父娘揃って(素直にな)
鷹を送る儀式も滞りなく終わり、俺は、刃の時と同じように酒とグラスを手に墓の前に座っていた。刃の時と違うのは、隣に灯がいることだ。
「ねえ…お父さん……」
灯が静かに話し掛けてくる。
「なんだ…?」
「私ね…不思議なんだ……ママのこと<お母さん>っていう実感ないのに、なんかすごく、こう、胸の辺りがキューッとするんだ……
なんでだろう…私にとってお母さんはシモーヌのはずなのに……」
「そうか……でも、灯がそう感じるなら、それでいいんじゃないか? 何もおかしいことじゃないと俺は思うよ……」
「いいの…?」
「ああ、いい…それでいいよ……」
「そっかあ……それでいいんだ……じゃあ、泣いていいんだよね……」
「いいよ、好きなだけ泣いたらいい……」
「うん……」
そして灯は、
「う……うぁ…うぁああぁぁぁん……!」
と、大きな声を上げ、本当に幼い子供のようにボロボロと大粒の涙を流しながら泣き出した。
それにつられて、俺も、
「ぐ……ぐ…うっ……」
と嗚咽が漏れてしまう。
父娘二人して、鷹の墓の前で泣いてるんだ。
すると、そんな俺と灯の傍に来た者がいた。そして、そっと頭を撫でる。
新だった。新が、俺達の隣でしゃがみ込んで、灯の頭を撫でてくれてたんだ。
まるで、『よしよし』ってしてくれるように。