神様、呼ぶ。
大きな黒い人型の手がドンドン近づいて来る。
「ルド!!ダメだ!!やめろ!!」
ティナさんが叫ぶけど、手が私を掴もうとする。
足がガクガク震えるけど、なんとか避けつつ、頑張ってあとずさる・・。
って、後ろ壁だったーー!!!そう気付いた瞬間、
バキン!!!
と、音がして、驚いて目を瞑ってしまう。
「こっち来んなつったろ」
低い声にそっと目を開けると、クロさんが目の前に立っていた。
「クロさん・・!」
人型の大きな黒い手は、淡く光る大きな壁に阻まれていた。
クロさんは、私をチラッと見てから、前を向くと手を黒い大きな人型に手をかざす。
「静まれ」
一言・・そう言うと、水が物凄い勢いで人型の体を包んで、あっという間に小さくしていってしまう。そうして物凄い勢いで渦巻きつつ球体になって宙に浮くと、黒い色はすっかりなくなり、透明な水の中央に赤い光がチカチカと光る。
「終わったぞ、帰れ」
中央の赤い光は、チカチカと光ったかと思うと、静かに消えていく。
こ、腰が抜けた・・。
へたへたと座ると、クロさんがズンズンとこちらへ歩いてくる。
あ・・、これ・・怒られるやつ・・?
ティナさんが、焦ってクロさんの肩を掴む。
「お、おいクロ・・、たえは悪くないぞ!オレがルドを・・」
クロさんがティナさんを睨む。
「・・・・たえ?」
「え?たえじゃないの??」
ティナさんが不思議そうにクロさんを見る。
ん?な、何??なんなの??私、たえじゃなかったっけ?思わず自分の名前に確信が持てなくなる・・。
クロさんが思いっきりティナさんの顔をガッツと掴む。あ、あれだ!アイアンクロー!!
って、技名を思い出してどうする!!
「なんで、お前が勝手に呼んでるんだよ・・」
「わ、わー!!!ストップ!!ストップです!!クロさん!たえでもなんでも呼んでくれていいんで!!技!技は!!やめて下さい!!」
思わずクロさんの袖口を引っ張る。
ティナさん、人型の動きを止めようとしてくれたし・・、焦ってクロさんを見ると、クロさんはちょっと顔が赤い。
・・・ん?赤い??
「たえ」
「は、はい?」
クロさんが私の名前を呼ぶので返事をすると、ちょっと黙る。
な、なんでしょうか??
ドキドキしながらクロさんを見る。
「・・・何でもねぇ」
「あ、そうですか・・。あの・・ティナさんの顔から手を・・・」
なんならミシミシいってるんですけど・・。
ティナさん、死んじゃうんじゃないの?慌ててクロさんの手を触ると、勢いよくティナさんから手を離した。よ、良かった・・。ホッとしてティナさんを見る。
「ティナさん、大丈夫ですか?あの、止めようとしてくれてありがとうございます」
「いや〜、こっちもごめんな。ルド、穢れがすごすぎて・・」
「いえいえ、とりあえず穢れは綺麗になったようで、良かったです」
そういって笑うと、思いっきり後ろから舌打ちが聞こえる。
こ、恐い・・・。
「あのクロさん、助けて頂いてありがとうございます。早く戻ってきてくれて助かりました・・」
そうだった・・助けてもらったのにお礼をいうのを忘れてた・・。
クロさんにいうと、ようやく気が鎮まったようだ。
良かった・・。
ティナさんはそんな私達のやり取りを見て、笑い出す。
「クロ〜!心配だったんなら、そう言えばいいのに!」
「るせぇ!殺すぞ」
・・うん、爽やかイケメンと、オラオラ系お兄さんのやり取り・・・ちょっと恐いけど、ノアルさんの時よりは緊張感がなくていいな・・。そんな事を考えつつ二人を見る。
・・ん?心配?誰の事・・・?あ、もしかして私?
二人の会話が今頃、頭の中に入ってきて、私は話しているティナさんとクロさんを見る。クロさんは、ちらっと私を見ると、ふいっと目線を逸らしたけど、なんとなく・・心配してたのはわかった。
ボスは、どうも言葉が足りないのかもしれない。
そう思ったら、ちょっと恐い気持ちがまた一つ減った気がした。




