閑話 ??? その3の1
「ねえねえ葛の葉のおばちゃん」
「久しぶりに訪ねてきたと思えばこの鬼っ娘は、人のことをおばちゃん呼ばわりするんじゃなさね」
「葛の葉様申し訳ありません、姫は一度決めたら頑固なので」
「はぁ、良いよ良いよ茨木ちゃんが謝ることじゃないさね」
「むぅ、おばちゃんはボクに厳しい」
「あんたはもう少し礼儀ってものをだね───」
ここは大阪のとある場所にある神社だ、近くに来たので久しぶりに顔を出してみたらこの通りだ。ボクの目の前でガミガミと説教してくるこの人は葛の葉狐というアヤカシだ。あの有名な安倍晴明の母親だと言われていたみたい、本当かどうかは聞いていないけどどうでもいいよね。見た目は30代くらいの白髪の女性で巫女服姿が似合っている。
まだボクがちっちゃかった頃たまに預けられていたのがここだ、いつもブツブツと文句を言いながらも優しく世話してくれるんだけどね。
「もう説教は良いから、最近何かあったりしない? ここに来る前に色々変なのに絡まれたり、絡みに行ったりしてたんだけど」
葛の葉おばちゃんはずずっとお茶をすすると「ふぅ」とため息を付いた。
「何かと言われてもね、確かに最近封印が解けたという話はよく聞くさね、この辺りは阿部家が管理しているからなにもないけど、近くの土地では蜘蛛が大繁殖しているくらいさね」
「蜘蛛? あのちっちゃいやつ?」
「そう、その蜘蛛だよ、と言っても何かおかしいみたいさね、なんでも数が尋常じゃ無いみたいだね」
「その程度じゃあボクの出番はないかな」
「出番も何もあんたが関わる必要はないよ、私らも話として聞いただけで係わるつもりはないさね」
ちっちゃい蜘蛛じゃねえ、まあゆっくり出来たしお暇して旅を続けようかな。
「姫、葛の葉様、何者かが訪ねてきたようですよ」
「そのようですね、あまり付き合いのあるモノではないですが出迎えでもしようさね」
探知が得意ではないボクにはわからない、立ち上がり社務所から出えていく葛の葉おばちゃんに付いて行く、そのボクに付き従うように茨木姉さんが付き従う。
鳥居の前には女の人がひとり立っていた、黒と黄色が交互に並ぶ髪をショートにしていて、パンク少女とでも言えば良いのかそういう服装をしていてあまり神社にふさわしくなさい出で立ちだ。
「火女蜘蛛の椿、敵対とまではいかないがある程度距離をとっていたこちらに何のようさね」
「お願いだ葛の葉さん力を貸してほしい」
そう言うといきなり土下座をしだした。
「はぁ、話くらいは聞いてあげるよ、そんな所でそんな事されても邪魔だからとりあえず立ってついてきなさいな」
「あ、ああ、すまない」
火女蜘蛛の椿と呼ばれた女は立ち上がり招かれたことで通れるようになった結界の中に入り込む、一度ボクたちに視線を向け葛の葉おばちゃんに付いて行く。見た感じ力を隠しているのか強いようには見えない、葛の葉おばちゃんでも不意をつかれでれなければどうとでもなる程度にしか感じられないほど隠匿に優れているのだろう。
「姫は葛の葉様に付いていてください、外は私が処理しておきます」
「ん~わかっった、貴重な情報源だし殺さないようにね」
「畏まりました、それでは」
それ言うと茨木姉さんの気配が消えた。ボクは葛の葉おばちゃんと火女蜘蛛の後を折って社務所へ入る。何知らぬ顔で葛の葉おばちゃんの斜め後ろに座る、誰だコイツみたいな視線を感じたのでニコリと微笑んでおく。
「それで力を貸してほしいという事だけどどういうことさね」
「は、はい、葛の葉さんは最近この付近で蜘蛛の大量発生の話は聞かれていますか?」
「ああ、それなら聞いているよ、この付近のは阿部家が対処済みだけどね、少し離れた場所は大変みたいさね」
「それなのですが、原因は土蜘蛛が復活したからなのです」
「ほう、土蜘蛛が出てきたか、それで結局何が言いたいんだい? それこそ私らには関係ない話さね」
「はい、それなのですが……」
ボクはさっと立ち上がると火女蜘蛛の椿を社務所の障子ごと外へ蹴り飛ばした。
「あんたね、もうちょっとやりようがあるさね、誰が障子を直すと思ってるのさね」
「分かったよ、障子は後でボクが直すから、それであれどうしたら良い?」
「ふん、殺さずに捕まえておくれ、あんなのでも知り合いさね」
「わかった」
ボクは外へ飛び出し火女蜘蛛を見る、目は赤く輝き口からはよだれがとめどなく流れている様は正気ではないのだろう。そして背中からは8本の蜘蛛の脚が飛び出ている。
さて殺さないようにって事は素手のほうが良いだろうね、あの正気でない感じはどうしたら良いかな、とりあえず殴ってみるか。飛び上が蜘蛛脚でつかもうとしてくるのを避けながら腹を殴りくの字に曲がった所で顎に一撃を入れると真上に吹っ飛び落ちてきた。
……弱! え? え?
「あー、なんか縛るものないかな?」
「あ、うん、そうさね」
葛の葉おばちゃんが手をパンパンと打ち鳴らすとどこからともなく巫女服を来た白髪の女性が鎖を持って現れた、それを受け取り取り合えうぐるぐる巻にしておく。
「あんたまた強くなったのね、昔は可愛げがあったのさね」
「今も十分可愛いと思うけどなー」
「はぁ、そういう意味じゃないんだけどねまあ良いさね」
「姫おまたせしました」
そんな話をしていると茨木姉さんが一人の気絶している男を引きずってきた、とりあえずその男も鎖でぐるぐる巻きにしておく。




