第14章
俺だって弱い人間の気持ちがわからないわけじゃない。誰でも生まれてすぐは最弱だ。放置されただけで死ぬくらいに。
そして少し成長してくると、弱さを克服しようとする人間、弱さを隠そうとする人間、弱さを盾にする人間などに分かれてくる。ただそれだけのことだ。
俺は弱い自分が嫌いだから強くなった。問題は踏み出せるかどうかだ。
などと考えていたが、しばらくするとこの手紙がどうも遺書みたいに思えてきた。あいつ、どこに走って行った?もうすぐ授業なのに戻ってきていない。
階段のほうに走って行ったが、まさか屋上か?
気になった俺は席を立ち、早足で屋上へ向かった。校舎内がやたら汚かった。ちゃんと煙草の吸殻くらい片づけろ。
光の漏れる扉を開けると、屋上に和木坂はいた。他にもいろいろいた。
「挨拶もなしに入ってきておまえは何だって訊いてんだこらあ」
屯していたらしい四人の馬鹿に、和木坂は絡まれていた。そんな死にかけみたいな女を囲って、こいつらは何がしたいのか。
「あ、あ、あ、すいません」
「すいませんで済んだら警察要らんのじゃ」
「うわ、何だこいつ、汚ねえ。くせえ」
「おまえ、屋上使うんだったら金払えよ金」
「あ、あ」
久し振りに本気でむかついた。
「おい、おまえら」俺はこちらに向いた四人に向かって走り、まず手近な呆けをぶん殴った。鼻を折った感触があった。