閑話 斉穏寺楓
「なんでこんな化け物がここのいるんですか!」
つい私の口から出てしまった言葉だ。
入学式が終わりぞろぞろと中等部一年生が教室へ向かっている、私もその中のひとりだった。だけどソレを見た瞬間私のメガネがひび割れを起こしていた。とっさにグラウンド近くにあった竹箒を拾ってソレと相対していた。
裸眼で見るソレは初めて見るタイプの鬼だった、人の姿に变化しているが私にはその存在がわかる、ソレは鬼と人とそして神が混ざりあったようにも見える。そこで私は目の前の鬼の正体に気づくことが出来た私と桜ちゃんの監視対象の一人の酒天童子という鬼だという事に。
私のメガネがひび割れして対峙を始めた時点で桜ちゃんには予備のメガネを取りに行ってもらっている、私のこの目には遮霊メガネが必要なのだけどまたこの鬼を見たら割れてしまう気がする。
私はひび割れて使い物にならなくなったメガネをそっと足元に下ろす、鬼は不敵な笑みを浮かべ私を見てくる、しばらくお互いに動くがなく私自身もどうしたら良いかわからず動けずにいると空から女の子……新たな化け物が空から降ってきた。
知らず知らずに私は後ずさっていた、この新たに現れた化け物から逃げたいという思い出いっぱいになっていた。ただでさえ酒天童子の化け物じみた気配を見てしまった上に、新しく現れた幼い少女の姿をした化け物を見て私はとっさに弱々しく叫んでいた。
「な、何なのよこの学校は、なんでこんな化け物が普通に歩いているのよ!」
「化け物ねー」
「それにあなたも何なのよ、なんでそんな、そんな───」
「それ以上はストップだよ、あなたすごく見えすぎてるようね」
そこで幼い少女の姿をした化け物から凄まじい殺気が飛んできた、私は自分でも気づかないうちにジリジリと後退りしていたようだ。そして目の前に二人に気を取られていたせいか私の背後に超弩級の存在が近づいてきているのに気づかなかった。
「織ねぇも朱天も新入生相手に何をやってるの」
そう声が聞こえてきて初めて背後の気配に気が付いた、それと同時に目の前の二人以上の人の形をした何かの存在に体が震える。ゆっくりと震える体に気合いを入れて振り返る……目の前で火花が散った様になり視界が真っ白になった所で私の意識は途絶えた。
目を覚ますとそこは知らない天井だった、この独特の臭いは保健室のようだった。そして心配そうに私を見ている桜ちゃんと目が合った。
「桜ちゃん、私どうしたの?」
桜ちゃんはそっと後ろを確認した、その目線を追うと白衣を着た女性が目に入った。あまり人に聞かせたくない話なのだろうか? そういえばいつの間にか服が替わっているような。
「えっと、その、ね、楓は気絶したんよ、そんでなその言いにくいんやけど漏らしてもうてん」
耳元に顔を近づけてそう言ってくる桜ちゃん、気絶して漏らした……? あっだから服が替わって、理解してしまった途端顔が真っ赤になってしまったのがわかった。人前で気絶した上にお漏らししてしまったーーー!?
「着替え持ってきたから置いとくね、先生と一緒に席外しとくわ」
私は両手で真っ赤になっている顔を隠しながら小さな声で「ありがとう」と言うことしか出来なかった。それから着替えを済ませなんとか気が落ち着いた所でメガネが治っている所かツルの部分が替わっている事に気がついた。このメガネは予備のでも無いようだしどうしたんだろう? 前のよりなんか良いものな気がするけど。
着替えも済んだので着ていた物を手に持ち保健室から出ると桜ちゃんと保険の先生がいたので、先生に「ご迷惑おかけしました」と頭を下げてお暇することにした。
「良いのよそれが仕事だからね、まあ気をつけなさいな、着替えたのはこっちで洗っておくから」
そう言って先生は私から着替えを受け取ると保健室に鍵をかけ去っていった。濡れた下着とスカートを桜ちゃんから受け取ると、手を引っ張られて少し歩き情報交換する事になった。
情報をまとめると、メガネは酒呑童子だろうと思われるあの鬼が直して強化してくれたと言う事、小さい女の子は監視対象の姫神怜の親戚で学院長の娘の源乃詩織だという事、それと一瞬しか目に入らなかったけど私が気絶するきっかけとなった人が姫神怜その人だったみたいだ。
正直な所なんで気絶したのかわからなかった、でも背中越しから感じた気配でなんとなく理由はわかってしまう。多分濃度の濃い神気に当てられたのだと思う。そしてこの後私と桜ちゃんは生徒会に呼ばれているようだ。
少し憂鬱になりながら生徒会に向かう、この時の私にはこの後に待ち受ける出会いと幸運、それと私と桜ちゃんに今後起こるであろう数々の苦難と幸福への道が決定づけられる事になるとは想像すらしていなかった。




