シスターウィッチまーがれっとちゃんマジカルと
ブクマありがとうございます!
あと今回、前半はややキツイ話なので注意です。
「転生って? なに? え?」
「分からない? 辞書調べる?」
「え~……?」
……目の前の少女は、俺のことを転生させたと言っていた。
要するに、今の俺は、俺が知っている俺ではなくて、新たなる俺としての俺らしい。
俺ってなんなんだろう(哲学)。
「転生って……あれか? 死んでまた新たな生命として生まれ変わる的なあれ?」
「そうそう。『的なあれ』じゃなくてそのまんまね」
「……ウッソだー」
「ところがどっこい・・・・現実です・・・・! そう、これが現実・・・・!」
「おまえ凄むと顔怖いんだからやめろよチビるだろ」
金髪碧眼の少女が顔に横線を入れまくり顔を近づけた。
正直、嬉しさよりも恐怖の方が大きい。
……っつーか。
「……え、じゃあなに、俺……死んだの?」
「うん、死んだ。サックリ」
「……えええ……」
……なんというか。にわかには受け入れがたい。
いや、まあ、その……実のところ、1ミリくらいは予想してたことも無いんだが……。
その予想ってのは、あくまで、「俺には超能力があって、今はまだ目覚めてないだけ」とか、「おい……お前、俺の心を読んでるんだろ? 知ってるぜ……!」みたいな、いわゆる厨二的な発想であり、間違っても現実的な推理として打ち立てていたわけではなかった。
それがどうだ。
日本の多くの男子である「異世界転生」を生身で体験しているらしい。
へー、そーなんだー、へー……。
「……って信じられるかッ!」
俺は少女、マーガレットを押しのけ、ガバッと立ち上がる。
未だに体のあちこちが痛むが、構ってはいられない。
「なに? 前世に未練がある感じ?」
「いや、まあいつ死んでもいいような甲斐のない人生だったけど……。それとこれとは別!」
「分からないねえ……、君の前の人生よりも、今の人生の方が価値があるんじゃないか? だって定職についてるんだよ? しかも可愛い同僚付きで」
「現状の良さ悪さについて語ってるんじゃなくてだな……」
疲れとは別の原因で頭痛がする。
俺だって、マーガレットの言っていることが、本当に事実であるならば、多少は浮かれよう。
だが、ダテに34年生きてない。
妄想と現実の区別はつく。
それを混同するのは、ガキか、BP○とかP○Aとかあの辺だけだ。
「……だいたい、俺、死んだときの記憶なんてまったくねえぞ? 普通に二日酔いで見知らぬところに迷いこんじまったって可能性は……」
「……死因、教えてほしい?」
「……」
「……つらいよ?」
「なにが?」
俺は首を傾げる。
聞くのが辛くなるほどの死因とは、はたしてどのようなものであるのか。
マーガレットは、まるで愚昧な弟子を見るのかのような様子だった。
「……じゃあさ、言うけど、後悔しないでね」
「自分の死因を聞いて……なにを後悔するってんだ」
「あのね……」
マーガレットは、語る。
俺の、死因を。
「君は……コンビニで、金銭の強盗犯に、不用意に声をかけたばかりに、……死んだんだ。
腹を、刺されて」
「……」
……!
「……あ、あ、あ……!」
……あ、ああ。
……思い、だした……!
あのとき……!
『ママ、ママぁ!』
『う、うわあああああ!』
『やめて、この子だけは!』
走馬燈。
フラッシュバック。
血の光景。
意識が深い腐海に不快に飲み込まれる。
『こんなこともできないんスか、先輩?』
『君ね……大学生にもなって……』
『先輩のことは嫌いです』
そして、腹部に激痛が走る。
……ちょうど、虫歯に銀紙を入れたときの、あの感覚。
それが、腹の中で強烈に炸裂した。
ナイフって……冷たいのに、こんなに熱いんだな……。
だって、こんな……!
「……しっかりしろ」
ぽんぽん、と、少女は俺の背中をさすった。
瞬間、俺は我に返る。
「……思い出さない方がいいでしょ、あんなの?」
「……そうだな、悪かった」
マーガレットの言葉が引鉄となり、俺の脳裏に、鮮やかな記憶が焼き付いた。
……正直、思い出したくなかった。
だが、一方で、俺は、この記憶をぜったいに知りたがっていたんだと思う。
不甲斐ない、意味のない人生だったけど。
……それでも、こんな、紛い物の体と魂ではなく。
正真正銘、本物の、俺の人生だったはずだから。
「……ま、しんみりタイムはここまでにしようか!」
マーガレットはポンと手を叩いた。
俺もその提案には賛成だった。
さすがに、あんなテンションで残りを過ごしたくない。
「えーっと……、んー……」
俺は右手で頭を掴み、現状を把握する。
「……まず確認したいんだけど、俺は異世界に転生したのか?」
「そうそう、多少なりともラノベを嗜んでる君なら理解できるはずだよ」
「いや、でもちょっと待って、おかしくね?」
「転生」という言葉を使って彼女は現状を表現したが、しかしまだ疑問が残る。
「転生したんなら……、なんで出生からスタートしないんだ?」
「おうおう、なかなかいい質問だねえ」
マーガレットは鷹揚に頷いた。
なんか……やっぱり年下に上から目線で話されるのってムカつくな。
「君の質問はもっともだよ。実はね、君の体は、つい昨日まで『魂が入っていなかった』んだ」
「魂が……ない?」
「そうそう、まあちょっとエグい話になるから詳細は伏せるけど……。
