襲来
『廻天』
第二十話 編みすぎ
数日後。
カイ宅。
玄関。
開かない。
正確には。
開くけど。
途中で。
止まる。
カイ。
「……。」
押す。
ゴッ。
「……。」
もう一度。
押す。
ゴゴッ。
カイ。
「シュウ。」
『何だ。』
「何これ。」
『何が。』
「玄関。」
『玄関だな。』
「開かない。」
『そうか。』
「そうかじゃない。」
カイ。
隙間。
覗く。
毛糸。
箱。
袋。
完成品。
大量。
「……。」
「増えてない?」
沈黙。
『気のせいだ。』
「物理的に入れないんだけど。」
⸻
夜。
部屋。
床。
ソファ。
椅子。
棚。
全部。
編み物。
マフラー。
帽子。
手袋。
カーディガン。
バッグ。
小物入れ。
ひざ掛け。
クッションカバー。
謎の。
細長い。
何か。
カイ。
持つ。
「これ何。」
シュウ。
『失敗作。』
「失敗作も置くの?」
『捨てるのは惜しい。』
「じゃあどうするの。」
『知らん。』
カイ。
部屋。
見渡す。
「もう無理。」
⸻
翌日。
店。
カイ。
大袋。
三つ。
持参。
スタッフ。
「何それ。」
カイ。
「編み物。」
「また?」
「家入らない。」
スタッフ。
「は?」
⸻
休憩室。
袋。
開く。
スタッフA。
「え。」
スタッフB。
「かわいい。」
スタッフC。
「これ売り物?」
カイ。
「違う。」
「誰作ったの。」
カイ。
止まる。
「……。」
シュウ。
内側。
『言うな。』
カイ。
「知り合い。」
スタッフ。
「職人?」
カイ。
「たぶん。」
『たぶんとは何だ。』
⸻
カイ。
机。
並べる。
「欲しい人どうぞ。」
一瞬。
静か。
次。
「これいい!」
「この帽子かわいい!」
「バッグ欲しい!」
「え、手編み!?」
五分。
半分。
消える。
カイ。
「早。」
⸻
その日。
客。
施術後。
待合。
スタッフ。
新しい。
手編みマフラー。
着けている。
客。
「あら、それかわいい。」
スタッフ。
「カイさんにもらったんです。」
客。
「カイさんが作ったの?」
カイ。
受付。
振り向く。
「違います。」
スタッフ。
「知り合いらしいです。」
客。
「へぇ。」
「これ売ってる?」
カイ。
「売ってない。」
「欲しい。」
「いっぱいあるよ。」
客。
「え?」
⸻
翌日。
持ってくる。
また。
大袋。
カイ。
「好きなのどうぞ。」
客。
「ほんとに!?」
「うん。」
「無料?」
「うん。」
スタッフ。
「商売しろよ。」
⸻
口コミ。
始まる。
⸻
SNS。
【エステ行ったら手編みの帽子もらった】
写真。
投稿。
【めっちゃ可愛い】
【これ無料ってどういうこと?】
【施術も上手いし謎】
【予約取れない人の店】
【カイさん何者】
⸻
カイ。
知らない。
⸻
数日。
予約。
さらに。
増える。
電話。
「はい。」
受付。
「はい。」
「カイさんの予約ですね。」
「最短で……。」
予約表。
見る。
「五週間後です。」
電話。
『え!?』
受付。
「はい。」
⸻
真紀。
事務所。
数字。
見る。
売上。
過去最高。
再更新。
真紀。
「……。」
カイ。
呼ばれる。
「何。」
「座って。」
「何した。」
カイ。
「何も。」
真紀。
スマホ。
見せる。
SNS。
【編み物もらえるエステ】
カイ。
「……。」
「何これ。」
真紀。
「こっちが聞いてる。」
⸻
美奈子。
その日。
来店。
手。
紙袋。
「こんにちは。」
カイ。
「こんにちは。」
美奈子。
店内。
見る。
スタッフ。
全員。
何か。
編み物。
身につけている。
客。
マフラー。
持っている。
美奈子。
カイを見る。
「……。」
「何屋?」
「エステ。」
「嘘でしょ。」
⸻
カイ。
袋。
見せる。
「いる?」
美奈子。
覗く。
一つ。
取り出す。
黒。
白。
細い。
模様。
編み込まれた。
ストール。
「……。」
美奈子。
少し。
目。
細める。
「これ。」
カイ。
「何。」
「すごい。」
「そう?」
「編み目。」
指。
なぞる。
「めちゃくちゃ綺麗。」
シュウ。
内側。
『当然だ。』
カイ。
(嬉しそう。)
『別に。』
⸻
美奈子。
ストール。
首。
巻く。
鏡。
見る。
「いいじゃん。」
カイ。
「持ってって。」
