以前から時折(庭に入り込んでたりして)
蛮のことは取り敢えずそういうことにして、その日は家に戻った。すると、うちの<庭>を、ボクサー竜の子供が三頭、走り回っていた。
駿の群れの子供達だ。以前から時折、ちょろちょろと庭に入り込んでたりしてたんだが、俺達が全く手出しをしてこないのをいいことに、我が物顔で居座るようになってしまったようだ。
と言うか、その一番の原因は分かってる。
灯だ。灯が自分が作った干し肉とかをやって、餌付けしたんだ。
親世代である駿達ははまだ俺達のことをかなり警戒しているようで、密林から出てくることはないが、子世代はもうかなり平然としていてちょくちょく入り込んでくる。さすがに手から直接餌をもらったりまではしないものの、そうなるのも時間の問題だろうか。これはまさに、犬が人間と共に暮らすようになった流れと似たようなものじゃないだろうか。
「えっとね、この子がレッドで、この子がイエローで、この子がブルー。雌で、雄で、雌だよ。ホントの姉弟じゃないけど、姉弟みたいなものだよね」
庭の隅で俺達の方を見ている三頭を指差し、灯が紹介してくれた。何と言うか、我が娘ながらちゃっかりしてるな。
ちゃっかりしてると言えば、レッド達もそうか。他の子供達も灯が用意した干し肉を食べたりはするものの、ここまで近付いてはこない。この三頭が特に堂々としてて、たくさん餌をもらっていく。
ペットというにはまだ距離があるが、それでも単に野生っていう訳でもない微妙な距離感。さらに次の世代くらいになるともっと近くなったりするという流れということなのか。
光はその辺りは割と淡白なようだ。ボクサー竜の子供達を可愛いとは思っていても、わざわざ餌付けまでしようとは考えていないらしい。
俺が、動物達とはある程度線を引いて付き合おうとしてる部分を見倣ってくれてるのかもしれない。対して灯は、シモーヌの、研究者として対象に積極的に関わろうとする姿勢を見倣っている可能性がありそうだ。
どちらが良いか悪いかじゃなく、それらが招く結果を受け止める覚悟が必要なんだと思う。ボクサー竜がもしペット化したりしたら、きちんと最後まで面倒を見る。といった感じでね。もっとも、ここじゃ他人に迷惑を掛けたりという心配はないか。
『飼い切れなくて捨てる』、というのも意味がないな。殆ど自然の中そのままだし。
ただ、情が移れば亡くした時にはそれだけ悲しくもなるからな。それについてはやっぱり覚悟は必要か。