空っぽの体に、私が君の世界でいう『人工知能』のような魔法をかけて動かし、成長を続けさせていたんだ」
「……まあ、うん、なんか両親とかいろいろ気になるんだけど、深くは問わないよ」
これ以上訊くのは人道的にヤバい気がする。
あとで否応なく知ることになりそうだし。
「……それで、俺は、22歳の青年、ウィリアム……えっと、なんだっけ」
「カーティスね。ウィリアム・カーティス」
「そうそう、ウィリアム・カーティスの中に魂を埋め込まれたってことか」
「おー、理解が早くて助かるよー!」
マーガレットは笑顔でうなずいた。
まあ、無○転生とかこの○ばとか、かじる程度には読んでたからな。
だてにルー○ウスに憧れてない。
同じ34歳無職童貞だから親近感とか別に感じてないんだからね///
「……で、なんで教師になってるの?」
「ああー、それねー、それが私の一番話したかったことなんだよねー」
マーガレットはそう言うと、不意に立ち上がり、部屋を歩き回った。
さながら、事件の真相を暴く探偵のように。
まあそもそも彼女が犯人だから推理もクソもないんだが。
「ときに君は……オンラインネットゲーム、『アスタリスク・オンライン』、通称『ケツ穴』で、『先生』と呼ばれ親しまれていたそうじゃないか」
「ああ……、まあ」
なんか「ケツ穴」っていうときの顔だけすごい輝いてたの、気のせいかな。
……まあ、俺としては、ギルメンの指導役を買ってでていたわけではない。
ただ、気づいたら、「あの人に訊けばたいていのことは分かる」と噂されるまでになっていた。
「実際、君の手腕は素晴らしいと思うよ? 人の個性を見抜き、訓練をさせ、立派な戦士へと教導する……。まさに、『先生』と呼ぶに足る逸材だと思う」
「……だから、俺に、この村の学校の子供たちの教師となれと?」
「そういうこと! 素晴らしいと思わない?」
「そういうのはこの世界の人間がやればいいんじゃないですかね……(名推理)」
「それな」
「……」
……それな、じゃねえよ。
じゃあなんで俺を転生させたんだよ。
いや、まあ嬉しいか嬉しくないかっていったら嬉しいけど!
元の俺よりは明らかによくなってるし!
ただ! ……ただ!
「納得がいかない! 答えろ、マーガレット! 何かを隠しているだろ!」
「そうだけど⁉ 文句ある⁉」
「逆ギレ⁉」
なんで俺が責められてるみたいになってんの⁉
「いいかい、ウィル……、この世界にはたいへんな危機が迫っているんだ」
「なに、魔王でもいるの?」
「いるよ。いまはまだ力が弱いけど、近いうちにこの世界を襲う」
「マジかよ……!」
すっごい牧歌的な空気感を味わっていたのに……。
どうぶ○の森を遊んでたらいつの間にかダー○ソウルになってた気分だ……。
「そこで、ね?」
少女は、俺を指さす。
「ちょうどいいタイミングで死んだ君に頼みがあるんだよ。
アルマダの村の生徒を教育して、魔王を倒すための戦士に鍛え上げてほしいんだ」
少女は、そう俺に大義を申し付けたが、……しかし。
「いや……無理でしょ」
「うん、わかるよ、君の気持ちはね? ただでさえ、魔王とは恐るべき存在であるから――」
「いや、そもそも、子供たち言うこと聞かねーし」
「……」
「……」
「……マジで?」
「マジで。今日もシャロとかパイ投げつけられてたから」
「……」
「……」
「じ、児童を育成するには苦難も伴うだろう! だが君ならでき――」
「ふざけんな真面目に考えろッ‼」
「ごめんなさいごめんなさい! もっと素直な児童がいるところって聞いてたんです! ぶっちゃけ初耳なんですそんなの!」
「はああああああああああああああああああ⁉」
少女は膝を抱えうずくまり、自身の境遇を嘆いた。
「……おかしいと思ってたんだよね……。商業が活発で、騎士が跋扈する都市って聞いてたのに、いざ来てみたら、農業が活発で、牛が跋扈する田舎なんだもん……」
「……そうか、お前もここに派遣されたのか……」
「はあ……口車に乗るんじゃなかった……」
「どうする? 転生して人生やりなおす?」
「遠回りに死ねと⁉」
けっこうストレートな死刑宣告だと思うんだけどなあ。
しかし少女は、こんなところで腐るタマじゃなかった。
「ま、まあ、来ちゃったもんはしょうがない! なるようになるさー!」
「その明るさだけは羨ましいな……」
「……と・こ・ろ・で」
金髪少女マーガレット(アニメのタイトルみたい)は、口元を隠し、露骨にいやらしい目で俺の下腹部を見た。
「ウィルお兄ちゃんさあ……、けっこう溜まってない?」
「なにが? 魔力?」
「うん、そうだよ……。白くてドロッとしたエッチなまりょ――」
ドン、と俺はマーガレットを部屋の外へと押し出し、鍵をかけた。
マーガレットがドアをドンドンと叩く。
『ご……、ごめ、お兄ちゃん! もう言わないから! お願い! 開けて! ちょ、ホントマジで! 魔法使いってそこまで万能じゃないから!』
「さーて、今日はもう寝るかー」
『あ! そうだ、お兄ちゃん! お兄ちゃんアレでしょ、お風呂の場所知らないでしょ! 私が教えてあげるから! ねえ、お兄ちゃん!』
「ごめんなマーガレット、俺は朝風呂派なんだ」
『しょんなあああああああああああああああああああ……』
しくしくと泣き崩れるマーガレット。
ちなみにこのあと事態を勘違いしたシャーロットの手によってあれがこうなってそうなって俺の顔が痣だらけになりました(半ギレ)。




