そりゃ伸びない
『廻天』
第三十二話 仕事しながら
それから。
三週間。
レンは。
毎日。
鉄球を。
足にぶつけていた。
わけではない。
⸻
本部から。
普通に。
仕事が来る。
⸻
一件目。
商業倉庫。
異能暴走。
男。
触れた物を。
弾き飛ばす。
能力。
暴走。
棚。
箱。
鉄骨。
全部。
飛ぶ。
レン。
「澪!」
「右!」
鉄骨。
飛来。
レン。
手。
向ける。
《穿牙》。
ではない。
向き。
意識。
「曲がれ!」
鉄骨。
ガッ!!
十センチ。
逸れる。
レンの。
横。
通過。
壁。
突き刺さる。
カイ。
「できた。」
レン。
「十センチだけな!」
アキラ。
「十分じゃないですか。」
レン。
「お前は伏せろ!」
「はい!」
直後。
アキラ。
爆発。
ドォン!!
倉庫。
壁。
一枚。
消える。
レン。
「だから撃つなっつったろ!!」
⸻
二件目。
旧世遺物。
回収。
箱。
触れるたび。
衝撃波。
出る。
澪。
「周期。」
「四秒。」
レン。
「じゃあ。」
衝撃。
来る。
レン。
腕。
前。
受けない。
横。
逃がす。
ドッ!!
衝撃。
地面。
走る。
木。
一本。
倒れる。
レン。
「……。」
カイ。
「横に行った。」
澪。
「成功です。」
レン。
「木。」
見る。
「怒られる?」
カイ。
「たぶん。」
⸻
三件目。
失踪した。
異能者。
十九歳。
能力。
自分の。
気配。
薄くする。
戦闘。
なし。
山。
歩く。
五時間。
レン。
「こういうのも。」
「俺らの仕事?」
澪。
「はい。」
カイ。
「足痛い。」
レン。
「お前は仕事じゃねぇだろ。」
「キャンピングカー。」
「俺のだから。」
「それ免罪符にすんな。」
⸻
その夜。
十三。
遠く。
地面。
触れる。
《残響》。
追う。
通信。
『状況。』
「普通に。」
「仕事してる。」
『敵対行動は。』
「なし。」
『監視継続。』
十三。
「了解。」
間。
「……暇。」
通信。
切れる。
⸻
四件目。
高速道路。
能力事故。
運転手。
意識。
失う。
車。
九十キロ。
ガードレール。
向かう。
レン。
道路。
横。
走る。
「止めるのは。」
「無理!」
澪。
「止めなくていい!」
「右へ!」
レン。
「右!?」
カイ。
「向きだけ!」
レン。
手。
伸ばす。
車。
運動。
巨大。
怖い。
全部。
受けたら。
確実に。
壊れる。
だから。
受けない。
ただ。
少し。
向き。
変える。
一度。
二度。
三度。
車。
蛇行。
速度。
落ちる。
最後。
側道。
砂利。
突っ込む。
停止。
⸻
静か。
レン。
膝。
つく。
「……。」
運転手。
生きてる。
澪。
確認。
「無事です。」
レン。
息。
吐く。
カイ。
隣。
立つ。
「今。」
「結構すごかった。」
レン。
「火力。」
「ゼロだけどな。」
カイ。
「人助かった。」
レン。
「……。」
少し。
笑う。
「まあ。」
「それならいいか。」
⸻
五件目。
山中。
暴走型。
大型。
能力者。
一撃。
地面。
割る。
アキラ。
前。
出る。
「今度こそ。」
レン。
「待て。」
敵。
拳。
振る。
巨大。
衝撃。
レン。
見る。
向き。
分かる。
受けない。
集めない。
流す。
アキラへ。
直接。
⸻
一瞬。
繋がる。
レン。
身体。
通らない。
衝撃。
軌道。
曲がる。
アキラ。
腕。
光る。
「来た!」
《爆炉》!!
ドォォン!!
敵。
吹き飛ぶ。
⸻
全員。
止まる。
レン。
「……。」
アキラ。
「……。」
カイ。
「できた?」
澪。
銀界。
確認。
「一瞬だけ。」
「レンを。」
「通っていません。」
レン。
笑う。
「もう一回。」
澪。
「無理です。」
「なんで!」
「今の。」
「偶然に近いです。」
アキラ。
「俺。」
「もう一回やりたいです。」
澪。
「二人とも。」
「ダメです。」
⸻
それから。
さらに。
二週間。
十件。
任務。
こなす。
成功。
失敗。
怪我。
修理。
温泉。
毛糸。
爆発。
また。
任務。
⸻
レンは。
少しずつ。
変わった。
飛んでくる物。
逸らせる。
衝撃。
逃がせる。
自分の。
踏み込み。
方向。
微調整。
できる。
でも。
まだ。
大きな。
エネルギー。
自由に。
操れない。
アキラへ。
渡せるのも。
十回に。
一回。
⸻
澪だけ。
分かっていた。
これは。
もう。
《穿牙》の。
小技。
ではない。
でも。
まだ。
名前を。
つける段階でも。
ない。
⸻
ある日。
任務帰り。
キャンピングカー。
レン。
運転。
カイ。
後ろ。
寝てる。
アキラ。
菓子。
食べる。
澪。
端末。
見る。
「次。」
レン。
「もう来た?」
「はい。」
「どこ。」
「十八キロ。」
カイ。
目。
閉じたまま。
「温泉?」
レン。
「任務だ。」
カイ。
「終わったら?」
澪。
「あります。」
カイ。
「行こう。」
レン。
「だから旅行じゃねぇ!!」
⸻
そして。
レンは。
知らない。
次の任務で。
考える暇も。
なく。
初めて。
完全に。
攻撃の向きを変えることになる。
――第三十二話・了




