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それからのこと

誤字脱字報告もありがとうございます!気を付けているつもりなのですが、お恥ずかしながら抜けが多くご指摘感謝しております。


最終話です。



死の淵に立たされていた護衛騎士はなんとか一命をとりとめた。

血を失いすぎたらしく、しばらくは意識を失っていたけれど、その日の内に目を覚ましたようだ。彼も彼の仲間やご家族もとても感謝してくれた。助かって、本当に良かったと思う。


捕まった賊の正体や、なぜ聖女様を襲撃したのかなどはまだ分かっていない。

これから尋問を繰り返し、真実を明らかにしていくのだろう。未遂だったとはいえ、王族の前で、王族の婚約者となった聖女様を狙ったのだ。極刑は免れないと思う。


そして、私が騎士を癒す姿を見た夜会の参加者の中には、私こそが聖女ではないかと言いだす者も少なくなかった。


遠い記憶の中。幼い私が家族の他にレイモンド様にだけ打ち明けた私の秘密。

それは私の瞳の色について。

私の瞳は、光の魔力を使うと色がもとの赤から紫に染まる。

さらにその紫の中に星のような無数の金色が飛ぶのだ。


初めてその瞳の変化を見た両親は、とても綺麗だと手放しで褒めてくれた後に言った。

「エリザベスの瞳はとても特別だから、あまり人に見せてはいけないよ」

その頃は私もまだ3歳になるかならないかの頃で、そんなものかと思ったくらいだったが、今ならわかる。

特別なものは人の目を引く。人の目を引くということは、良からぬ者の目にも止まりやすいということ。私の瞳を邪魔に感じる者や、畏怖や嫌悪、はたまた妬みや憧れ、手に入れたいという欲求を抱く者が現れた時、危険にさらされる可能性もあるのだ。今回聖女様が襲われたように。


とはいえ、私は聖女ではない。どんなに周りがそうではないかと声を上げても、真実私には聖女の証がないのだから。



しかし、私の行動は聖女様のお立場をなくすようなものだった。

あの時思った通り、聖女様はまだお力を覚醒されていないらしく、そんな中で私が死から人を救い上げるような力を見せてしまったのだ。肩身の狭い思いをすることになった聖女様が私に敵意を抱くのは当然かもしれない。


「ジーク様の気を引きたくて、エリザベス様が私に賊を差し向けたに違いないわ!」


取り乱し怒鳴り散らして、さすがに見かねた陛下の命で、騎士たちに連れていかれてしまった。一時的に離宮に幽閉されるらしい。申し訳ないとは思うけれど、人命がかかっていたのだ。あの時はああする他なかったと思う。



心配なのはジークハルト王太子殿下のこと。

あの時殿下は呆然と立ち尽くし私の瞳をじっと見ていた。

あのような形で捨て置かれたとはいえ、今更10年婚約関係だった私の秘密を知って、ましてやそれが大切な聖女様のお立場を危うくするようなもので、どう思われただろうか。しばらくそうしていた殿下は、憔悴したように肩を落とし、連れていかれた聖女様の後を追うでもなく会場を出ていかれた。気にはなるが、彼を心配し気持ちに寄り添うのはもう私の役目ではない。

今回のことが問題となって、殿下と聖女様の婚約に影を落とさないといいと思う。


陛下は、初めて目の当たりにする私の力が想像よりもずっと強かったことに驚き、私がすぐに隣国へ渡ることを惜しんでくれた。レイモンド様との婚約がもっと後になっていたら、ひょっとして許可が下りなかったかもしれない。そう考えて少しだけぞっとした。

勝手かもしれないが、こうなった今はやはり、私を一人のエリザベスとして望んでくれる方の側で生きていきたい。


色々な思惑が飛び交う中、私はレイモンド様に支えられながら会場を後にした。





***********




その後、エリザベスはレイモンドとともにすぐに隣国へ渡った。

レイモンドのエリザベスへの溺愛は周辺諸国にも知られるほど有名となり、彼が国王へ即位したあとも、前国王と同じく他に妃は一切持たなかった。


騒動の後離宮に押し込められた聖女は、一人の命を救った公爵令嬢への誹謗中傷を止めなかった。もともとの素行や評判があまりに悪かったこともあり、その資質が疑問視されることとなる。王太子ジークハルトは責任を感じ、聖女との婚姻は彼女が力を覚醒してからにすると宣言したが、聖女の力覚醒の知らせは終ぞ聞こえてこなかった。


150年ぶりの聖女。長い間戦争もなく平和が続いていた国には、その力が必要とされるようなことはほぼ起きなかった。さらに大した力も目覚めぬままとなれば、聖女として尊ばれることもあまりなかった。もともと聖女によって力の強さには大きな差があり、今回は覚醒に至る程強い力を有していなかったのだと結論付けられた。


後にジークハルトは王太子位を返上し、王位には彼の従弟にあたる王弟の長男が就いた。

それからのジークハルトと聖女シャリーナがどのような人生を送ったのかはあまり知られていない。





ただ、ジークハルトは何度も隣国やマルセルス公爵へエリザベスとの面会を打診していたが、それが叶ったという話は一度も聞こえてこなかった。




もともと、このお話は前話、ジークハルトが自分の追っていた聖女の正体を悟るところで完結させるつもりでした。ただ、あまりにも途中っぽいかな?と思い蛇足感はありますがその後のお話を追加しました。


ジークハルトが可哀想すぎるかなとも思うのですが、色々思うところがあってこの結末に。実はその後のジークハルトやシャリーナの人生もあれこれと想像していたのですが、あまりに蛇足が過ぎるので割愛しました。

初めての作品で自分で考えても辻褄の合わないところや文章などの拙い部分も多かったですが、読んでいただけてとても嬉しかったです。


最後に、また違うお話も書き始めているので、ストックが溜まり次第投稿したいと思います。

もしよろしければ、その際にはまたお付き合いいただければとても嬉しいです。

ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
大好きなお話で何度も読み返しています。 素敵なお話をありがとうございます。、
[一言] 8ページなのに物語が詰まっていて、とても心がワクワクしました。 ページごとに登場人物の心情を知ることが出来るのはとても面白かったです。
2023/08/26 09:03 初めまして
[一言] ジーク君が「○年前に俺を助けた記憶はありませんか?」と元婚約者に尋ねて、レイモンド君が何か察するってシーンはあっても良かったかもw
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