どうやって(渡ってきたのかな)
そんなこんなで駿の群れがゴタゴタしていながらも、レッド、ブルー、イエローの三頭は、今日もうちの庭で好き勝手にうろついていた。
ただ、鷹の墓には近寄らせないようにしないといけないのが気を遣うところだな。
なにしろ、俺達にとっては大切な家族が眠ってるとは言っても、あいつらにとっては単に<餌>が埋まってるだけに過ぎないわけで。
この辺りも、『人間の感傷と自然の摂理との乖離』って感じかな。とは言え、それを食わなきゃ飢えるって訳でもないんだからそこは勘弁してほしい。
という訳で、それについては、ドーベルマンDK-a拾号機を配してある。
陸号機に慣れているレッド達には威嚇効果は薄いものの、陸号機とは様子が違うというのは察せられるらしく、完全には自分達の仲間じゃないとは感じてるのか、近付こうとしてスタン弾を充填した銃を向けられると危険を感じてか逃げ去ってはくれる。
さりとて、犬のように『躾ける』とはまだまだいかないようだ。さすがにもっと世代を重ねないと駄目かもしれない。
なんてこともありつつ、俺達は平穏に暮らしてたんだが、ある日、ドローンの早期警戒網に捉えられたものがあった。
「アサシン竜か……!」
「ですね…」
タブレットに映し出された映像を見ながら、俺とシモーヌは少なからず緊張していた。なにしろその映像が捉えられたのは、俺達がいる方の地域だったからな。
今日は光達チームBが調査に出ている。
アサシン竜姿が確認された地域とは全く方向が違う上に何十キロと離れてはいるものの、念の為に、
「イレーネ、C03地区でアサシン竜の姿が確認された。念の為、光達にもその旨伝えた上で警戒を強めてくれ」
と告げる。
「了解いたしました。警戒レベルを一段階引き上げます。現時点、こちらでは異変は確認されていません。大きな脅威も探知できていません」
「そうか。引き続きよろしく頼む」
向こうはイレーネがいれば安心だろう。という訳で、こちらはアサシン竜の監視を続ける。
「どうやって渡ってきたのかな」
素直な疑問が口を吐いて出た。
それに対してシモーヌは、
「今の時点では何とも言えませんね。何者かに運ばれたのか。例えばサイゾウの背中で寝ているうちに河を渡ってしまったとかも考えられますけど、確証はまったくありません」
とのことだった。それは俺も同意見だ。
「理由はどうあれ現にいることは確かだからな。ドローンを張り付かせて警戒しよう」
実は、対象の動物に対してマイクロチップを打ち込んでその位置を把握する方法も現在検討していて、その為の射出装置を備えたタイプのドローンも開発中なんだ。
俺達やエレクシア達が使える拳銃タイプのは既にできてるんだが、ドローンに搭載できるサイズで確実に動作させるのにちょっと手間取っているんだよな。