「ほんと?」
「家に置けない。」
美奈子。
「理由が悲しい。」
⸻
その夜。
本部。
モニター。
データ。
榊。
「……。」
澪。
隣。
「どうしました。」
榊。
カイの。
定期データ。
見る。
七層。
前回。
今回。
比較。
微増。
ではない。
明確。
滑らか。
特に。
第六。
第七。
《結流》
《解流》
制御精度。
上昇。
榊。
「おかしい。」
澪。
「何が。」
「戦闘訓練。」
「していない。」
「はい。」
「能力訓練も。」
「していません。」
「なのに。」
画面。
拡大。
「結流と解流だけ。」
「異常に精度が上がっている。」
澪。
考える。
「エステでは。」
「多少使っているはずです。」
榊。
「それだけでは説明できない。」
⸻
そこへ。
レン。
入る。
「何。」
榊。
「カイの能力。」
「また伸びています。」
レン。
「またエステだろ。」
榊。
「今回は違います。」
「結ぶ。」
「ほどく。」
「この二つだけ。」
レン。
止まる。
「……。」
澪。
「最近。」
「何か。」
「反復作業を。」
三人。
沈黙。
誰も。
知らない。
⸻
同時刻。
カイ宅。
カイ。
熟睡。
シュウ。
起床。
「……。」
机。
座る。
編み針。
持つ。
毛糸。
指。
通る。
一本。
二本。
交差。
重なる。
締める。
緩める。
繋ぐ。
ほどく。
結ぶ。
戻す。
また。
結ぶ。
⸻
シュウ。
何も。
考えていない。
ただ。
美しい。
編み目。
作りたい。
だけ。
しかし。
カイの内部。
七つの経路。
静かに。
反応。
第六。
結。
第七。
解。
細い。
光。
交互。
灯る。
そして。
中央。
まだ。
何もない場所。
そこへ。
一瞬。
一本の白い糸。
通る。
シュウ。
気づかない。
⸻
朝。
カイ。
起きる。
手。
見る。
「……。」
シュウ。
『どうした。』
「なんか。」
指。
動かす。
「手。」
「動きやすい。」
『寝たからだろう。』
「そっか。」
『そうだ。』
二人とも。
気づかない。
⸻
店。
カイ。
施術。
客。
肩。
触れる。
《感流》。
見る。
《観流》。
そして。
絡み。
一本。
見える。
カイ。
「……。」
少し。
指。
動かす。
《解流》。
以前。
数秒。
必要。
だった。
今。
一瞬。
ほどける。
カイ。
止まる。
「……。」
客。
「どうしました?」
「いや。」
もう一度。
別。
流れ。
《結流》。
繋ぐ。
滑らか。
ほぼ。
抵抗。
なし。
カイ。
「……。」
シュウ。
『上手くなったな。』
(なんで。)
『エステだろ。』
(かな。)
二人。
全然。
気づかない。
⸻
昼。
レン。
店。
来る。
カイ。
「肩見る?」
レン。
「見るな。」
「ちょっとだけ。」
「嫌だ。」
澪。
後ろ。
「データ取得のため。」
レン。
「お前まで何で。」
⸻
カイ。
レン。
腕。
触れる。
《結流》。
以前。
傷。
左脚。
迂回。
していた。
その周辺。
糸。
見る。
カイ。
「……。」
少し。
触る。
ほんの。
僅か。
繋ぐ。
レン。
足。
止まる。
「……。」
カイ。
「何。」
レン。
左脚。
踏む。
もう一度。
「お前。」
「何。」
「今何した。」
「ちょっと繋いだ。」
「ちょっと?」
「うん。」
レン。
顔。
変わる。
「前より。」
「速くねぇか。」
カイ。
「そう?」
澪。
観察。
「明確に。」
「速度。」
「精度。」
「上がっています。」
カイ。
「エステかな。」
レン。
「何でもエステで片付けんな。」
⸻
その時。
スタッフ。
大袋。
持ってくる。
「カイさん。」
「また家から持ってきたやつ。」
レン。
見る。
袋。
中。
編み物。
「……。」
澪。
見る。
「……。」
スタッフ。
「今日のお客さんにも配っていい?」
カイ。
「いいよ。」
レン。
ゆっくり。
カイを見る。
「お前。」
「何。」
「編み物始めたのか。」
「俺じゃない。」
「じゃあ誰。」
「知り合い。」
レン。
「またそれか。」
澪。
一つ。
手袋。
取る。
編み目。
見る。
「……。」
レン。
「何。」
澪。
「綺麗です。」
カイ。
「でしょ。」
レン。
「何でお前が誇らしげなんだよ。」
⸻
数日後。
SNS。
