尽きていてもおかしくないのにまだ生きている。目だけ動かし周りを確認しようとしても目が霞んでよくわからない。血は流れ続けているのに思ったより寒さは感じないどころか体を何か不思議な力で包まれているようで温かい、これは私に抱きついている怜ちゃんの体温なのかな。


 なんて考えていると死へ向かっているはずの意識が急速にはっきりし始めた、何かわからない液体が喉元を過ぎ、気がつくと私は人生で初めてのキスをしていた、目の前の怜ちゃんに私のファーストキスは奪われていた。


 体が熱い燃えるようだ眼の前が白く染まり何が起きているのかわからない、だけど失っていた血と命が戻ってくるのがわかる。心臓が痛いほど鳴り響いているのがわかる、そして私は自らの中に神気を感じた。


 私はこの神気を知っている、この神気は比売神の系譜が持つ神気だ、お婆ちゃんに光さん、望さんに怜ちゃんの持ちそれだ、それが今まで全く比売神の血を継がなかった私の中にある。これは怜ちゃんの神気なのだと思う先程飲まされた液体……、それは怜ちゃんの血なのかもしれない。


 酒吞童子も怜ちゃんの血を飲み神気を手に入れたと言っていた、きっと私にも同じ事が起きたのだと思う、だけどただ血を取り入れただけではこうならないことは知っている、だから血以外にも何かが混ざっていたのだろうね。


 気がつけば体は元通りになっているように感じる、だけど指1本どころか瞼すら動かすことが出来ない、きっと急に神気を取り入れた事により魂と体のズレが発生しているのだろうと本能的に察せられた。


 しばらくすると魂と体の齟齬が無くなったのがわかった、耳から聞こえてくる会話で大体の状況はわかった。目を開けると眼の前には怜ちゃんの顔があり私に覆いかぶさろうとしてきた、その動きをそっと止めて立ち上がり向かってきた女郎蜘蛛に自分でも驚くくらいに自然な動きで蹴りを放っていた。


「怜ちゃんおはよう」


「織ねぇ目を覚ましたんだね、よかった」


 そう言って私に抱きついてくる怜ちゃんを抱き返す、守るつもりが逆に助けられちゃったみたい。


「終わったのかな?」


「そのようだね、この山周辺には敵は居ないようだよ」


 今だけかもしれないけど、神気を取り入れ鬼力と混ざりあったせいか感覚がすごく鋭くなっていてなんとなくわかるようになっていた。


「えっと織ねぇわかるの? そういうのって得意じゃなかったよね」


「なんだろうね、多分怜ちゃんとしたキスの影響かな」


「な、ななな何言ってるの、あれはキスじゃなくて、えっとなんだ人工呼吸みたいなものだよ、ノーカンだからね!」


 そんな全力で否定しなくてもいいのにね、だけどね怜ちゃんが私のファーストキスの相手なのは本当だからね。


 そのうち責任取ってもらうから覚悟しておいてね怜ちゃん。

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