本当に強さ順にって(感じもするな)
などと、新と凛のことで何気に気を揉んでる最中にも、また別の、小さな、しかし俺にとっては気になる変化があった。
鷹のことだ。
タカ人間は人間の形態を残しつつ翼を持つという無理な形質を持つ所為か、体は小柄で成体になっても一見すると子供のようにも見えてしまうくらいに幼い印象がある。だから刃のようなカマキリ人間とは別の形で年齢が分かりにくいんだが、遺伝子解析をすれば、当然、それもかなり正確に分かる。と言うか、データが蓄積されたことで分かるようになってきた。
で、鷹についてなんだが、彼女は実は俺と付き合いだした時にはもう立派な大人だったらしい。
つまり、あれからそれなりの年月が経った今では、彼女は『老いてきてる』んだ。その所為か、最近、俺といちゃついていても最後まで求めなくなっていた。そういう部分が減衰してきてたんだろうな。
以前のような気性の激しい部分も鳴りを潜めている気もする。狩りに出る回数も減り、ローバーのルーフキャリアに作った自分の<巣>で一人ぼんやりと空を眺めてる姿が目立つようになっていた。
それは、刃の晩節を思い起こさせるには十分なものだったと思う。
「鷹……お前もなのか……?」
シモーヌが凛を連れて里帰りして、本来ならイレーネがいない時には調査は休みになる筈のチームBも、新しいドーベルマンDK-a拾号機の性能評価の為にすぐ近所ではあるが出ていることで家が静かでそれだけ集中しやすかったから改めて気付いたんだと思う。
以前にも言ったが、彼女達の様子にあまり触れてこなかったのは、いつもと変わらない毎日を送れてたことでその必要がなかったからだ。これは、密や伏も同様である。彼女らとの関係は今も良好で、これといったトラブルもない。機嫌が悪い時に牙を剥いて睨まれたりするのも、それ自体が日常の光景だった。だからその程度じゃ触れる理由もない。
それが、今までと違ってきたからこそ触れることになったという訳だ。
鷹と一緒にいられる時間も、もうそれほど長くないということか……
なんだか、本当に強さ順にって感じもするな。
もっとも、それ自体、たまたまというだけだとは思うが。
鷹の娘であり灯の姉である翔は今も元気で、三人目の子を育ててる最中だ。翔の第一子である凌も巣立ち、元気にしている。
また、鷹の息子である彗も巣立って、パートナーはまだだが元気にしてる。
しっかりと鷹の命は受け継がれていってる。
そういう意味では、もう、役目を終えたということでもあるんだろうな……




