第483話 眠気覚ましにぴったりだ
「あ~あ……起きちゃったか……」
勝手に目を覚まし、鳥籠を破壊して出てきたその美女に、僕は嘆息する。
残念ながらこの最上階の部屋に足を踏み入れた時点で、封印が解けてしまう仕様だったみたいだ。
「ルーク様、何か心当たりがあるのですか?」
「はい。この流れ、たぶん間違いないと思います」
不思議そうに聞いてくるリンダさんに、僕は肩を落としながら頷いた。
一方その美女はというと、
「そこそこ手応えのありそうなやつがいるな。眠気覚ましにぴったりだ」
そう言って獰猛に嗤ったかと思うと、いきなり地面を蹴って躍りかかってきた。
「え? このパターンは初めてだけど!?」
美女が真っすぐ襲いかかったのはゴリちゃんだった。
「~~~~っ!?」
美女が放った強烈な蹴りを、ゴリちゃんは両腕で防御したけれど、それだけでは威力を抑えきれずに吹き飛んでしまう。
えええっ、あのゴリちゃんが簡単に吹っ飛ばされちゃった!?
「な、何よ、あんたは!?」
「戦うしかなさそうでござるな!」
「貴様あああああああああっ! よくもゴリティアナ殿を……っ!」
すぐに武器を構えて応戦しようとするセレンたち。
ガオガルガさんはブチ切れだ。
けれど謎の美女はニヤリと笑って、
「その程度でくたばるほどヤワではないだろう」
「うふぅん、その通りよぉん!」
すぐに身を起こしたゴリちゃんは、血の混じった唾を吐き捨てながらも楽しそうだった。
「心配要らないわぁん。殺意は感じられないもの」
ゴリちゃんはそうみんなを制してから、
「次はこっちからイクわよぉん! はあああああああああああんっ♡」
嬌声と区別がつかない雄叫びを上げ、謎の美女へと飛びかかっていく。
それから凄まじい攻防が繰り広げられた。
どちらも武器を使わず、己の身体だけで戦うスタイルで、鍛え上げられた肉体と肉体がぶつかり合うさまには荘厳さすらも感じられる。
そして信じられないことに、村最強のゴリちゃんを相手に、謎の美女は一歩も劣らないどころか、むしろかなりの余力を持って戦っているように見えた。
「こんなに強い相手と拳で語り合えるなんてっ……気持ち良すぎてっ……イっちゃいそうだわああああああっん♡」
汗を散らしながら艶めかしい声を響かせるその様は、色んな意味で子供には見せられないものだけれど、本質的にはただひたすら脳筋なだけだ。
「ちょっと! 楽しそうね! 私も戦いたいわ!」
「オレにもやらせやがれっ!」
「拙者もサムライの強さを見せてやりたいでござる!」
おっと、他にも脳筋メンバーたちが……。
アカネさんはやめておいた方が良いと思うよ。
「……ゴリティアナ殿の……恍惚とした顔……最高だ……ハァハァ……」
なお、ガオガルガさんは涎を垂らして興奮している。
やがてゴリちゃんが地面を何度も転がり、壁に激突した。
全身にダメージを受けてボロボロで、さすがの彼女ももはや立ち上がれそうにない。
「や、やるわ……ねぇん……」
あのゴリちゃんがやられちゃうなんて!?
と驚きつつも、納得できる部分もあった。
なにせこの謎の美女、僕の予想が正しければ、かつて世界を救った英雄の一人なのだ。
「この私にほんの少しだが本気を出させるとは、悪くない強さだった。褒めてやろう。お陰で目が覚めた。……む? どうした? お前たちもやる気か?」
「当然よ」
「当然だろうが!」
「当然でござる!」
「……いいだろう。これからの戦いに向けて、少しは骨のある戦力を集めておきたいところだからな」
これからの戦い……うん、それ多分もう終わってます。
塔型の古代遺跡の最上階。
そこで封印から解かれた謎の美女と、セレンたちが激しい戦いを繰り広げた。
セレン、チェリュウさん、アカネさんの三人を相手に、謎の美女もさすがに押され気味だ。
「ぐべっ!?」
途中でアカネさんが脱落し、セレンとチェリュウさんの二人になったけど、ついに謎の美女が地面に膝をついた。
「はぁはぁ……驚いた。目覚めたばかりだったとはいえ、私をここまで追い込む者たちがいるとは……。戦力としても十分に期待できそうだ」
「あんたこそ、めちゃくちゃ強いわねっ……ぜぇぜぇ」
「ぐふっ……や、やるじゃねぇか……」
「せ、拙者、本調子でなかっただけでござるから……っ!」
……なんか青春っぽい感じでお互いを称え合っている。
アカネさんは完全に負け犬の遠吠えだけど。
「私の名はライカ。訳あってこの塔に封印されていた」
彼女はライカというらしい。
「どれくらいの年月が経ったか定かではないが、こうして目覚めたということは恐らく、やつが復活してしまったのだろう」
ライカさんは神妙な顔で、自らが封印されていた理由を口にするのだった。
「そう―――人類滅亡を目論む、魔王が」
僕は教えてあげた。
「魔王ならもう倒しちゃったよ?」
「…………え?」
目を丸くするライカさん。
「ほら、魔族がいるでしょ? 魔王を倒して、というか、正確には元凶の邪神の呪いを解いて、今はもう魔族とは友好関係にあるんだ」
「た、確かに、よく見るとアルマル族に、ダークエルフ族……まさか、本当に……」
ライカさんはしばし呆然とした後、
「せっかくまた魔王と戦えると思って楽しみにしていたのにいいいいいいいいいっ!」
「えっ、そっち?」
……この人、かなりの脳筋みたいだ。
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