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野生で生きる為の能力が(最適化されてる)

(らい)が勝利を確信し、<ボスの木>に上って改めて、


「うおーっっ!!」


と歓喜の雄叫びを上げている時、地面にぐったりと横たわっていた<暫定ボスだった雄>が突然起き上がり、脇目も振らずに走り、密林の中へと姿を消した。死んでいなかったのだ。


それがいわゆる<死んだふり>だったのか、単に意識を失ってただけなのかは分からない。ただ、命の危機を乗り切ったことだけは確かだろう。


もっとも、今回の怪我が原因でこの後、命を落とすこともあるかもしれないが。とは言えそれは彼自身の問題だ。生き延びて再びボスの座を目指すか、死んで命の循環に還っていくか。


俺はその姿に、(ほまれ)の未来を垣間見てしまった気もした。もちろん同じ結末を迎えるだろうという訳じゃないし、そうなってほしくないとは思うが、可能性としては否定もできない。


「厳しい世界だな……改めて……」


思わず呟きが漏れる。人間にはおよそ耐えられない厳しさだろうな。なるほど、己の能力すべてをつぎ込まないと、こんな世界じゃ一日たりとも生きていけない気がする。余計なことに思考を割く余裕もない。


だから『知能が低い』という表現は適切じゃないのかもしないという気もする。むしろ、


『野生で生きる為の能力が最適化されてる』


ってことのような気もしたよ。


人間は、『余計なことを考える余裕のある世界で生きてる』んだって実感した。そして、『余計なことを考える余裕のある世界でないと生きられない』ということもな。


面白い。




その後、結局、(らい)がその群れのボスに収まる形となった。まあ、<漁夫の利>という形ではあったが、一応はボノボ人間(パパニアン)の社会のルールに則ってではある。


で、『めでたしめでたし』となったのかと言えば、実はそうじゃなかった。むしろこれが始まりだったんだろうな。


と言うのも、ボスに収まった(らい)は、これまでにも増して横暴に振る舞いだしたんだ。


『調子に乗ってしまった』と言うか。


それでも仮にもボスだから他のボノボ人間(パパニアン)も一応は従ってた。雌も、渋々ながらも(らい)を受け入れてたようだ。


が、そういう状態を長続きさせるのは、たぶん、並大抵のことじゃなかったんだろう。今度は、元から群れにいた雄の反発を招き、一ヶ月と経たずに<内紛>という形で争いが始まり、実質的なナンバー3だった雄が、他の雄の協力も得て(らい)を倒し、新たなボスの座に就いたのだった。


その時にも、(ほまれ)のサポートがあったらしい。


メイフェアは言う。


(ほまれ)様は敢えてサポート役に徹することで、今回の一連の騒動を冷静に分析していたようです。


『参考になった』的なことをおっしゃっていました」


と。




なお、ボスの座を追われた(らい)がどうなったかと言うと、命からがら群れを逃げ出した後、しばらく一人で生きていたようだったが、一週間後、カマキリ人間(マンティアン)に捕食されているところが、ドローンのカメラによって捉えられたのだった。



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