第2章
相変わらず気分が悪いまま、放課後を迎えた。俺は所属する軽音楽部の活動のため、旧校舎の三階へと向かった。
以前に三年の連中と揉めた際、俺が殴ってしまった所為で部員は減って、現在六名。いつも来るのは二名。そいつらも結局は、俺について来ることで力を得たと勘違いしているような奴でしかない。
怪談の類に出てきそうな旧音楽室の前。きいきい音の鳴る戸を開くと、山田に菅山という、いつもの二人が先に着いていた。
「あ、滝本君、お疲れさまっす」
「おう。とりあえず鳴らす準備しろよ。て言うか、先に来てんなら先に練習しとけ。前も言ったけど」
「ああ、ごめん滝本君」山田はベース。
「お、俺はもう準備できてるけど」菅山はドラム。
「じゃあ先に叩いとけ」そんで俺がギターとボーカル。まあギターはそこそこできるんだが、歌うのはあまり好きじゃない。
いや、それは違った。俺は音楽が好きだ。歌うことも。しかし俺は、自分の声が好きになれないんだった。どう工夫してみても軽薄な印象で、本気で歌えば歌うほど、自分の声では生きた体温が伝えられない事実に気づかされてしまう。
高校に来てから、俺はもうポップパンクやメロコアしか歌わなくなった。英詞でごまかして、それなりに歌えているような気分に浸るのだった。
三人でグリーンデイを三曲ほどやってみた。ベースは発展途上だが、菅山のドラムはそれなりに年季が入っている。ただちょっとアタックが強くて、俺の声が負けている気がする。
「スガ、おまえちょっと気張り過ぎだ。俺の声がかき消されるだろ」
「え?そうかな、で、でも俺、滝本君の声、通ってると思うよ」
「本気で言ってんのか?通ってんのはギターだけだろ」
「え……あ、ごめん」
先輩の誰かが置いて行ったギター、レスポール型、イーエスピーのナビゲーターを俺は気に入り、ここのところずっと使っている。横山健ばりにガムテープでピックアップをリアに固定、なかなか存在感ある音が出る。
しかし、それもあって余計に俺のボーカルの弱さが際立ってしまう。そしてこいつらにコーラスをやらせるとさらに酷くなる。とにかく俺が何とかするしかない。
しかし楽器は気に入る物に替えられるが、声はそれができない。
結局歌うのが嫌になり、後半はいつものように演奏だけ練習して終わった。次は三日後の木曜にしよう、と俺が提案の形で言ったが、二人とも従うだけなのでもはや提案とも言い難かった。次はノーユースフォアネームを練習しよう。当然、満場一致。
コンビニの鶏肉弁当二つとパスタ一つ、百パーセントオレンジジュース二本を買ってから、マンションの自室に帰り、弁当とパスタをレンジにぶち込んで回転、出して食った。明日は燃えるゴミの日だから、ちょっと散らかった周囲の物を袋に詰めた。
着替えて腕立て伏せや腹筋運動など日課をこなし、外を二十分ほど走ってきてからシャワーを浴びた。