さらに。
爆発。
【予約取れないけど行くと謎の手編みもらえる】
【カイさんの店、エステ+編み物】
【何この店】
【施術めっちゃ上手い】
【スタッフさんも全員手編み装備】
【客まで配布される】
⸻
真紀。
事務所。
頭。
抱える。
「……。」
カイ。
「店長。」
「何。」
「また予約増えた。」
真紀。
顔。
上げる。
「知ってる。」
「売上も。」
「知ってる。」
「過去最高。」
「知ってる!!」
カイ。
「怒ってる?」
「呆れてる。」
⸻
美奈子。
横。
ストール。
巻いてる。
「私は好きですよ。」
真紀。
「美奈子さん。」
「はい。」
「止めてください。」
「何を。」
「この人。」
美奈子。
カイを見る。
「無理ですね。」
カイ。
「何が。」
美奈子。
「勝手に話題作るから。」
カイ。
「作ってない。」
真紀。
スタッフ。
レン。
澪。
その場。
全員。
カイ。
見る。
「作ってる。」
カイ。
「……。」
シュウ。
内側。
『俺は関係ないな。』
カイ。
(お前が一番関係ある。)
『何の証拠が。』
カイ。
(カード。)
『……。』
⸻
店外。
行列。
までは。
ない。
でも。
予約。
六週間。
先。
店全体。
高稼働。
スタッフ。
手編み。
客。
手編み。
美奈子。
手編み。
真紀。
唯一。
何も。
着けていない。
カイ。
袋。
差し出す。
「店長もいる?」
真紀。
「いらない。」
「これ似合いそう。」
「いらない。」
「黒。」
「いらない。」
「シンプル。」
「……。」
三秒。
真紀。
取る。
「これだけ。」
カイ。
「いるじゃん。」
「うるさい。」
⸻
夜。
本部。
榊。
新データ。
見る。
第六。
第七。
また。
上昇。
そして。
中央。
微弱。
反応。
「……。」
岳。
後ろ。
缶コーヒー。
「何。」
榊。
「また。」
「七つの中央。」
「反応しています。」
岳。
画面。
見る。
「本人は。」
「何をしてる。」
澪。
報告書。
見る。
「施術。」
「睡眠。」
「仕事。」
「……。」
一拍。
「大量の編み物配布。」
岳。
「何それ。」
レン。
頭。
抱える。
「俺も知りてぇよ。」
⸻
同じ頃。
シュウ。
編む。
一本。
一本。
繋ぐ。
ほどく。
組む。
戻す。
そして。
また。
繋ぐ。
本人。
ただ。
楽しそう。
そのたび。
カイの内部。
白い糸。
少しずつ。
七つを。
横切る。
まだ。
誰も。
知らない。
カイの最も効率のいい能力訓練が。
エステでも。
戦闘でもなく。
編み物だったことを。
――第二十話・了
『廻天』
第二十一話 もう一人
日常は。
唐突に。
終わった。
⸻
午後九時四十七分。
閉店。
カイ。
タオル。
畳む。
真紀。
レジ。
締める。
スタッフ。
帰宅準備。
いつも通り。
だった。
「カイ。」
「何。」
「これ持って帰って。」
真紀。
紙袋。
渡す。
中。
毛糸。
「……。」
「お客さんから。」
「なんで。」
「知らない。」
メモ。
入っている。
『いつも素敵な編み物ありがとうございます。よかったら使ってください』
カイ。
「……。」
シュウ。
『良い客だ。』
(お前のせいだからね。)
『礼を言っておけ。』
(自分で言え。)
⸻
入口。
チリン。
カイ。
「すみません。」
「本日もう――」
男。
一人。
入ってくる。
二十代。
細身。
黒い。
パーカー。
手。
ポケット。
真紀。
「ご予約でしょうか。」
男。
答えない。
カイ。
見る。
「……。」
男も。
カイを見る。
長い。
沈黙。
そして。
「いた。」
カイ。
止まる。
シュウ。
『カイ。』
(うん。)
空気。
変わる。
⸻
真紀。
一歩。
前。
「申し訳ありません。」
「本日の営業は終了しております。」
男。
真紀を見る。
「一般人。」
「……?」
「邪魔。」
カイ。
「店長。」
真紀。
振り向く。
「何。」
「奥行って。」
声。
違う。
真紀。
カイを見る。
「……。」
「知り合い?」
「知らない。」
「じゃあ警察。」
スマホ。
取る。
男。
指。
動く。
カイ。
見えた。
《観流》。
一瞬。
男の。
腕。
そこから。
何か。
走る。
「店長!」
カイ。
真紀。
引く。
直後。
バキン!!
