第473話 もう好きにしてよ
「ふう……だいたいこんなところかな?」
魔大陸北端の海岸。
僕たちが魔大陸攻略への足掛かりとしたその場所に、一つの街が完成した。
周囲に危険な魔物が多数棲息していることもあって、要塞を中心とした都市だ。
〈要塞:軍事的な防備施設。士気アップ。疲労回復速度アップ。医療行為の効果アップ〉
「……あれ? もしかして結果的に魔大陸内に軍事拠点を作ったような形になってる……?」
人間の王たちがあんな提案をしてきたのは、実はそのためだったのでは……。
「うん、まぁ、気にしないようにしよう……。だけど、人と魔族の友好を目的とした都市にしてはちょっといかつ過ぎるよね」
というわけで、都市内に魔大陸にちなんだ楽しい遊園地を設置することにした。
〈遊園地:様々なアトラクションが設けられたレジャー施設。日常の嫌なことは忘れて遊びまくろう!〉
ちなみに、すでに海底に新幹線を走らせ、各都市から行き来しやすいようにしてある。
もちろんうちの村とも繋いでいて、ビビさんやモンモルがすんなり村にやってきたのはそのためだ。
「街の名前は何にしようかな……?」
「当然、ルークタウン一択でしょう!」
「嫌だよ! よし、公募で決めよう!」
ミリアが変な名前を提案してきたけど、それを一蹴して村人たちから募集することにした。
そうして挙がってきた名前の中から、今度は魔族の代表者たちに良さそうなものを選んでもらい、五個に絞り込む。
最後はそれを各国のトップたちに見せ、投票してもらった。
結果、選ばれたのは、
「ルークタウンです!」
「何で!?」
ミリアの案そのままだ。
「何か裏で不正をしなかった!?」
「しておりません。そもそも村人たちからの公募の時点で、ルークタウンを挙げる人が圧倒的でした。さらに魔族によって五個に絞られた段階でもルークタウンは一番評価を得ていて、最後も満場一致でルークタウンとなりました」
「えええ……」
個人的には物凄く不服だったけれど、それが公募と投票の結果だというのなら従うしかない。
こうして魔大陸の友好都市は、ルークタウンと呼ばれることになったのだった。
「せっかくですから、平和の象徴としてスーパー村長をルークタウンに設置し、街の名所にしましょう」
「もう好きにしてよ……」
ルークタウンはあっという間に大人気となった。
街なので居住区も作ったのだけれど、移住希望者が殺到して瞬く間に売り切れ、すぐに第二居住区を作ることになったほど。
観光客も各地から続々と訪れ、宿泊用のホテルは連日の満室だ。
もちろん魔族の観光客も少なくない。
「ホテルも増やさないと! いや、その前に従業員が必要かも! となると、従業員用の住宅がいる!」
お陰で僕も大慌てで追加の施設を設置していく。
すると急に話しかけてくる人物がいた。
「なんと素晴らしい街でしょう! 食事は美味しいし寝床は快適! 特にあの遊園地とやらは何度遊んでも飽きがこない! ああ、ルーク村長、改めてお礼を言わせてください!」
「あ、はい、ええと……あなたは……?」
見たところ魔族のようだ。
どこかで会ったような気もするけど、思い出せない。
「っと、これはこれは、大変失礼いたしました! わたくしはヴァンピア族の長、ヴァラドと申します! 以後、お見知りおきを!」
「あっ、じゃあ、あの会談のときに会ってますね……すいません」
村で行われた人間と魔族の代表者たちによる和平会談。
魔王軍では六魔将の一人だった彼は、ヴァンピア族の長として出席していたみたいだ。
……ダークエルフ族もそうだけど、ヴァンピア族も美形ばかりで見分けが付きにくいからね。
ヴァラドさんも端整な顔立ちで、その紳士的な態度も相まって貴族然としている。
「いえいえ、ほんの少しご挨拶しただけでしたから! そんなことより、この街で提供されている料理に入っていたトマトですよ! あれは一体どうやって作ったものなんですか!?」
「トマト? えっと、荒野の村の畑で作ったものをこっちに持ってきてるんです」
「なんと! いえ、実はわたくし、トマトには目が無くてですね! 生き血よりもトマトが好きなのですよ!」
「そ、そうなんですね……。あのトマトならいくらでも作れますし、今度そのままあげましょうか?」
「いいのですか!? ぜひあの至高のトマトに、そのまま噛り付いてみたいと思っていたのです!」
吸血鬼なのにトマトの方が好きなんだ……。
詳しく聞いてみると、ヴァラドさんだけでなく、ヴァンピア族の多くがトマトばかり食べているそうだ。
「吸血鬼などとも言われますが、実はそんなに血を好むわけではないんですよ」
「あれ? そうなんですか?」
「吸血はあくまで自衛手段です。魔族としてはあまり強い種族ではありませんから、吸血した相手を眷属にすることで身を守っているのです」
むしろほとんどの血はあまり美味しくないらしい。
「そ、れ、と! 実はもう一つ! ぜひお伝えしたいことが!」
「な、何でしょう……?」
「あの遊園地にあるお化け屋敷も最高ですね! 我々ヴァンピア族にとってこれ以上ないくらい快適な空間でして、何度も遊んでしまいましたよ! つい長時間、中で居座っていたら怒られてしまいましたけれど!」
「やっぱり暗い場所を好むんですね……」
だからと言って、中でくつろがれてしまっては、お化け役のキャストからすると大迷惑だろう。
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