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パートナーを喪うと(途端に弱る者がいる)

人間にも、パートナーを喪うと途端に弱る者がいるという話は聞いたことがあったが、それはワニ人間(クロコディア)にも当てはまるのだろうか。それとも、(ちから)がたまたまそうだったというだけか。


(はるか)を亡くして以来、(ちから)も生気を失い、池のほとりに座ってそれを眺めながら日がな一日ぼーっとしてることが多くなった。


そんな(ちから)をどう慰めればいいのか、そもそも慰めるなんてことができるのかと思案しているうちに、(はるか)が亡くなって二週間後、後を追うようにして(ちから)も息を引き取った。


(はるか)のことが心底好きだったんですね……」


シモーヌが(ちから)の遺体を撫でながら言う。


ワニ人間(クロコディア)も、基本的には乱交型の繁殖を行うことが多い種族だった。実際、(きたる)(あきら)は特定のパートナーを持っていない。


しかし、中には(ちから)(はるか)のように生涯同じ相手と添い遂げる例もあるということが、二人によって確認された。以前からそれと思しき事例はあったが、これで裏付けられた形だ。


亡くなった(ちから)の遺体を、今度はエレクシアが、池の底、(はるか)が埋まっているその隣に埋葬してくれた。


「……」


(あるじ)がいなくなった池を、(ひかり)が静かに眺めている。


彼女にとっても、仲の良かった(きたる)(あきら)の両親が亡くなったということで、やたらと泣いたりはしないものの、思うところがあるんだろう。そんな姉を見倣ってか、(あかり)も池に向かって手を合わせてくれる。


そうやって家族同然だった(ちから)(はるか)を悼んでくれるのは俺としてもホッとするものがあった。


その一方、生態に違いが大きかったからか(ひそか)(ふく)達はあまり関わらなかったこともあってだろうか、(じん)の時ほどは気にしている様子もなかったが、これも、人間である俺の感性を一方的に押し付ける訳にもいかないからな。俺の方からは何も言わないでおこう。


(じん)に引き続いて、(はるか)(ちから)と次々に<家族>を喪い、俺も正直、気持ちは沈みがちだった。


そんな俺を心配してか、(ひそか)が体を摺り寄せてくる。いつもの俺に甘える仕草に似ていながらも、それとは少し違う気もする。むしろ、俺に甘えるように促しているような……


だから俺を慰める為にそうしてくれてるんだろうな。


『辛い時には甘えてくれていいんだよ』


なんて言ってくれてるのかもしれない。


(ひそか)は優しいな……愛してる……」


歯の浮くようなセリフも自然と出てくる。


彼女達がいれば俺は大丈夫だ。


その(ひそか)達との別れも迫ってるんだろうが、それは(ひかり)(あかり)やシモーヌやエレクシアがいれば何とかなるだろう。



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