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まさか話題にしたから(という訳じゃないと思うが)

まさか不定形生物のことを話題に出したからという訳じゃないだろうが、最近、(はるか)の様子がおかしい。元気がないんだ。


(きたる)(あきら)以降、子供ができなかったが、既に(きたる)(あきら)も巣立って子を生し、立派にワニ人間(クロコディア)として生きている。(きたる)の方は四人目。(あきら)にも最近、三人目の子供が生まれたのが確認された。


子供達にも孫達にも特に何か問題は見られず、不定形生物由来の生き物もしっかりとこの世界に定着できるんだということが改めて確認できた。


その役目を終えたとでも言わんばかりの変化に、胸が締め付けられる気がする。




そんな予感を裏付けるように、(はるか)は、日を追うごとに明らかに衰弱していった。病気ではないから治療のしようもない。治療カプセルで手当てしたとしても衰弱を少し遅らせる程度にしかならないことは分かっていた。


ワニの寿命はけっこう長いらしいが、ワニ人間(クロコディア)はあくまでワニ人間(クロコディア)であってワニではない。


そう自分に言い聞かせて、俺もその日を待つ。




日に日に弱っていく(はるか)を、(ちから)は甲斐甲斐しく世話を焼いた。餌を運んでやって食べさせてやり、顎の力が弱って骨ごと噛み砕けないとなれば自分が噛み砕いたものを口移しで食べさせた。


その献身的な<介護>は、果たして人間でもここまでできるかというほどのものだったと思う。


しかしその甲斐もなく、(はるか)は静かに息を引き取った。明け方、エレクシアが心停止を確認。


(はるか)が亡くなりました」


と報告してきた。


「……そうか……」


寝ているところに報告を受けたことで、俺は、ぼんやりした頭で(はるか)を悼んだ。


意識がはっきりしてきて起きてから様子を見ると、(ちから)(はるか)の遺体をしっかりと抱き締めていた。


(はるか)の基となったのであろうワニ人間(クロコディア)の個体が病死した時には激しく泣いた(ちから)だったが、今回のことは予感があったのか、そこまでじゃなかったようだ。


(ひかり)(あかり)も起きてきて、それぞれ、黙祷したり手を合わせたりしてくれる。


それから一時間ほどして、力は(はるか)の遺体を抱いたまま、池の中に姿を消した。


池の水が泥に濁り、そして十分ほどして(ちから)が再び姿を現した時には、(はるか)の遺体はなかった。


どうやらワニ人間(クロコディア)には、<埋葬>という習慣があるらしい。自分のパートナーが死ぬと、河の底の泥を掘って埋めるのだ。


これは、パートナーや自分の子供といった特別な存在だけにするものだと見られている。しない者もいるようだし、場合によっては食べてしまったりもするらしいが、(ちから)ワニ人間(クロコディア)にしては柔和な気性だったからというのもあるのかもしれない。



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