神様入れ違いです。
とりあえずクロさんにこっちで過ごすように言われたので、トト君に籠を借りて庭園の花畑に行く。
何もしないのもあれだし・・、花の冠作っておこうかなって。
「あれ・・、お花・・増えてない?」
昨日、まだまだあるとは思ったけど・・、なんか花が増量!!してる。
気のせいではないよね・・・???
と、ガサっと音がしてそちらを見ると、ククが草むらから出てくる。
「クク!」
とっとっと、軽い足取りで私の側へ来るので、しゃがんで頭を撫でる。
「どこかお散歩してたの?」
ゴロゴロと喉を鳴らすので、大変可愛らしい。
私はひとしきり撫でてから、花がすぐ手の届く所に座って、花を摘んで編み出すとククは私の横でごろっと寝転がる。可愛いなぁ・・。
花の冠をいくつか作って籠に入れる。
うん、大分上達して来たぞ・・。
そう思っていると、鈴の音がどこからする。
「・・・・え?鈴?」
ククがパッと顔を上げて、さっと何処かへ行ってしまう。
「クク?!」
思わず追いかけると、水神殿の間へ行く手前で消えてしまった。あれ・・、こっちに来たと思ったのに・・、水神殿の間の方へ歩いて行くと、外の扉から誰かが入って来た。
あれ?入って来れるって事は、神様・・?
入って来た人をよく見ると、真っ赤な長い髪を一つに縛って、長い濃い茶色のローブを着ている。ちょっと少年ぽい顔をしている。
私を見ると、その人はギョッとした顔をして、
「え?なんで人間がここにいるの?!」
「え・・っと?た、助けて頂いて・・、その」
そこまで言うと、その人はああ・・と合点がいったのか頷いて、
「君かぁ〜!クロは?知らない?」
「あ、今日は火の神様の所へ行くって言ってましたけど・・」
「あっちゃ〜〜、行き違いになっちゃったかぁ!」
・・・と、いう事は、この人は火の神様って事かな・・。納得の髪の色・・。
「あの・・すぐ戻ってくるって言ってましたけど・・」
「じゃあ、待ってようかなぁ〜」
その人は人懐っこい笑顔で笑ってくれた。おお、なんか久しぶりに普通の反応だ・・。ちょっと安心してにっこり笑う。
「あ、オレ、ティナ!バトシェバって国の、火の神なんだ」
「たえです。違う世界に行ってた・・と、聞きましたけど、こっちに帰ってきたんですか?」
「そー!ノアルが、オレんとこの土地やベーって言うから!」
「ノアルさん・・、何気に世話焼きなんですね」
私がそう言うと、ティナさんは私を見て、
「ノアルに会ったの?あいつスッゲーだろ!」
そう言って笑うから、思わず頷いてしまった。・・確かにすごかった・・存在感が・・・。やはりノアルさんネタはここでも生かされるらしい。
「たえは、ここに慣れたか?」
「いえ、まだ三日目なので・・・、何が何だか・・といった感じです」
「三日じゃあそうだな〜」
ニコニコ笑うティナさんは、大分話しやすくて・・、ホッとするこの安心感・・。ちょっと出会えて良かった・・と思った。
と、ティナさんの胸のポケットが、じわっと黒い染みのようなものが広がっている。
「ティナさん、胸に何かしまってます?染みみたいなものが」
「あ!忘れてた、やべ!!」
そう言うと、胸から黒いドロっとしたものを掴んで、プールの方へ慌てて走って行き、その黒いものを投げ入れる。瞬間、ジュウウっと音がして、蒸気が一気に上がる。
驚いて、プールの方を見ると、水の中で大きく広がった黒いものは、どんどん体を大きくして、大きな人型のような形になる。
「わわ、ちょ・・ルド!!落ち着け!!」
ティナさんが焦った声になる。
私は、思わずあとずさると、黒い大きな人型のものが、こちらを向くので体が固まる。あの・・どうぞお構いなく・・?人型はそんな私の考えなんて知る由もなく・・手を伸ばして、私を掴もうとする。
な、なんてこったい!!!!




