第482話 何で勝手に起きちゃうの
『迷宮探索』のギフトを持つカムルさんに従って、リンダさんの示す方とは逆のルートへと進んだところ、大量のリビングアーマーに遭遇してしまった。
「なるほど、近道だけど魔物は多いルートだったってことだね」
「ももも、申し訳ねぇです……っ!」
カムルさんが謝る中、セレンが剣を抜きながら不敵に笑う。
「心配要らないわ。この程度なら余裕よ!」
「うふぅん、そうねぇ、この場合は近道が正解よぉん!」
先陣を切って突っ込んでいくセレンに、ゴリちゃんが続く。
あっという間にリビングアーマーを蹴散らしていった。
「さ、さすがですね……。我々王国軍は、この階のリビングアーマー相手にすでに苦戦し始めていたのですが……」
「二人はうちの村のツートップだから」
もちろん二人以外もリビングアーマーを圧倒している。
全部で三十体くらいいたけど、全滅させるまで十分もかからなかった。
そんなこんなで順調に各階を突破し、やがてローダ王国軍が撤退したという14階に辿り着く。
「確かにそれなりに強くなってきたわね!」
「そうねぇ! 痛みを感じない上に、防御力が高いから厄介だわぁん!」
そう言いつつ、この階のリビングアーマー相手でもそこまで苦戦することなく、軽々と次の15階へと続く階段を発見した。
「これがルーク村の戦士たちの実力ですか……我々も精進しなければ……」
「ふふん、拙者を見習ってくれてよいでござるよ!」
リンダさんが感嘆し、アカネさんが恥ずかしいアピールをしている。
「しかしこの階からは未知の領域。残念ながら、わたくしもルートを示すことはできません」
「いえ、ここまでありがとうございました。ここからはカムルさんがいるので」
そのためにカムルさんに同行してもらったのだ。
「せ、責任重大……」
プレッシャーで青くなっているカムルさんを頼りに、さらに上へ上へと進んでいく。
20階を越え、さらに30階が近づいてくると、さすがにリビングアーマーもかなり手強くなってきた。
「ふむ、かなり耐久力が上がってきたな」
放った矢で簡単には鎧を破壊し切れず、フィリアさんは何度も追撃の矢を放つ。
「動きも素早くなってきている……っ!」
俊敏さに定評のあるセリウスくんも、敏捷さを増したリビングアーマーに驚いている。
「はっ! 歯応えがあってむしろ楽しいじゃねぇか!」
……戦闘民族のチェリュウさんは嬉しそうだけど。
「オレもそろそろ本気を出さねばならぬようだな! グルアアアッ!!」
ガオガルガさんが雄叫びと共にその姿を変貌させていく。
アルマル族の彼は、戦闘力を数倍に引き上げる〝獣化〟という特殊能力を持っているのだ。
右半身が白銀の毛並みの狼で、左半身が黄金の毛並みの虎という、アルマル族の中でも珍しい、ミックスタイプの獣の姿と化した。
その鋭い爪で、強化されたリビングアーマーを引き裂いてしまう。
「あの硬い鎧を一撃で……さすが元六魔将……」
だけど同じ元六魔将のビビさんも負けていなかった。
「シャドウクレイブ!」
リビングアーマーの足元から漆黒の影が蠢きながら飛び出してくると、全身鎧を拘束。
そのまま凄まじい力でねじりながら圧縮していき、やがて踏み潰された空き缶のようにぐしゃぐしゃにしてしまった。
攻撃的な黒魔法を得意とする彼女にかかれば、一発で片付けてしまえるらしい。
「うーん、やっぱり強力な助っ人だったね。それはそうと、そろそろ最上階に到達してもいい頃だと思うけど……」
そうして僕たちは30階に到達する。
するとこれまでの階とは違って、広々とした空間が待ち構えていた。
円形の大空間で、天井も非常に高い。
恐らくここが塔の最上階だろう。
部屋の中心あたりに、天井から巨大な鳥籠のようなものがぶら下がっていた。
「中に何か入ってるような……?」
「もしかして、人?」
「檻でござるか?」
鳥籠の中、ピクリとも動かずに座っているのは、紫色の髪の女性だった。
整った顔立ちの美女だけれど、身体のあちこちに古傷があって、座っていてもかなりの大柄だと分かる。
「もしかして……このパターン?」
嫌な予感しかしなかった。
そういえば先日、うちに居候しているぐうたら二人組が言っていたっけ。
同じようなのが全部で四人いる、と。
「じゃあ、みんな帰ろう! 無事に最上階まで辿り着いたわけだしね!」
「どうしたのよ、ルーク? あの檻の中の女性が気にならないの?」
「気にならないよ! 封印を解かずにこのまま引き返すのが正解だから! もうあれ以上、居候を増やしたくないし!」
という僕の必死の訴えをあざ笑うかのように、
「あ、目を開けたわ」
「ええっ? 何で勝手に起きちゃうの!?」
檻の中の美女がゆっくりと動き出した。
「ふぁああああ……」
大きな欠伸をしながら身を起こすと、その身体を納めておくには小さすぎる檻の鉄格子を無造作に掴んで、
バキバキバキンッ!!
強引に破壊してしまう。
そして鳥籠から脱出すると、地面に着地した。
やっぱり大きい。
身長に加えて体格までもが、ゴリちゃんに匹敵するほどだ。
その美女はまだ眠そうに欠伸を噛み殺しながらもこちらを睥睨し、
「……ほう、そこそこ手応えのありそうなやつがいるな。眠気覚ましにぴったりだ」
獰猛に嗤った。
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