いくら家を壊されても(怒る気になれない)
なんて、誉の群れでボスの座を巡りごたごたしている間も俺達の日常は変わりなく続いていて、光と順と灯の仲の良さも変わりなく、まさに順調だ。
順自身が、名前の通りの順応性を見せてくれている。もちろん、ボノボ人間としての習性も残しつつだが、光の言うことをよく聞くようになってくれてるんだ。
その一方で、灯とは<悪友>的なノリが垣間見え、近頃では灯の方が順に感化されたのか、幼い頃に焔達とやっていた乱暴な遊びを再開してしまった。
さすがに家の中だと狭すぎるからかあまりやらないが、一歩外に出ると、立体的な動きの鬼ごっこのような遊びをやっていた。しかもそれに、新や、深の子供である交と環までが交じって、実に楽しそうだ。
おかげで深は子供達の相手をせずに済み、母親の伏そっくりな、ぐうたらにも見えるくらいに寝てばかりという一日を過ごしていた。
ただし、その分、家の修繕はほぼ毎日だけどな。屋根とか壁とか。
まあそれはいいとして、元々、密林の中で立体的な動きを見せるボノボ人間として暮らしていた順や、ボノボ人間そのものである新は元より、ライオン人間である深の子でありながらヒョウ人間ある弦の子でもあり、密林で狩りの練習をしている交と環も負けず劣らず立体的な動きを見せている。
しかも、タカ人間である鷹の娘である灯も、見た目は人間そのものでありながら、タカ人間最大の特徴である翼を持たないにも拘らず、十分に順達についていくことができていた。
「うおーっ! 逃がすかーっっ!!」
とか叫びながら縦横無尽に走り回る。その姿がまた楽しそうで、何度壊れても何度でも直すことを前提で作った家をいくら壊されても怒る気になれない。
ただ、新が同じようにして遊ぶのは意外だった。ほぼ巣立ったようなものとは言ってもこの家を住処にしていてまだあどけなさの残る交と環はともかく、ボノボ人間としてはもう十分、大人と言える年齢の新が、子供みたいに遊んでるんだ。
『子供の頃はやけに大人しい感じだったし、凛とイチャイチャするので忙しかったから、その分を、今になって発散してるのかな』
なんて思ってしまう。
だが、そうなってくると気になるのが凛なんだが、彼女は新のようには遊ばず、ほぼ毎日、密林の中を歩き回ってた。狩りもそうなんだが、こちらはこちらで、今まで餌を取りに出る以外はほぼ家に閉じこもって新とイチャイチャしてただけだった分、自分の世界を広げようとでもするかのように、な。