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凛の巣立ち(そっちを選んだか)

(そう)(かい)は、既に立派なライオン人間(レオン)のボスとしての風格を漂わせ始めていた。相変わらず<二人ボス>という特殊な群れではあるが、内部では、(そう)派、(かい)派にきれいに分かれて、それぞれ独自に活動しているらしい。


しかも、必ずしも厳格なそれではないが、一応は縄張りが分かれているらしく、だから結局のところ、寝床となるコーネリアス号の陰を共有しているだけで、実質的には<別の群れ>と言ってもいい状態ではあるようだ。


ただ、双方の子供達はあまりそれに囚われず、一緒になって遊んでたりもするようだが。


でもまあ、上手くいってるならそれでいいか。


そして、(りん)は、(そう)(かい)の群れが寝床としているのとは反対側のコーネリアス号の陰を自分の寝床と決めたらしい。それを起点として草原を歩き回り、狩りをし、時には立ち止まって心地よさそうに風に吹かれている様子が、ドーベルマンDK-aやイレーネ、ドローンのカメラによって捉えられてた。


どうやら本当に草原の方が気に入ったらしい。なにしろ、シモーヌとイレーネが里帰りの準備を始めるとソワソワし始め、二人がローバーに乗り込むと、呼ばれなくても勝手に乗り込むようになったくらいだ。


その後、二ヶ月ほどそれを繰り返したある日、シモーヌとイレーネが帰る時間になっても(りん)はコーネリアス号に帰ってこなかった。彼女を見守る為につけていたドローンと、ドーベルマンDK-a弐号機は、(りん)が、コーネリアス号が辛うじて見える場所からじっと見詰めている姿を映し出す。


しかも、弐号機のスピーカーを使ってシモーヌが「帰りますよ」と呼びかけても反応せず、しばらく眺めた後、コーネリアス号に背を向けて歩き出した。


「そうか……お前はそっちを選んだんだな……」


(りん)は、草原で生きることを選んだんだ。なら、俺はその選択を認めるしかない。


「シモーヌ。そういうことだ。(りん)はそっちに残る」


「…分かりました。それでは、私とイレーネはこれから帰ります」




それからももちろん、ドローンやドーベルマンDK-aでの見守りは続けた。


しかし(りん)はしっかりと草原での暮らしに適応し、俺の家で過ごしていた頃の、昼夜逆転の生活パターンも、ライオン人間(レオン)本来の夜行性へと徐々に戻っていったようだ。


なお、実は、(そう)(かい)達がせめて獲物に困らないようにという親心から、草食動物をおびき寄せる為にコーネリアス号の周囲に簡単な<畑>と、地下水を汲み上げて溜めた水飲み場を作っていた。


と言っても、俺達が食べたり飲んだりという為のものじゃないし、傍らで細々と品種改良(別に芳しい結果が出なくてもいいと考えつつ)も試みつつ最低限の管理をドーベルマンDK-aを使ってしてるだけのものだが。


(りん)も、その畑や水場におびき寄せられた草食動物を餌として捕らえて食べ、昼はコーネリアス号の陰で休むという毎日を過ごしてたのだった。



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