受付カウンター。
中央。
割れる。
真紀。
「……。」
スタッフ。
悲鳴。
⸻
カイ。
「全員奥!」
真紀。
一瞬。
止まる。
でも。
すぐ。
スタッフ。
押す。
「行くよ!」
「警察!」
「裏から出て!」
扉。
閉まる。
男。
追わない。
ただ。
カイ。
見る。
「やっぱり。」
笑う。
「見えてる。」
⸻
カイ。
スマホ。
取り出す。
レン。
発信。
男。
「呼ぶの?」
「うん。」
「誰。」
「めんどくさい人。」
『誰がめんどくせぇんだよ!!』
繋がってた。
カイ。
「早。」
レン。
『何だ。』
カイ。
男。
見る。
「敵っぽいの来た。」
『場所。』
「店。」
一秒。
声。
変わる。
『澪!!』
遠く。
『聞いています。』
レン。
『カイ。』
『絶対一人でやるな。』
「うん。」
男。
聞いている。
「レン。」
「澪。」
カイ。
「知ってる?」
男。
笑う。
「知ってるよ。」
⸻
通信。
向こう。
澪。
止まる。
『カイ。』
「何。」
『その人物から離れてください。』
男。
首。
傾ける。
「澪。」
「まだ観測やってるんだ。」
澪。
沈黙。
レン。
『お前誰だ。』
男。
カイのスマホ。
見る。
「実験番号。」
一拍。
「十二。」
⸻
カイ。
「……。」
シュウ。
内側。
『知らん。』
(聞いてない。)
『俺もだ。』
男。
「君は?」
カイ。
「カイ。」
「違う。」
「カイだけど。」
男。
少し。
苛立つ。
「番号。」
カイ。
「ない。」
男。
笑う。
「そう。」
「やっぱり特別なんだ。」
⸻
その瞬間。
消える。
いや。
速い。
カイ。
《観流》。
見る。
脚。
腰。
肩。
流れ。
分かる。
右。
来る。
避け――
ドッ!!
腹。
入る。
「っ……!」
カイ。
吹き飛ぶ。
施術ベッド。
倒れる。
レン。
電話。
『カイ!!』
「……痛い。」
男。
拳。
見る。
「弱。」
カイ。
「知ってる。」
「これで?」
男。
本当に。
理解できない顔。
「これが。」
「廻天?」
カイ。
「刀は家。」
「は?」
⸻
男。
固まる。
「持ってきてないの?」
「仕事だから。」
「……。」
「刀持ってエステしないでしょ。」
男。
「お前。」
顔。
歪む。
「ふざけてんのか。」
カイ。
「割と真面目。」
シュウ。
『カイ。』
(何。)
『来るぞ。』
⸻
男。
腕。
上げる。
今度。
見える。
異能経路。
一本。
ではない。
人工的。
継ぎ接ぎ。
何本もの。
流れ。
無理やり。
束ねられている。
カイ。
目。
細める。
「……俺と似てる。」
男。
止まる。
「分かる?」
「ちょっと。」
「そうだよ。」
腕。
広げる。
「俺も作られた。」
⸻
実験番号十二。
本名。
不明。
能力。
不明。
生存期間。
不明。
ただ。
一つ。
明確。
カイとは。
違う。
男。
自分の胸。
叩く。
「俺は。」
「戦うために育てられた。」
床。
踏む。
爆発。
⸻
カイ。
避ける。
遅い。
肩。
掠る。
壁。
激突。
「いっ……。」
シュウ。
『代われ。』
(まだ。)
『カイ。』
(見たい。)
男。
「何を。」
カイ。
《観流》。
深く。
開く。
「君。」
男。
止まる。
「身体。」
「めちゃくちゃじゃん。」
⸻
男の顔。
消える。
笑い。
完全に。
消える。
「……何。」
カイ。
見える。
経路。
人工的。
接続。
切断。
再接続。
迂回。
何度も。
何度も。
作り直されている。
カイ。
「痛くない?」
沈黙。
「黙れ。」
「ここ。」
自分の胸。
指す。
「ずっと流れ。」
「ぶつかってる。」
「黙れ。」
「あと左腕。」
「黙れ!!」
⸻
ドン!!
