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紛らわしい話だよ(人間にとっては、だが)

ヒト蜘蛛(アラクネ)とはまた別の、クモ人間(アラニーズ)とも呼ぶべき生物の存在の可能性は以前から指摘されているんだが、現在までのところ発見はされていない。ただ、それ以外の人間ベースの生物は、母艦ドローンによる調査でいろいろ発見されていた。


その中に、特に気になる例があった。


実は、カマキリ人間(マンティアン)に似ているが、果実を主な餌としているクワガタ人間(ルカニディア)というのがいるんだが、こいつが、(えい)のとよく似た(つの)を生やしてるんだよな。その角を含めたシルエットと体の色がクワガタを連想させるからクワガタ人間(ルカニディア)と仮に名付けたんだ。


しかも亡くなっていた個体からドローンによって採取されたサンプルを解析したところ、遺伝子的には同種と言ってもおかしくないくらいに非常に近いので、どうやらごく稀にカマキリ人間(マンティアン)の方にもその特徴が現れるようだ。


そういう訳で、(えい)のあの<角>が何かよくない病気なりなんなりの前兆じゃないことが分かって俺はホッとしていた。あの子に何かもしものことがあったら(じん)に申し訳が立たないからな。


(えい)が大人しい性格なのも、クワガタ人間(ルカニディア)の形質が発現している可能性が高い。


もしそうなら、ボノボ人間(パパニアン)を敢えて狙わないのも、それの影響かもしれない。俺があの子達の生態ものものを変えてしまった訳じゃない可能性が出てきて、その点でも少しホッとしていた。


それもこれも、こうやって地道に調査を続けてきたから分かったことだ。やっぱり、<知る>ということは人間にとっては重要な意味を持つことだと実感する。


でないと俺はいつまでもそれを引きずってたかもしれない。『なるようになる』と自分に言い聞かせてても、言い聞かせないといけないということは、そうしないと俺はやたらと気にするタイプだということだし。


これはもう、『こういう性分』な訳で、いくら『気にするな』と言われてもそうそう直るものじゃない。


むしろ、俺がもし、そういうことを気にしなくなったら、きっと、酷くドライな人間になってしまう気がする。(じん)のこともすぐに忘れてしまうような、な。


考えすぎるくらいに考えるから俺は俺でいられるんだろう。


なんてことを考えながら、今日も密林の中を調査する。細かいことも含めれば、毎日のように新しい発見がある。


と言っても、それらすべてが俺達にとって有益なものばかりとは限らない。


それどころか、殆どが『どうでもいいもの』だったりする。しかしその中に有益なものが含まれていることもある限りは、調査を続ける意味もあるだろう。


ただ、そんな俺達を、例のヒト蜘蛛(アラクネ)が今日も付け狙っている。


だから俺はそいつのことを、(ばん)と名付けた。<人間にも見える部分>は女性のそれだが、実は(ばん)自身は雄であることも分かっている。


非常にややこしいが、それもヒト蜘蛛(アラクネ)の特徴なんだ。<人間にも見える部分>の見かけ上の性別とヒト蜘蛛(アラクネ)自身の性別は必ずしも合致しないという。


紛らわしい話だよ。



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