駿の群れでも(同じようなことはある)
なんてことがありつつも無事に調査を終えて帰ってきた俺達は、
「おかえりなさい」
「おかえり~♡」
と、光と灯に出迎えられた。順も光に抱きつくみたいにしながらも一緒に出迎えてくれる。
そんな様子にホッとしつつ、他の家族、密、伏、深、焔、彩、新の姿も確認し、変わりないことを確かめる。こうやっていつもちゃんとその姿を確認して顔を見て、その日の気分や体調を察するんだ。
『家族ならばそうするのが当然』
とは言わないものの、そうした方が結果として家族の関係を良好に保つのも事実だと思う。
もっとも、『そんなことしたくない』と思うような家族関係であれば無理にそんなことをしても逆に悪化するだけかもしれないが。
最初の段階でボタンを掛け違えると、世間一般でなら当たり前とされてるやり方では上手くいかないことも多いんだろう。俺がやってることだって、一般論として見れば当然のことかもしれないものの、なかなかそうできない場合だってあるだろうし。
実際、思い返してみれば、
『家族の顔を見るのも煩わしい』
なんてことを言ってた人間も周囲には少なくなかったしな。
新暦〇〇二三年九月十日。
などということをぼんやりと考えられるほど俺の家は平穏だった訳だが、その一方で、駿の群れでは少々ごたついていたようだ。
誉の群れで起こっていたようなことが、駿の群れでも起こっていたんだ。
それ自体はボスを頂き群れを成す動物ならそれこそ当たり前のことなんだろうが、群れの若い雄がボスである駿のパートナーに戦いを挑んでるらしい。
だからこのところ、
「ギャッ!」
「ギャウッ!!」
って感じで密林の中が騒がしい。
ほとんど群れの一員のように行動を共にしてる陸号機としては当然、手出しはしない訳で、ボスと若い雄との闘いをただ記録するだけに留めてる。
一度は陸号機の下を去った駿だったが、群れを守るにはその力は有用だと悟ったのか、今では群れの子供らのお守りさえ陸号機にやらせている始末。
いやはや大した強かさだが、俺とシモーヌはもちろん、光と灯もその成り行きが気になるようで、一緒にタブレットに映し出された映像を確認していた。
特に、庭に入り込んでくる個体を、レッド、ブルー、イエローと名付けた灯は関心が高いようだ。
「ブルーもいつかこんな感じでボスに挑むのかな…」
画面を見ながらそんなことを呟く。まるで子供の心配をする母親のように。
無理もないか。灯はブルー達のことを可愛がってたもんな。
もちろん向こうはまだほとんど野生に近いから飼い犬のようにベタベタする訳ではないが、灯が干し肉等を用意すると、その手から直接食べるまでになっていた。
と言っても、うっかりすると手ごと齧られそうな感じだから、灯の反射速度と身体能力があってのことなので、俺やシモーヌは決して真似しないけどな。