異能。
爆発。
店内。
鏡。
全部。
割れる。
カイ。
腕。
顔。
守る。
男。
叫ぶ。
「お前に何が分かる!」
「何もされてないくせに!」
カイ。
「されてるらしいよ。」
「覚えてないけど。」
「お前は成功した!!」
カイ。
「知らない。」
「七つもらった!」
「頼んでない。」
「廻天まで!」
「勝手についてきた。」
「ふざけるな!!」
「ふざけてない。」
⸻
男。
拳。
振り上げる。
カイ。
見る。
複数。
流れ。
束ねる。
一つ。
巨大。
攻撃。
(ほどける。)
シュウ。
『やめろ。』
(何で。)
『多すぎる。』
(でも。)
『全部ほどこうとするな。』
カイ。
止まる。
昨日。
聞いた。
レン。
言葉。
『全部使う必要ねぇだろ。』
真紀。
『必要なものだけ選べ。』
カイ。
見る。
全部。
ほどく必要。
ない。
中心。
一本。
これ。
抜けば。
束。
崩れる。
カイ。
手。
伸ばす。
拳。
来る。
触れる。
《解流》。
一本。
だけ。
ほどく。
男。
「――!?」
拳。
止まらない。
ドゴッ!!
カイ。
顔。
殴られる。
吹っ飛ぶ。
「痛っ!!」
シュウ。
『避けろ!!』
(技は崩れた。)
『拳は残る!!』
(なるほど。)
『馬鹿!!』
⸻
でも。
男。
自分の腕。
見る。
異能。
消えた。
違う。
組み上げた技だけ。
崩れている。
「……。」
男。
カイを見る。
初めて。
少し。
恐怖。
「何した。」
カイ。
鼻。
押さえる。
「一本。」
「ほどいた。」
⸻
外。
車。
急停止。
レン。
降りる。
澪。
同時。
《銀界》。
展開。
店内。
観測。
澪。
「二名。」
「カイ生存。」
レン。
「敵。」
澪。
目。
銀。
細める。
「人工経路。」
一拍。
「カイと同系統です。」
レン。
刀。
抜く。
「なるほど。」
入口。
見る。
「じゃあ。」
「今回は。」
笑う。
「三人でやるぞ。」
⸻
店内。
カイ。
立つ。
男。
構える。
入口。
ガラス。
砕ける。
レン。
入る。
「待たせた。」
カイ。
「遅い。」
「二十分だぞ!」
「殴られた。」
「見りゃ分かる!」
澪。
入る。
店内。
見る。
鏡。
受付。
壁。
施術ベッド。
破損。
一拍。
カイを見る。
「店長に怒られますね。」
カイ。
顔。
青くなる。
「……。」
レン。
「今そこじゃねぇだろ。」
カイ。
「いや。」
壊れた。
店。
見る。
真紀。
顔。
想像。
「敵より怖い。」
実験番号十二。
三人を見る。
笑う。
「これが。」
「お前の仲間?」
カイ。
レン。
澪。
見る。
「うん。」
男。
「なら。」
身体。
人工経路。
全開。
一本。
二本。
五本。
十本。
無理やり。
接続。
「まとめて壊す。」
澪。
静か。
「レン。」
「ああ。」
「カイ。」
「うん。」
三人。
同時。
構える。
いや。
カイだけ。
構え方。
分からない。
レン。
横目。
「お前も構えろ!」
「刀ない。」
「拳構えろ!!」
「こう?」
「逆!」
「拳に逆ある?」
「何で今揉めんだよ!!」
男。
「……。」
初めて。
困惑。
澪。
ため息。
「いつもこうです。」
そして。
第二戦。
始まる。
――第二十一話・了




